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「璃空、大丈夫? ごめんね」

 湯船に二人。璃空は背中を預けるようにして、優斗の足の間に座っている。

「平気……久しぶりだったから。ちゃんと晩御飯、作れる」

「無理しなくていいよ?」

「違う。おれが、作りたいんだ。優斗に、食べてもらいたいから」

 そっか、と優斗は目を細めた。

「ありがとう」

 うん、と若干照れくさそうに璃空が頷く。

「ところで璃空」

 優斗が、璃空の右手を持ち上げた。上から下までじっくり見る。

「火傷、増えたね」

「え、あ、うん」

 若干、優斗の口調に怒気が帯びているのを感じ、璃空はたじろいだ。

「俺がいない間、深夜のバイトは控えるようにって言ったこと、覚えてる?」

「お、覚えてる」

 駄目だ。声に動揺がのってしまった。他の人ならともかく、優斗には誤魔化しようがない。

「控えるどころか、増やしたなんてこと、ないよね?」

 ぎくっ。

 分かりやすく、身体が一度小さく飛び跳ねた。

「な、何で」

「体調不良で休みますって居酒屋の方に電話した時、土日は出られるんでしょうかって聞かれて」

 サアッと璃空は二重の意味で血の気が引いた。

 そうだ。優斗に逢ったのが、金曜の夕方。そこから璃空は、ずっと優斗といた。ということは、その間のバイト全てを休んだことになる。

(……いや。優斗がちゃんと連絡しておいてくれたから、バイトの方はいいんだ。うん。問題はそこじゃなくて)

 軽くパニック状態になる璃空。

 優斗が大きくため息をついた。

「いくら何でも、働き過ぎ。……こんなに痩せて」

 背後から強く抱きしめられる。

 ごめん。そう言おうとした。

「――俺はもう少し健康的で、太っている方が好みかな」

 ぼそっと耳元にイケメンボイスで囁かれ、璃空は顔を赤くしながら勢いよく振り返った。

「きょ、今日からちゃんと食べて、ちゃんと寝る。バイトも減らすから」

「うん。良い子だね」

 にっこりと頭を撫でられ、はっとする。

 ああ。完全に、掌で踊らされている。

 それでも、土日の居酒屋のバイトはやめようと。

 璃空は密かに、固く決意した。

「優斗。そう言えば、バイトは?」

「ん? してるよ。前いた喫茶店でね。帰ってきたら絶対またうちでバイトしてくれって、オーナーに泣きつかれていたから。時給もそのままにするからって」

「……そうだろうなあ」

 再び優斗にもたれながら、璃空は思った。

 何か、元通りだな。
 時が戻ったみたいな。そんな感じがした。

「さて、もう上がろうか。立てる? それともまた抱っこしようか」

「た、立てるよ」


 腰が痛んだが、根性で立ち上がり、脱衣所に向かった。服もなんとか着たが、そこで力尽きてしまい、結局髪は乾かしてもらった。

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