終焉のヒュプノス

明紅

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謁見

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タラップを降りるとそこは別世界だった。
目の前には、ランドの村の様な田舎でもハルキュオスの様な未来都市とも違う、どちらかと言うと近代の都市と言った感じの風景が広がっていた。
そう…まるで渋谷か新宿の街並みを高層ビルから見ている様な…まぁそんな感じだ。

「ここがムートリアだ。」
ランドはまるで自分の物のように言った。

「ランド様お待ちしておりました。」
完全に『お上りさん』状態だったオレたちの横から一人の男が現れた。
「では、早速こちらへ。」
そう言うと、俺たちを誘導しはじめた。

男に誘導されるまま進むと直径4~50センチ程の円盤に乗る様に言われた。
それはまるで、どこかのロボット掃除機みたいな形をしていた。

それが何なのかオレにはピンと来たが、他のメンバーは好奇心と猜疑心さいぎしんの入り混じった様な表情で、オレに答えを求めて視線を送ってくる。
その視線に耐えられず、円盤にサッと乗って見せた。
円盤に乗った瞬間…気持ち沈んだ様な感触はあったが、すぐにバランスを取り戻した…コレって、少し浮いてるんだな。

「は…創くん…大丈夫なの?それ…。」
不安げにリリアが尋ねてきたので、少しドヤ顔でニヤッと笑ってみせた。
それを見て安心したのか皆次々に円盤に飛び乗った。
あちこちで「おぉ」とか「ぅわ」って感じの声が聞こえる。

男は、全員が乗ったのを確認して「では。」と呟いて進むであろう方向に顔を向けると、ゆっくりと円盤が動き出した。
突然足元の円盤が聞こえるか聞こえないかくらいの甲高い小さな音をたてて動き出したもんだから、軽く悲鳴めいた声が背後から聞こえてきた。

円盤は等間隔に一列に並んで進んで行く。
最初は歩くよりも遅い速度でゆっくりと進み、次第に速度を上げていった。
連結している訳じゃないけど、どうやら先頭の円盤についていく仕様になってるみたいだ。

コレってこの人がコントロールしてるのかな?

途中何箇所か垂直に登る場所はあった。
目の前に壁が現れた時は正直驚いた。
壁の直前で突然先頭の円盤が垂直に浮かび上がるもんだから…。
それに続いて後の円盤も垂直に上昇していった。
時間にして5分程度で、如何にもココに王様が居ますって感じの大きな扉の前に辿り着いた。
扉の両脇に衛兵らしき人が立って居て、扉を開けてくれた…ってスライドドアなんかーいっ!

さっきからツッコミところが多すぎる…なんなんだココ?
ココは所謂謁見の間って場所みたいだな…扉の向こうには絵に描いたような玉座が見える。

扉の前で円盤から降りる様に言われ、両サイドを複雑な模様であしらった赤いカーペットを王の前まで進み玉座の前で跪いた。

…この人が王様?…あの映像の人だ…でも…あれって何年前だよ…何でこんなに若いんだ?
もしかして、この人の身体もオレと同じなのか?

「皆、よく来てくれた。堅苦しい挨拶は無しだ。楽にしてくれ。」
王様が言った直後にランドが立ち上がった。
「連れてきたぞ、アンタの会いたがってたヤツを!」
サラの親父さん…王様相手に無礼極まりないな(笑)

ランドがオレとリリアに目配せをしてきたので、その場に立ち上がった。
ココは誤魔化し無しで相手の反応を見るべきだな。
「初めまして…由良 創ゆら はじめといいます。」
「リリア=ノースと申します。」
オレが名前を告げた瞬間、王様の表情が一瞬緩んだ様に見えたが、リリアが名前を言うと少し困惑した様な表情に変わった。

「由良くん、君の身体は人形だね?…リリアくん…もしかして君は…。」
リリアについて説明しようと思った瞬間、リリアが自分から喋り始めた。
「はい、お察しの通り、私には5年前以上の記憶がありません。」
「そうか…ところで君は幾つだ?」
「え?私ですか?たぶん創くんと同じくらいなんじゃかな?記憶が曖昧でハッキリわからないんですよねぇ…。」
その言葉を聞いて王様は腕を組んで少し考える様な素振りを見せた。

「由良くん、君は?」
「オレですか?16です。リリアの歳がオレと同じくらいだと仮定して5年前だと10~12歳くらいですよね?」
っとそこまで言って思い出した。
そうだ、あの生徒手帳どこやったっけ?
念のため持ってきてたと思うんだけど…。

「由良くん…君はいつの時代のどこからきた?」
床に置いていたカバンを漁っていると、王様から次の質問が飛んできた。
「2018年の地球です。」
「2018年…。」
あ…地球ってところには引っかからないんだ…。
お、あったあった。

「王様!コレ…リリアが見つかった時に持ってたみたいで…。」
カバンから手帳を取り出して掲げる様にして見せると、王様は玉座から立ち上がりこちらに駆け寄ってきた。
「ちょっと見せてくれ。」
王様の突然の行動にたじろいでいると、オレの手から手帳を奪い取りマジマジと読み始めた。

「…それ…だいぶかすれてて…。ってか読めるんですね…。」
「いや大丈夫だ。間違いないこの息子…リリアは私の姪だ。」
「姪??」
その言葉にそこに居た全員が何かの聞き間違いじゃないかと聞き返した。
まるで皆の頭の上に巨大なクエスチョンマークが浮かび上がるのがっている様だった。


§


王様の『姪』発言で一同が困惑していると、この部屋まで連れてきてくれたおとこがオレとリリアを残して、他のメンバーを「お茶の用意があるので。」とかなんとか言って別室に連れて行った。

「あ…あのぉ…王様…?質問しても良いですか?」
皆と別れ別れになってオレとリリアは謁見の間の横にある子部屋へ通されていた。

部屋には、王様とオレとリリア…そして見るからに体格の良い衛兵が一人。
衛兵は王様の右斜め後ろに立ってコチラを警戒していた。

「質問とは?」
「はい…王様。まずお名前を…。」
一瞬衛兵が『何聞いてんだコイツ』って視線を送ってきたが、それを察してか王様が右手を上げて静止してくれた。

「そうだな、まだ名乗ってなかったな。薄々気付いているだろうが、私の名前は如月荘壱きさらぎそういちだ。」
やっぱり…。

「勿論この身体は本物だよ。君のソレと違ってな。」
オレの考えてるコトがバレバレだ(汗)

「本物って…コールドスリーブで最近まで寝てたってコトですか?」
「うーん…少し違うな。私に特殊なチカラがあってね…。」
「もしかしてそのチカラって私の魔法のチカラと関係があるんですか?」
リリアも自分のコトがわかるかもしれないからなのか、前のめりに話に加わってきた。

「あぁ知華チカは、小さい頃から不思議なチカラを使ってたからな。」
「チカ?」
リリアは、突然出てきた『知華』という名前にキョトンとしている。
勿論オレもだけど…。

「あぁリリアの本当の名前は知華だ。如月知華…コレが君の名前だよ。」

「チカ………ダメだ…やっぱり思い出せない…。」
本名を聞けば何か思い出すかと思ったけど、何も思い出せないみたいだな。

「王様、ちょっと待ってください。なんか色々と腑に落ちないんですが…?」
「だろうな。コレには私の能力が大きく関わってくるからな。」
オレの疑問に即答で返してきたってコトは、特に隠すつもりも無いってコトだよな。
でもこんな話し衛兵さんに聞かれても大丈夫なのかな?

「心配要らないよ。彼は私の息子だからね。」
また、考えてるコトがバレてる…そんなに分かりやすいのかなぁ…オレ(汗)
ってか息子さんなの?
いや…なんか余計に疑問が増えたんだけど…王様の能力っていったい…。

「君は本当にわかり易いな。」
「やっぱり….。」
「それに君のコトは記憶しているよ。」
「え?どこかでお会いしましたっけ?」
「うーん、君のまだ知らない未来でなら会ったことはあるな。では私の能力について説明しよう。」

え?え?え?どーゆーコト?
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