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第十二話

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「サトル、困った事が一つある。」
「ん?なんだ?」
家に帰るなりエリーが切り出した。

「実はさっきのコレ…。」
リビングのテーブルにチャラチャラッと高島の腕に付いていたブレスレットを包んでいたハンカチから出してきた。

「あれ?……壊れてない…。」
「そうなんだ、しかもほら…飾りも元の位置に戻ってるんだ…。」
「どう言う事?」
「わからない…。」
「うーん………。よし!困った時の神頼みだ!」
せっかく連絡手段があるんだ、こんな時くらい役に立って貰わなきゃな。
アプリをビデオ通話の状態にしてミヨを呼び出した。

『よぉ!サトルじゃないか、久しぶりだな。どした?』
「珍しく一発で出たな。」
『珍しくとはなんだ!私だって忙しいんだぞ。』
「……ふーん、そのお忙しい神様に見てもらいたいモノがあるんですが?その前に後ろに見えるマンガの山はなんだ?」
画面がグルっと向きを変え殺風景な背景になった。
『ば、馬鹿者!参考資料だ参考資料!お前たちの世界の事をもっと知ろうと思ってだな…。』
「へー凄いな。マンガで俺たちの住んでる世界の事がわかるとか、流石神様だな。」
『凄いだろ?だ、だから神なのだ、うん。』
「説得力なさ過ぎるから、さっさと認めろよ、ただマンガ読んでましたって。」
『く………。神にも息抜きというモノが必要なのだ!要件はなんだ!』
「あ、開き直りやがった…、そうだそんな事より…。」

ミヨにブレスレットを見せながら今まで経緯をなるべく事細かく話してみた。

「…という訳なんだ。」
『うーん…確かにそれは妙だな。』
「だろ?それと花火の日に感じた鋭い視線…。」
「あぁそれは多分見当がつく。」
「ホントか?エリー?」
「サトルは本当に鈍いんだな、おそらく澪ちゃんだろ。」
「え?どう言うコトだ?」
『…はぁ…本当に鈍いな、そのブレスレットをしていた澪という者がお前に対して恋愛感情を持っていたんだろう。』
「え?え?なんでそうなるんだよ?だって殆ど話したこともないし…。」
『まぁ、切っ掛けが何かは判らんが、その同じクラスになった時に何かあったんじゃないのか?何かから助けてやったとか?』

….全く身に覚えがない…。

『それで、そのブレスレットがその女のお前に向ける感情を増幅させて飛ばしてきていたんだろうという事くらい想像はつくぞ。』
「結局澪ちゃんは諦めたみたいだけどな。」
「そう言えば、別れ際何か話してたな。」
「あ…あぁ…サトルをよろしくと頼まれた…。」
「え、えーっと…。」
『コホンッ。…私の前でイチャつくな。』
「い…イチャついてなんかない!それより、なんで壊れたブレスレットが元通りになったのかって問題だ。」
『あぁそうだったな。おそらくそのブレスレットには時間操作系の魔法が組み込まれているか、それ自体が自己修復機能を持っていてその能力を発動させたかだろう。』

なんか難しいこと言い始めたな。
ただの魔道具じゃないってことか?

「時間操作っていうとタイムトラベル的なヤツか?」
『そんな恐ろしいモノではない。それは…。』
「そうか…時間操作なら納得いく…あ、そこは私が説明しよう。時間操作魔法って言うのは限定的に小さなモノ…大きくても人が抱えられる程度の無機物に対して、万が一の損傷が生じた時のみ1回か2回程度壊れる前の状態に戻すって言う魔法だ。」
「便利だな。」
「ただ、修復するのにも条件があって、まぁ多くはモノを手に入れたタイミングで魔法を掛けておいて、壊れたらその時間の状態に巻き戻すって仕組みなんだけど、それなりの魔力を与えないと修復しないんだ。」
「そうか、だから魔力が無い高島がキズを付けたりしても元には戻らなかったってコトか。」
『まぁ、そんなトコだろうな。まぁもう一つの可能性である自己修復機能なんてモノは使用する金属なんかが希少過ぎて滅多に出回らないしな。そっちの世界でも聞いたこと無いだろう?』
「確かにな…エリーの居た世界にはあったのか?」
「いや、私も聞いたことはない。」
『じゃ時間操作魔法で決まりだな。エリーの手に渡ったコトで魔力を得て元の形に戻ったと言う訳だ。』
そうか、壊れたブレスレットをハンカチで包んでエリーが持っていたから修復されたってコトか。

「うーん…でもなぁ、そもそもなんでこんなものがこっちにあったんだ?しかもフリマで売られてたって聞いたぞ。」
『アレだろ?何時もの歪み。』
「何時ものって…なんか都合悪なると全部時空の歪みってコトにしてないか?」
『他に説明できる物があるなら言ってみろ。』
「…すいません、なんでもないです。」
なんで逆ギレするんだよ…(泣)

『とにかくそれに危険性は無いんだろ?』
「多分大丈夫だと思います。」
『エリーが大丈夫って言うなら大丈夫なんだろ。別に処分しなくても良いと思うぞ。』
「いやいや、また一般人の手に渡って外れなくなっても困るし…。」
「そうだ、もう一度壊してみると言うのはどうだ?」
「ん?そうか!時間操作魔法が掛かってるとしたら修復されるのは1回か2回って言ってたもんな。一度修復されてるから次は修復されないかもってコトだよな。」
『じゃこの件は解決だな。…そう言えば、あの男はどうしてる?』
「あの男?……あぁユウキのコトか?」
『そうだ。』
「就職先も決まったし部屋も借りて一人暮らしを始めたところだ。」
『そうか、ヤツにもお前達のミッションの手伝いをしてもらうつもりだから、いつでも連絡を取れるようにしておきたいと思ったんだが…。』
「まさかこのアプリを入れるのか?」
『いや、それはお前がココに持ち込んだから細工できたんだ。ヤツはそもそも私と直接会ったこともないしな。』
「そっかぉ…でも何かあったらメッセージアプリとか電話で呼び出しちまえば問題無いんじゃないのか?」
『うーん、個別にも仕事を頼もうと思ってたんだが…仕方ないか。また何か策を考えよう。』
」….策って…。」
なんかまた良からぬコトが起こりそうな予感しかしない…。

『そう言えば、ヤツは多少魔法が使えるようだな。』
「あっそーだった。それをレベルアップされる為にエリーに修行つけてもらおうって話ししてたんだ。」
『良いんじゃないか?エリー鍛えてやってくれ。』
「わかりました。任せてください。」
『じゃまた近いうちにクエストを用意しておく。楽しみに待っておれ!』
「クエストって…ますますゲームみたいになってきてるな……ってかマンガの読み過ぎだ!」
『ハハハハハ。忙しいから切るぞ!またな!』

ブチッ

忙しいってマンガ読むのが忙しいだけだろ…。

「エリー、魔法の修行ってどこでやるんだ?」
「前に杖の材料を取りに行った林じゃダメかな?」
「あぁあそこか…あそこだったら民家からも離れてるし、誰かが入ってきて巻き込む心配も無いかもな。」

後でユウキにも伝えとくか。
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