終焉のヒュプノス

明紅

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魔法都市へ

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ガラス玉が転がってしまわないように、ちょうど机の上にあった小さなドーナツ型のスクイーズに置いてみた。
「こんなもんかな?ちゃんと見えてるか?」
『うん、大丈夫。じゃぁ始めるね。』

ガラス玉の向こうのリリアは、小さな人形を傍に置いて、またカードをかざしてボソボソと呟き始めた。
オレは只それを見つめていれば良いらしい。
まぁ催眠術なんかに掛かるつもりはないけど、本当に意識が飛ばせるんならみてみたい気もする。

でもその場合ってどうなるのかな?
幽体離脱みたいな状態なのかな?
もし成功したとして、戻って来る時はどうすれば良いんだろ?
ちゃんと戻ってこれるのか?

色々考えながらガラス玉を見つめて居ると、今度は目が眩む程の閃光が放たれた。
「あ゛ーっ…クソッ…眩しいじゃないか…。」
「よし!成功だ!」
あれ?なんかリリアの声が近くで聞こえる気がする…。
ん?誰だこの大きな女は?リリアか?なんでこんなに巨大化してるんだ?
それにしても凄く身体が動かし辛いな…なんでだ?

 状況が飲み込めないでいると、突然身体が宙に浮いた感じがしてリリアの顔が近づいてきた。
「えーっと…君、そこに入ってるよね?」
「おいおい!近い!近い!」
あまりの近さにたじろいでしまった。
でもなんだか自分の喋った声がこもった感じになってるのはなんでだ?

「あぁごめん。えっと、君…名前を教えてもらってもいいかな?…なんか呼びづらくて…。」
「あ、そうか、名乗ってなかったな。はじめだ。由良 創 ゆら はじめ。創でいいよ。」 
「じゃ改めて、私はリリア=ノースだ、よろしく。」
「いや、よろしくってオレ今どんな状況なの?」
リリアは、ちょっと申し訳なさそうな顔をしてオレの身体の向きをクルッと反転させて、部屋の壁に取り付けてある鏡に向かわせた。

「今、君…創くんの意識はこの中だ。」
そこに映っていたのは、さっきカードを翳した時に傍に置いてあった人形だった。

「え?ウソだろ?この中って…この人形の中かよ…マジか…。」
道理で身体が動かし辛い訳だ。

「ごめん。とりあえず試してみたかっただけだからうつわが必要だったんだよね、でも実験は成功したから安心して!」
「待て!オレは何に安心すれば良いんだ?」
「大丈夫、次はちゃんとした器を用意するから。」
「いやいや、次って…。だいたいこの意識の転送って何に使ってるんだよ。」
「主に医療目的かな?まぁお金持ちの人達は不老不死だとか言って元の体を凍結して新しい器に意識を移し替えたりしてるけどね。」
「なんか怖いな…。」
「そうかなぁ?至って安全な医療行為なんだけどなぁ。」
「それより、ちゃんと元の身体に戻れるんだろうな?」
「じゃぁ今から戻してみよーか?」
「そんなに簡単に戻せるものなのか?」
「術式を解くだけだから。」
そんなもんなのか?
なんか凄く簡単に言うけど、本当に大丈夫なのかな?

「じゃぁ戻すね。」
リリアはまたカードを翳して何かを呟いた。
再びカードから光が放たれた。


§


『創くん大丈夫?』
意識が自分の身体に戻ったのはわかるけど、ちょっと頭がクラクラする。
本当に意識が転送されていたのか確証は無いが、さっきまであの人形の目線で見ていたのは確かだ。
催眠術に詳しい訳じゃないけど、そんな事って可能なんだろうか?
本当に魔法なのかな?

『創くーん!大丈夫ぅ?』
「…大丈夫。」
『良かったぁ。反応無いから…。でもちゃんと戻れたでしょ?』
「うん、まぁどんな仕組みなのかは分からなかったけど…。」
 『それより今度はちゃんとした器を用意するからちょっと待っててね。』
「いや、もういいよ。」
『え?なんでよ!せっかくこっちに来れるのに。楽しいよ。』
「なんだお前、暇なのか?」
『ひ…暇な訳ないじゃない!魔法の研究の為だよ!』
「じゃオレは実験台な訳だ。」
『実験台って…そんなつもりじゃないけど…。』
ちょっと言い過ぎたかな?
リリアが俯いちゃった。
このままだと後味悪いしな…ちょっとフォローしとくか。

「じゃぁもう一回だけだぞ。今度ははちゃんと動けるヤツにしてくれよ。」
リリアの顔がパッと明るくなった。
現金なヤツだ。

『じゃぁ早速用意するから、全身が見える位置まで下がってもらえるかな?』
「今度はなにするんだ?」
『創くんが違和感なく動ける様にちょっとした器を作る準備。』
リリアに言われるままガラス玉から離れて立った。

「このくらいで良いか?」
『大丈夫。ちょっと待ってね。』
そのまま立って居ると、ガラス玉からまるでレーザーみたいな青くて細い光が飛んできて、頭上で輪っかを作った。
その光の輪っかはその場所を起点に無数の輪っかに分裂して筒状になって足元までスッポリとオレを包み込んだ。

「おっ…おっ…おっ…。」
『そのままじっとしてて。』
しばらくすると光の輪っかは足元から頭上の起点に向かって収束して再びガラス玉の中に返って行った。
なんだかCTスキャンされた気分だ。

『これで精巧な器が出来るからしばらく待ってて。』
「待つってどの位だ?」
『そうだなぁ、陽が傾く頃には出来てると思うけど。』
「陽が傾く?…そっちの時間の考え方ってどうなってるんだ?」
『時間?』
「あぁ、こっちは1日が24時間で1時間は60分で1分は60秒って単位を使ってる感じなんだけど?」
『似たような感じかな?単位なんかは違うけど、概ね同じだと思う。』
「そうか、リリアの住んでる星の自転は地球と変わらないって事か…。」
『地球?創くんの住んでる星は地球って言うのか?』
リリアはちょっと驚いた顔で聞き返してきた。

「そうだけど、なんでだ?」
『子供の頃…何かの文献で目にしたような気がして…。』
「そっちの星の名前は?」
『この星の名前か?デーヴァだよ。もう科学文明が滅んで千年以上経ってるから、残ってる記録でしかわからないけど、昔は他の星にも行ってたみたいだよ。』
その他の星の中に地球があったのかな?
だとしたら既にそのデーヴァって星の人間がこの地球にも来てるってことだよな?

『また難しい顔してるね。何か考え事?』
「いや、異星人ってもっと容姿とか違うのかと思ってたからさ。」
『それは私も驚いた。まるで同じだったから
創くんがまさか違う世界の住人だとは思わなかったもん。』
「…あぁ、それで陽が傾く頃って夕方だよな?それまで何もする事無いよな?ここに居なくても問題ないか?」
『え?うん…大丈夫だよ。ちゃんと戻って来てくれるなら。』
「いやいや、ここオレんちだし。」
流石に夕方までこんな状況でリリアと話してても飽きるだろうしなぁ…。
とりあえず夕方まで出掛けてこよう。
暑いけど…。


§


家から出たはいいが、あまりの暑さにコンビニにだけ寄ってすぐに帰ってきてしまった。
でも自室には戻らず、しばらくリビングで過ごすことにした。

エアコンを効かせてソファに転がって居るといつのまにか寝落ちしてしまっていた。
そのまま、仕事から帰ってきた母親に起こされるまでガッツリ寝てしまった。

「あんたさぁ、いくら夏休みだからってダラけ過ぎじゃない?」
「だってやる事ないし…。あーなんか腹減った。晩飯なに?」
「今夜はトンカツ。って言うかさ、そんなんだったらお父さんの仕事について東京でも行ってくればよかったのに。」
「えー暑いやん。それに展示会なんか行っても手伝えること無いし…。」
「せっかくの青春が勿体無いぞ。」
「大きなお世話だ。」
「あ、そうそう母さんも明日から一週間出張だから。」
「えーマジで?飯はどーすんだよ?」
「お前の頭の中は飯の事だけか?ほら、晩御飯できたよ。食べたら片付けといてね。」
「ん?どっか行くの?」
「お向かいの佐藤さんちで飲み会。」
「明日から出張なのに?」
「何か問題でも?」
そう言いながらテーブルに出来上がった料理を並べて、そそくさと出て行った。

外はまだ明るいが午後7時を回っていた。
用意された晩飯を食べ終わり、スマホを見ながら自室に戻った。

『遅ーーーい!!』
部屋に入った途端大音量でリリアの声が聞こえてきた。

夕方にはって話をすっかり忘れていた。
いや、忘れていたと言うよりは、記憶から消え去っていたと言った方がいいかもしれない。
頭のどこかで、今朝の事は夢か何かだと思い込んでたんだろう。

『いつまで待たせるのよ!確かに陽が傾く頃って言ったけど、もう夜に近いでしょ?』
「ごめん。」
『もう待ちくたびれたよ。せっかく創くんの為に作ったのに…。』
「ホントごめん。家には帰ってたんだけどな…寝てた…。」
ガラス玉のむこでリリアがムスくれてるのが見える。
そのリリアの横にオレそっくりなマネキン?みたいなモノが立っていた。

「リリア、それって…。」
『そーだよ。創くん専用の器だよ。せっかくさ…頑張って作ったのにさ…、。』
「本当にごめん。悪気があったわけじゃ無いんだってば。」
ここはなんとか機嫌を直してもらわないとな。

「それってどうやって作ってるんだ?ココから見ただけでもかなり精巧に作られてるのがわかるんだけど。」
『…教えてやらない。』
「機嫌直おしてくれよぉー。早くその中に入ってみたいなぁー。」
『心にも無いことを…。』
なんか面倒臭いな…。

「そうか…じゃぁやめようかなぁ…。」
オレとしては、やってもやんなくても良いんだけどな。 
これでリリアが諦めるならそれも良しって感じかな?

『まぁせっかく作ったんだから一度コレに入ってみようか?』
「何言ってんだか、ホントは早く試したくて仕方ないんだろ?」
『そうかそうか、創くんはそんなに試してもらいたいんだ。仕方ないな、じゃぁ始めようか?』
「言ってねぇーよ…まぁいいや、いつでもどうぞ。」
『じゃ…じゃぁ始めるね…。』
前回同様リリアがカードをかざして術式を発動させた。

一瞬の閃光の後、オレの意識は再び向こうの世界へと飛んだ。


§


「今度はどんな感じ?細部まで細かく作ったんだけど…?」
確かに今回は自分の体みたいに自由に動くみたいだ。
試しに右手を動かしてみる。
指先までちゃんと動くし視覚も問題ないみたいだ。

「うん、なかなか快適。」
「良かった。声もちゃんと出てるね。」
「どんな作りになってるんだ?」
「創くんの体をスキャンしたでしょ?あの情報をもとに生体人形を生成したの。」
「生体人形?」
「うん、もともと医療用だから血管とか臓器はないんだけどね。だから怪我しても修復したり交換すれば元通りになるの。ちなみに皮膚とか髪の毛なんかも本物っぽく作ってるよ。」
「ふーん…突っ込んで聞くと多分オレには理解できない技術なんだろうなぁ。ところでオレの意識ってどこに入ってるわけ?」
「頭の中に意識を格納するための媒体があるの、そこに創くんの意識が格納されてて身体をコントロールできるようになってるの。」

なんかVRゲームのアバターみたいだな。
そう考えれば扱い易いかな?

「ところでさ、オレがこの中に入ってる間って向こうのオレはどうなってるんだ?」
「眠ってる状態だよ。こっちから解除しない限り何かの衝撃で目が覚めるってコトもないかな?」
「だったら良いんだけど…。」
まぁちょっと不安だけど信じるしかないか…。

話をしながら周りを見渡してみると、とても異世界に来たとは思えないほど散らかった部屋に居るのがわかる。
床一面に積まれた本の山と実験道具だろうか?謎の器具が無造作に転がっている。
他に見える範囲にある物は、リリアが座って椅子が一つと、とても作業なんか出来そうにない散らかりまくった机があった。
あとは決して狭くはない部屋の両サイドに天井まで届く程の本棚…勿論その本棚の中にもビッシリと本が詰まっている。

「ここってリリアの部屋なのか?」
「ここは研究室だよ。こんな所に住んでるはずがないじゃない。そんな事より外に出掛けてみない?」
リリアはそう言ってオレの手を引いて部屋から出ようとした。

「ちょ…ちょっと待てーい!」
掴まれた手を振りほどいてリリアが出ようとするのを止めた。
キョトンとした表情でこちらを見ている。

「お前…まさかこのままの格好で連れ出すつもりか?」
その言葉にリリアはオレの頭からつま先までゆっくりと視線を落として行った…っと同時にみるみる顔が赤くなっていくのがわかった。
そう、オレの身体はまっ裸。
リリアが自信ありげに言っていた様に精巧に作られた人形。

本当に精巧に作られた…そう股間に在るモノまで精巧に作られている。
しかし、いくらマネキン的な身体だからといって、このまま外に出るのはマズイだろ?
異世界に着いて、外出直後に変質者扱いされて捕まるとか考えたくもない…。

「ご…ごめんなさい(汗)意識転送が上手くいって浮かれちゃってた…。すぐ服を用意するね。」
リリアは慌てて部屋を出て行った。
廊下を走る音がしたかと思ったらバターンッとすごい音がした。
扉から顔を出して覗いてみると、廊下の先で思いっきりコケているのが見えた。

「大丈夫かぁ?」
声を掛けるとゆっくり立ち上がり照れ臭そうな顔を見せすぐ横の扉を開いて中に入って行くのが見えた。

向こうの部屋で『ガチャン』とか『ゴトンッ』って音が何度も聞こえてきた。
いったい何をやってるんだか…。

しばらくすると、その音は止みこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
足音は、この研究室だと言ってた入り口の手前で止まり、開けっ放しの扉の横から一つの塊が放り込まれてきた。

「うわっ何するんだよっ!」
「とりあえず、それでも着てて!」
放り込まれたモノは洋服だったみたいだ。

「…男物じゃないけど、大丈夫だと思うから…。」
入り口脇に立っているのだろう、声だけ聞こえる。

「あ、ありがとう。」
床に落ちている服を拾い上げて着てみた。
パッと見、女物とわかるけど、一応考えて探してくれたんだろう。
しかし着てみるとサイズはちょっと窮屈だ。
まぁ無難なチョイスだな。
このシャツのヒラヒラしたのが無ければ…。

「お待たせ。」
服を整えて廊下で待っているリリアに声を掛けた。

「じゃ…じゃぁ行こうか。」
リリアはオレに視線を合わせず前を向いたままそう言うとさっき走って行ったのとは逆方向…研究室から出て右側にある玄関と思われる所に向けて歩きだした。


§


外に出てみると、そこはとてもリリアの言っていた魔法都市というイメージではなく、想像していたよりも質素で田舎っぽい場所だった。
周りには規則正しく背の低い…高くても五階建て程度の建物が並んでいる。
通りはちゃんと舗装されている様で、土がむき出しと言う訳ではなさそうだ。
建物も木造ばかりという感じではなく、何というか近代的な感じを受けるモノが多い気がする。
遠くにはビル群の様なものも見える。
あそこだけ見ると、確かに都市って呼べるレベルだろうな。

しかし見渡す限り、街の規模に反して人の数が圧倒的に少ない。
今が夜だからなのか、それとも普段から外出する事が少ないのか…。
まぁ文化も世界も違う訳だから、オレの物差しで見ても仕方ないんだけど…。

「とりあえず、創くんの服を買いにいきましょうか?」
そう言うとリリアは腰のベルトに留めてある小さなバッグから数枚のカードを取り出し、更にそこから一枚のカードを選び、また何か呟いて正面にかざした。
すると目の前に高さ3メートル幅2メートル程の大きな門が現れた。
門の囲いの部分はゴチャゴチャと、でもとても綺麗で細かい装飾がされている。
しかし囲いの内側は薄暗く、まるで濁った水面の様な膜が張っている様なボヤッとした感じの景色が見える。
リリアは門の右側の柱に出っ張ったダイヤルをクルクルと回し始めた。
それに合わせて門の中の景色も変わっている様だった。

すると、リリアはオレの左手首を掴んで門の中へと入って行った。

一瞬空気が変わるのがわかった。
なんの説明も無しに門をくぐらされて、たじろいでいると更にグイッと引っ張られた。

そこがさっきまで居た場所と明らかに違う場所、言うなれば大都会的な場所だと言うことはすぐに分かった。

さっきまでは夜空が綺麗に見えていたのに、今周りに在るのは見渡す限りの高層ビル群。
ただ、どの建物も見慣れたビルとは違い光沢のある見たこともない素材でできている様に見える。

変な表現だけど、なんだか3DのCGにテクスチャを張っただけの様な作り物と言うかハリボテの様な印象を受ける。

「そんなに珍しい?創くんの住んでる世界にもこのくらいの建築物ってあるでしょ?」
「あるけど…なんか違うんだよなぁ…。まぁ違う世界なんだから当たり前かもしれないけど…。」
「ふーん…。とりあえずあのお店に行ってみよ。」
リリアに連れられて一軒の洋服屋と思われる建物に入っていった。

「好きなの選んで良いわよ。」
店内には棚とハンガーに多種多様な洋服が並べられている。
こう言うのってどの世界も一緒なんだな。

ひとつひとつ手にとって見てみるが、なかなか着る勇気の持てない服ばかりだ。
色々と物色して、最終的に選んだモノが赤い革のベストに丸首の白いTシャツ的なモノ、それと黒い革パン。
中々のロックテイストに仕上がった。
勿論、靴もロックテイストのハーフブーツ。
格好だけ見たら異世界感ゼロだな…。

「そんな感じの服が好きなんだぁ。…似合ってるね。」
「なんだ今の間は…?」
「いや、ちょっと今の流行りって感じじゃなかったから。」
「いーよコレで、さっきのよりは全然マシだ。」
まぁ支払いはリリアがしてくれたから何着せられても文句は言えないけど…。

洋服を買って店を出て、改めて辺りを見渡してみると夜だと言うのに凄く明るい事に気がついた。
特に街灯の様なものが設置されている訳でもないのに、街全体が明るい。
どうやら建物自体が発光している様だった。
どんな技術なんだろ?やっぱり魔法的な何かなんだろうな。

「じゃ洋服も買ったし、街を散策してみる?」
リリアは明るく話しかけてくる。

しかしその明るい笑顔の中に時折見せる暗い表情を見逃さなかった。
「…いいけど…ひとつ聞いてもいいか?リリア…。」
「なに?」
「やっぱり偶然とかじゃないだろ?」
朝からずっと疑問に思っていた事を改めて聞くことにした。

「え?なにが?」
「なにが?じゃないよ。オレの所に来たのは偶然だったとしても、オレの住んでる世界に来たのは偶然なんかじゃ無いんだろ?」
「え?何言ってるの?偶然だよ偶然。たまたま繋がった先が創くんの住んでる世界だったってだけで、狙って行ける訳ないじゃ無い。魔法って言っても万能じゃないんだから。」
「じゃぁそこ迄は信じてやるよ、でも何か目的があるんだろ?オレをこんな所に連れてきた目的が…。」
「もー、やだなぁ、なんにもないってば。」
「白状しろよ、この後オレを何処に連れて行く気だ?」
あまりにもしらばっくれるので、ちょっとカマをかけてみた。

「………。」
リリアは俯いて黙ってしまった。
「別に隠さなくてもいいだろ?こうして来てやったんだし、それともなにか?オレを生贄にする的な何かなのか?」
「生贄って…そんな事はしないよ!…ただ…。」
「ただ?」
「………わかった。正直に言うね。そうだよね。ちゃんと説明しないとね。…。」
リリアの顔は、なんだか覚悟を決めた様な表情になった。

な…なんかヤバイのかな?
聞いちゃマズかったかな?
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