僕の世界

第5話 1年A組 女子のおはなし

私は内村理緒。正直、親とあまりいい関係ではなかったので全寮制であるこの高校を選んだ。学費はきちんと払ってくれる親だから大丈夫だとは思っていたけど、できれば特待生制度で入りたいとは思っていた。けれど選ばれず、代わりに選ばれたのは安藤祐という子だった。一目見て男の子が女の制服を着ているのかと思うほどキリッとした顔立ち、髪を長くした方が綺麗だと思うのに、この子の髪は後ろでやっと少し結べるくらいの長さ。
不思議な子だなと思ったし、雰囲気が男よりも立ち振る舞いが男らしく少し惚れてしまったのは内緒。周りの子の女の子も少し頰を赤らめてるから私と同じ感じなんだろうね。

総代として壇上に上がった安藤さんはとても凛々しく、かっこよかった。成績順でクラスが決まるので同じA組。とっても嬉しくてHRが終わってから前の席に座っている安藤さんに話しかけた。安藤さんはとてもきれいな話し方をする人で、とても話しやすかった。後から入学式前に少し挨拶した同じクラスの愛と綾奈も来て4人で色んな話をした。名前で呼んでいいと言われた私たちは嬉しくなったのが少し恥ずかしくて、私は咄嗟に話を変えて入学式で挨拶をしていた生徒会長さんの話をした。そのあと、一条生徒会長に連れていかれた祐を見て３人で「祐って本当にカッコよくてかわいいね」と話をしながら寮へ歩いた。

寮へ着くと、他のクラスにいる女の子たちが私たち３人に祐のことについてたくさん聞いてきた。寮の部屋割りについてはみんな祐と一緒の部屋になりたいけど、一緒の部屋だと緊張して気が気でないと話していたので、ここは特待生特権ということで祐は1人部屋にして、隣部屋競争を祐がいない間に繰り広げ解決した。無事！私は隣部屋を愛とゲットして、綾奈も逆隣をB組の子と勝ち取っていた。祐が生徒会室から戻ってきたのか寮のドアが開いて寮長の「おかえり」という言葉が聞こえた。祐に声を掛けようと思ったけど、なぜか祐は顔を赤くしたり急に首を振ったりして様子がおかしかったので、そっとしておくことにして明日聞こうと決めた。

やっぱり！！何か昨日あったみたい！
祐の部屋から叫び声がしたのとさっき後ろから声を掛けただけなのにこの驚きよう。しかも「一条さん」と口に出すだけでビクッとして顔を赤くする。後ろからこっそりついていた愛と綾奈の方へ振り向いて合図をして祐と話をすることにした。

昼休み、祐は食堂へ逃げようとしていたので３人で捕まえて祐と話をすることにした。観念したのか祐はいつもとは違う細々とした声で生徒会室での出来事を話し始めた。その時、祐は自覚してないみたいだけど、自分のことを「僕」って言ってて、私たちは顔を真っ赤にして祐の話を聞いた。まぁ、途中に愛が少々暴走したり綾奈は祐の僕にやられたのか体が固まっていたけど、とにかく祐を守りたいと思った。後から僕と言っている自分はおかしいと思わないのかと聞かれたので、普通にしてる祐がいいよと言うと初めてちゃんと笑ってくれた気がして嬉しかった。
おそらく誰かを好きになったことがないんだろうなと思った私たちは、祐の恋を応援すると決めました。