2 / 5
2
しおりを挟む俺の頭部の切り傷は、深いものではなかったそうで、すぐに傷は塞がった。
なんでも俺は木から落下し、頭を激しく打ち付けたのだという。
木に登るとは、一体どういう状況だったんだろうか。
「……本当に覚えていないんだな」
俺は風紀委員長に連れられて、身知らぬ部屋に入る。なんでもここは、俺と風紀委員長である相良の部屋なのだという。しかし見た事が無くて、俺はどうしていいのか分からない。だからおろおろとしていると、溜息をついた相良が、俺をソファに促した。
「元々この学園は、二人一部屋なんだ。ただし特権がある生徒は、専用の部屋を与えられる。だから俺は風紀委員長特権の一人部屋を別に与えられているし、お前も報道部部長として部屋を貰っていた。だからここは、一応規則で残っていただけの部屋だ。俺とお前は……この部屋で同室ではあったが、一緒には暮らしていたわけでは無い」
そう説明しながら、風紀委員長はインスタントのコーヒーを淹れてくれた。
「だが……今回は別だ。一人ではなにも分からないのだろう? 暫く面倒を見てやるから、ここで過ごすといい。くれぐれも問題を起こさず、静かにな」
風紀委員長はそう述べると、彼の分のカップをゆっくりと傾けた。
こうして、翌日から俺は、学園に復帰することになった。念のためだと言って、風紀委員長が俺の横を歩いている。そちらをチラチラと見ていたら、俺達の前に長身の生徒が立った。
「よぉ。記憶喪失になったって、本当か?」
ニヤリと笑った相手を見て、俺は困りながら小さく苦笑した。
「そうらしいんだ。だから……その、悪いな。お前の事も分からないんだ」
俺の声を聞くと、少し息を呑んでから、その相手が腕を組む。
すると俺と相手の間に、風紀委員長が入った。
「バ会長。体調不良の相手に絡むほど愚かだとは思わないぞ。即刻消えろ」
「なんだよアホ風紀。随分と過保護なんだな? いつもそこの報道部とは、険悪そうにしていたってのに。まるでネコとネズミみたいな感じだっただろ」
「煩い、黙れ――周藤、行くぞ」
風紀委員長が歩き出したので、俺はどうやら生徒会長らしき相手に会釈をしてから、風紀委員長を追いかける。すると後ろで声がした。
「ふぅん。あの小生意気な報道部が、俺に会釈か。確かにしおらしい姿なんて初めて見るな。早く治るといいな!」
22
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
推しを擁護したくて何が悪い!
人生1919回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。
その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。
理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。
そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。
「凛に危害を加えるやつは許さない。」
※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。
※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。
記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た
キトー
BL
【BLです】
「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」
無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。
そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。
もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。
記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。
一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。
あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。
【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】
反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。
ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。
知らないうちに実ってた
キトー
BL
※BLです。
専門学生の蓮は同級生の翔に告白をするが快い返事はもらえなかった。
振られたショックで逃げて裏路地で泣いていたら追いかけてきた人物がいて──
fujossyや小説家になろうにも掲載中。
感想など反応もらえると嬉しいです!
クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話
雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。
塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。
真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。
一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる