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「美味しい」

「期間限定のバーガーだっけ?」

 そう、と璃空が頷く。

 食べる? と右手に持ったバーガーを優斗の前に差し出した。

 そういえば。
 美味しいって感じたの、久しぶりだな。

 多分。いや、絶対。

 優斗と一緒だからだろうけど。

「じゃあ、一口」

 ぱくりと一口かじり、優斗が口をもぐもぐと動かす。

「あ、ホントだ。ちょっとピリ辛で、美味しい」

 口についたソースを親指で拭う。そんな優斗の横顔を、璃空はじっと見ていた。

 優斗の部屋で、優斗と並んで、ハンバーガーを食べている。その事実に、璃空は先程からずっと胸を熱くさせている。

 こんなに幸せで、いいのだろうか。

 ついさっき、人の失恋を見た。
 哀しみと絶望と、涙を見たばかりなのに。
 本当に人間は、自分勝手な生き物だと改めて思う。人間というよりは、自分、と言った方が正しいのかもしれないが。

 気持ちも身体も、何だかフワフワしている。
 でもどこか、熱をもっているような。

 昼食を食べ終えた璃空に、優斗の顔が近付く。

 あ、と思った時には唇を塞がれていた。

「――んっ」

 優斗が離れる。

 そして、もう一度。

 優斗の顔が近付く。

 璃空は、手で優斗を押した。

「シャ、シャワー、浴びてくる」

「駄目。後で俺が入れてあげるから。髪も身体も全部俺が洗ってあげる」

「だっておれ、昨日、風呂入ってない」

「うん。いいから」

 良くない。怒鳴る前に、また唇を塞がれた。

 そのまま舌を、口内を、思うさま嬲られる。

 璃空の顔がとろんとし、身体のあちこちが、びくっと跳ねる。

 力が抜けた身体を、優斗に持ち上げられる。そのままベッドに下ろされると、優斗に覆い被さられた。

 艶っぽく優斗が微笑む。

「ちゃんと自分で処理してた?」

 ぼーっとする頭で、璃空は呼吸を短くしながら呟いた。

「……あんまり、して、ない……」

「そう。じゃあ、一回出しておこうか」

 久しぶりの、ふれ合い。

 留学する前に、優斗にはじめて抱いてもらった時以来の。

 慣れてない、久々の快感はすごくて、璃空はされるがままだった。与えられる熱で頭がどうにかなりそうだった。

 それでも。その行為は、ただ幸せで。

 二人は逢えなかった時を埋めるように。
 すれ違ってしまった日々を悔やむように。

 何度も身体を重ね合った。

 優斗は言葉通り、風呂場まで璃空を運び、髪も身体も丁寧に洗った。ぐったりとした璃空は、またされるがままだった。


 それでもその頬は、幸せそうに緩んでいた。
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