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未知と未開
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このゲートを潜るって行為…オレはもう慣れた。
しかし、サラ達には当然初めての事だったから、潜るのにかなり躊躇していた。
特に男の方が…(笑)
ゲートを潜って最初に目にした景色は、それまで居た茶色中心の殺風景な場所ではなく、つい先日旅立ったオリバー邸の前庭だ。
サラ達にとっては見た事もないであろう、綺麗に整備された庭とその向こうに建つ大きな屋敷。
目の前に広がる光景だけで、自分の気持ちに素直に興奮しているサラの横で、一見冷静を装ってはいるが、キラキラした目だけで、しっかりと周囲を観察している付き添いの男。
その対照的な二人を見ていると、ジワジワと笑いがこみ上げてきた。
「リリア様、ハジメ様。おかえりなさいませ。」
オレたちが帰って来たのが分かったのか屋敷の中から、いつもオリバーの身の舞うりの世話なんかをやっているメイドさん的な女性が出迎えてくれた。
「そちらの方は?」
「あぁ、客人だ。オリバーさんはまた下に居るのかな?」
「いえ、自室にいらっしゃいますよ。どうぞ。」
そう言うと、メイドさんはオレたちを引き連れて、オリバーの部屋まで案内してくれた。
「なぁリリア、あのメイドさんってオレと同じ感じなのか?」
「ん?そうだよ。どうして?」
「いや…ちょっと気になってな。」
何が気になったかというと、前にこの屋敷にきた時にいたメイドさんと姿形は同じなんだけど、何か違和感というか何というか…得体のしてないものを感じていたからである。
「どうしたの?」
「…いや、あの人って前からいたっけ?」
「居たよ…。あぁそういう事ね。あの人はね、時々中の人が入れ替わるのよ。」
「え?」
「ほら、創くんのそれもそうだけど、あの体は医療用って言ったでしょ?」
「うん。」
「でもあの身体は汎用タイプだから、何人かの意識を定期的に入れ替えてるのよ。」
「…そんな着ぐるみみたいな使い方してるんだ…。」
「着ぐるみ?まぁ、知ってるだろうけどココの仕事って大変でしょ?だから数人でローテーションしてるのよ。」
ますます着ぐるみのバイトみたいだ…。
しばらく屋敷の中を歩いて、先日招かれたオリバーの部屋に通された。
部屋に通された瞬間、思わず目を疑った。
リリアの反応も同じ様で、小さく「え?」っと言ったきり次の言葉が出てこない。
目の前に居るのが本当にオリバーなのか確信が持てない。
確かにその特徴はオリバーなんだが、白髪じゃ無い…。
髪を染めたって感じではなく、見た感じもかなり若い身体みたいだった。
「ど…どう言うことですか?」
オレの口から、何とか絞り出した言葉がそれだった。
「はっはっはっ。驚いとるな。そーじゃろそーじゃろ。これが本来のワシの身体じゃ。」
「お師匠様…。まさかそ…それは生体なんですか?」
リリアが恐る恐る聞いている。
どうやら、オリバーの生身の体が動いているところを見るのは初めてな様だ。
「うむ。約100年ぶりの生身の体じゃ。前にも言ったが、ちょうど新しい器に変える時期だったんじゃがな、柱の機能を止めたじゃろ?だからもう器じゃなく生体で余生を過ごそうかと思ってな。」
「オリバーさん、その身体って…。」
「ん?あぁ心配は無いぞ、別に死期が近いわけでも無いし、病気の進行も止まっとる、それに肉体の劣化もしておらん。昔ののままだ。」
見た感じ50歳かそこらにしか見えない…そりゃ若いはずだ、前の器は100歳前後って感じだったもんな。
「でもその姿で、その喋り方ってのが違和感ありまくりなんですが(笑)」
「それは仕方ない。もう数百年使っとった言葉じゃしの、簡単には抜けんわ。ところで、その二人は?」
オリバーのあまりの変わりように、言われるまで連れてきた二人のことをすっかり忘れてしまっていた。
「お師匠様、聞いてください。海の向こうには人が生きてます。この二人は海の向こうで出会った方達です。」
リリアは少し興奮気味にオリバーに説明していた。
サラたちはと言うと、オレたちの会話よりも部屋の中にあるもの全てがきになるようで、落ち着きなく色々な所に視線を送っているのがわかった。
「君たち、そんなに珍しいかね?」
そう言うオリバーも連れてきた二人のことを、頭の先から足の先まで舐め回す様にじっくりと観察している。
「珍しいと言うか…見たことも無いモノがそこら中にあるから…。」
雰囲気に圧倒されながらもサラはそう返した。
オリバーは、ひとしきり二人を観察して、やっと二人に話し掛けた。
「いや、すまんすまん。珍しそうにしていたのはワシの方だったな。」
その後オリバーは、しばらく二人から向こうの状況を聞いていた。
サラから出てくる言葉を片っ端から事細かにメモししている。
まぁそうだよな、この大陸以外には人は住めないって事になってたわけだもんな。
それにしても、あの村に300人程度住んでるって言ってたけど、他の場所には実際どのくらい居るんだ?
「…では、君たちの住む村の東には大きな都があると言うのだな?」
「そうだ、私の父はひと月ほど前に都からの使者と共に村を出たからな。」
「その東の都は文化レベルと言うか技術と言うか、どんな生活をしているかわかるか?」
「文化?あぁリリアや創が言うような化学とか魔法とか言うモノか?そんなモノは聞いたことがない。」
「そうか…。」
「なぜそんなことを?」
「いや、我々と同じ境遇の者たちなら近い技術力を持っていても不思議ではないからの。まぁもしそんな技術があればこちらの大陸に渡ってくるものも居ただろうしな。」
だよな、人間の好奇心ってのは底が知れないものだ。
海の向こうに何があるかって気にならないはずがない。
まぁ。サラが言うには海竜のいる海を渡るための船がないってのが最大の理由なんだろうけど、想像するに恐らく過去に何かあったんだろうな。
それで、こっちの大陸と同じく海を渡るのは禁忌とされていたって所か?
オリバーのサラへ対しての興味は尽きることなく、その後も食事を挟んで深夜まで続いた。
しかし、サラ達には当然初めての事だったから、潜るのにかなり躊躇していた。
特に男の方が…(笑)
ゲートを潜って最初に目にした景色は、それまで居た茶色中心の殺風景な場所ではなく、つい先日旅立ったオリバー邸の前庭だ。
サラ達にとっては見た事もないであろう、綺麗に整備された庭とその向こうに建つ大きな屋敷。
目の前に広がる光景だけで、自分の気持ちに素直に興奮しているサラの横で、一見冷静を装ってはいるが、キラキラした目だけで、しっかりと周囲を観察している付き添いの男。
その対照的な二人を見ていると、ジワジワと笑いがこみ上げてきた。
「リリア様、ハジメ様。おかえりなさいませ。」
オレたちが帰って来たのが分かったのか屋敷の中から、いつもオリバーの身の舞うりの世話なんかをやっているメイドさん的な女性が出迎えてくれた。
「そちらの方は?」
「あぁ、客人だ。オリバーさんはまた下に居るのかな?」
「いえ、自室にいらっしゃいますよ。どうぞ。」
そう言うと、メイドさんはオレたちを引き連れて、オリバーの部屋まで案内してくれた。
「なぁリリア、あのメイドさんってオレと同じ感じなのか?」
「ん?そうだよ。どうして?」
「いや…ちょっと気になってな。」
何が気になったかというと、前にこの屋敷にきた時にいたメイドさんと姿形は同じなんだけど、何か違和感というか何というか…得体のしてないものを感じていたからである。
「どうしたの?」
「…いや、あの人って前からいたっけ?」
「居たよ…。あぁそういう事ね。あの人はね、時々中の人が入れ替わるのよ。」
「え?」
「ほら、創くんのそれもそうだけど、あの体は医療用って言ったでしょ?」
「うん。」
「でもあの身体は汎用タイプだから、何人かの意識を定期的に入れ替えてるのよ。」
「…そんな着ぐるみみたいな使い方してるんだ…。」
「着ぐるみ?まぁ、知ってるだろうけどココの仕事って大変でしょ?だから数人でローテーションしてるのよ。」
ますます着ぐるみのバイトみたいだ…。
しばらく屋敷の中を歩いて、先日招かれたオリバーの部屋に通された。
部屋に通された瞬間、思わず目を疑った。
リリアの反応も同じ様で、小さく「え?」っと言ったきり次の言葉が出てこない。
目の前に居るのが本当にオリバーなのか確信が持てない。
確かにその特徴はオリバーなんだが、白髪じゃ無い…。
髪を染めたって感じではなく、見た感じもかなり若い身体みたいだった。
「ど…どう言うことですか?」
オレの口から、何とか絞り出した言葉がそれだった。
「はっはっはっ。驚いとるな。そーじゃろそーじゃろ。これが本来のワシの身体じゃ。」
「お師匠様…。まさかそ…それは生体なんですか?」
リリアが恐る恐る聞いている。
どうやら、オリバーの生身の体が動いているところを見るのは初めてな様だ。
「うむ。約100年ぶりの生身の体じゃ。前にも言ったが、ちょうど新しい器に変える時期だったんじゃがな、柱の機能を止めたじゃろ?だからもう器じゃなく生体で余生を過ごそうかと思ってな。」
「オリバーさん、その身体って…。」
「ん?あぁ心配は無いぞ、別に死期が近いわけでも無いし、病気の進行も止まっとる、それに肉体の劣化もしておらん。昔ののままだ。」
見た感じ50歳かそこらにしか見えない…そりゃ若いはずだ、前の器は100歳前後って感じだったもんな。
「でもその姿で、その喋り方ってのが違和感ありまくりなんですが(笑)」
「それは仕方ない。もう数百年使っとった言葉じゃしの、簡単には抜けんわ。ところで、その二人は?」
オリバーのあまりの変わりように、言われるまで連れてきた二人のことをすっかり忘れてしまっていた。
「お師匠様、聞いてください。海の向こうには人が生きてます。この二人は海の向こうで出会った方達です。」
リリアは少し興奮気味にオリバーに説明していた。
サラたちはと言うと、オレたちの会話よりも部屋の中にあるもの全てがきになるようで、落ち着きなく色々な所に視線を送っているのがわかった。
「君たち、そんなに珍しいかね?」
そう言うオリバーも連れてきた二人のことを、頭の先から足の先まで舐め回す様にじっくりと観察している。
「珍しいと言うか…見たことも無いモノがそこら中にあるから…。」
雰囲気に圧倒されながらもサラはそう返した。
オリバーは、ひとしきり二人を観察して、やっと二人に話し掛けた。
「いや、すまんすまん。珍しそうにしていたのはワシの方だったな。」
その後オリバーは、しばらく二人から向こうの状況を聞いていた。
サラから出てくる言葉を片っ端から事細かにメモししている。
まぁそうだよな、この大陸以外には人は住めないって事になってたわけだもんな。
それにしても、あの村に300人程度住んでるって言ってたけど、他の場所には実際どのくらい居るんだ?
「…では、君たちの住む村の東には大きな都があると言うのだな?」
「そうだ、私の父はひと月ほど前に都からの使者と共に村を出たからな。」
「その東の都は文化レベルと言うか技術と言うか、どんな生活をしているかわかるか?」
「文化?あぁリリアや創が言うような化学とか魔法とか言うモノか?そんなモノは聞いたことがない。」
「そうか…。」
「なぜそんなことを?」
「いや、我々と同じ境遇の者たちなら近い技術力を持っていても不思議ではないからの。まぁもしそんな技術があればこちらの大陸に渡ってくるものも居ただろうしな。」
だよな、人間の好奇心ってのは底が知れないものだ。
海の向こうに何があるかって気にならないはずがない。
まぁ。サラが言うには海竜のいる海を渡るための船がないってのが最大の理由なんだろうけど、想像するに恐らく過去に何かあったんだろうな。
それで、こっちの大陸と同じく海を渡るのは禁忌とされていたって所か?
オリバーのサラへ対しての興味は尽きることなく、その後も食事を挟んで深夜まで続いた。
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