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第五話

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エリーの『伏せろ!』と言う声が聞こえた次の瞬間、『無限の光の矢!我に代わりて敵を討ち滅ぼせ!ライト・インフィ・アロー!』気合の入ったエリーの声が呪文を発動させた。

いくつもの光の矢がエリーの前方に四散するのが横目に見えた、その直後辺りに凄まじい閃光が走り同時に轟音が鳴り響いた。

なんだ?
何が起こった?

起き上がろうとした瞬間、ボトボトと何かが落ちる音が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げ辺りを見渡して見ると、いくつもの焼け焦げたフィンラットの亡骸が転がっていた。

「サトル!大丈夫か?」
「あ…あぁ…多分…。」

ガスッ!

蒼ネエが逃げ延びたフィンラットを叩き伏せた。
「こっちも片付いたよ!」
「じゃ後は奥に控えるクイーンとその取り巻きだけだな。」
おそらく、ここにはソルジャータイプ以外にもウォリアータイプも居たはずだ。
だったら、後はガーディアンとクイーンを残すのみ。

「どうやって攻撃する?蒼ネエの木刀じゃあの通路での攻撃には不向きだろ?かといって俺の短剣でちまちまと攻撃するってのも…体力的に不安なんだけど…。」
「任せろ!この奥はさっきサトルが見せてくれた絵だと、一直線の行き止まりだ。逃げ道も無いって事だろ?なら話は早い、私の魔法で焼き払ってしまえばいいいじゃないか。」
心強いというか…エゲツないというか…。
まぁ、それが一番効率的だろう。

「分かった、じゃまた呪文の詠唱から始めるんだな。でも、中からまだ出てくる可能性もあるぞ。」
「出てきたら、ソイツらの退治は頼む。」
「オーケー!じゃとっとと終わらせちまおうぜ!」

今度はホールの出口から数歩離れた所に立ちエリーは呪文を唱え始めた。
今度は足元に赤い環が光り始めた。
さっきの魔法は雷撃系と言うよりレーザーに似た感じの魔法だったみたいだったけど、今度のは赤い…と言うことは炎系の魔法か?

通路の奥を魔導アプリで確認して見ると、残りのフィンラットは一番奥に固まっているみたいだ。

エリーは呪文の詠唱を終え通路に向かって杖を突き出した。
『大地に巣食う炎の精霊よ!我に応え我剣となりて全てを焼き尽くせ!エクスプローブ・ソード!』

決め台詞との前あたりから、差し出した杖の先に炎の玉が形成され、みるみるうちに巨大な剣へと変貌していく。
まるでCGで描いた様な炎の剣は、一気に通路の奥目掛けて飛び去った。

待てよ…コレって………。

ドウッ!

飛んでいった炎の剣は一番奥に居たクイーンとガーディアン諸共、その炎で焼き尽くしそのまま行き場を失って爆風と共に通路を逆流して戻ってきた。

ブワッ!!

凄まじい熱風と炎がホールを包む。
戻りきる直前、思わずエリーに飛びついて地面に倒れこんだ。
蒼ネエは俺の行動で察したのだろう、通路横の壁に背中をつけて部屋の角に向かって姿勢を低くしたまま素早く移動して伏せた。

戻ってきた炎と爆風はホールの床上50センチ辺りから天井に掛けて広がって、侵食していた植物を焼き払っていた。

気づくのが一瞬遅れていたら、俺たちも焼け焦げになっていたと思うとマジでゾッとする。

「エリー!!何考えてんだ!あんな熱量の攻撃をしたらどうなるかくらいわかるだろ!」
「いや…まさかコレほどとは…。」
「アホかお前は!あんな狭い空間にあんな炎を放ったら通路の中の酸素が無くなって、この広い空間の酸素目掛けて炎が逆流してくることくらい勉強しとけよな!お前も危なかったんだぞ!」
「あー怖かった。危うく私たちまで燃えちゃうとこだったね。」
「蒼葉ちゃん…ごめんなさい…。」
「いーのいーの助かったんだから。」
「良くねぇよ!」
「ほらエリーちゃんも反省してるじゃない。許してあげようよ。」
「………。」
「ったく…。」
とりあえず皆無事だったから良かったものの…ん?

フィンラットが残ってないか確認しようと魔導アプリを見てみると、焼き払った通路の奥の更に奥に微弱な反応がある事に気がついた。
弱っているのか、それとも魔力が弱いだけなのかはわからないが、確かに何かいる。
今の攻撃で吹き飛ばされたフィンラットのガーディアンかクイーンの可能性もあるな…。

「ちょっといいか?」
魔導アプリを見せながら言った。
「コレって何だと思う?」
「なんだろ?」
「フィンラットでは無いと思うぞ、確かに手応えは感じた。」
「だったらなんだよ、ソルジャータイプの生き残りって事もあるんじゃ無いか?」
「このポイントだけじゃ、わかんないね。」
「仕方ない、確認しにいくぞ。どのみち全部片付け無いとこのミッションは終わらないだろ?」
「そうね、この植物も全部どうにかしなきゃいけないしね。」

しかし、さっきまで植物の発する光で明るかったこの部屋も、今はほぼ暗闇。
焼けて燻る部分だけがほんのり赤く照らされているだけだった。

「エリー、なんか闇を照らす魔法とか無いのか?さっきの爆発でライトがどっかにいっちまった。」
「無いことは無いが…。ちょっと苦手なんだよな…。」
「苦手って…お前向こうでは凄い魔導士だったんだろ?」
「光の玉を作って浮遊させる魔法なんだけどな…その…コントロールが難しくて…あんまり得意じゃないんだ…。」
「得意じゃ無くても出来るんだろ?だったらやってくれよ、こう暗くちゃ何も分からないじゃないか。」
「………何が起こっても責任はとらないぞ………。」

ブツブツと言い訳じみた文句を言いながら呪文を唱えた。
杖の先から青白い光の玉…丁度ゲンコツ位の大きさの光の玉がいくつかフワフワと出てきた。

その玉は一つずつゆっくりと通路の奥に飛んでいき等間隔に浮かんでいた。

「絶対に触っちゃダメだぞ。」
「触るとどうなるんだ?」
「爆発する。」
「ば…爆発するの?」
「あぁ、通常この魔法で作られる光はこんなに大きなモノじゃないんだ。小指の先ほどの小さな玉が5つも有ればこの部屋くらい充分に照らし出すことが出来るんだ。でも私の場合、光量は変わらないが、持っている魔力が大きすぎてどんなに小さく作っても、あのくらいにしか出来ないんだ。だから普通のヤツだったら触れても小さく破裂するだけなんだけど、アレは破裂と言うより爆発と言った方がいい位の威力で壊れるんだ。」
「…分かった…触らない様に頑張る…。」

エリーの言い付け通り浮かんでいる光の玉に触らない様に奥へと進む。
でも光の玉は天井にも当たらない様に浮いてはいるけど、丁度俺のあたまの高さにある。
なので通路の端を進んで当たらない様に気をつけて歩いた。
しかしフワフワと浮いている事もあって俺たちが歩いて起こる風に影響されてか一定の場所に留まることなくユラユラと動いて回るからタチが悪い。

奥に進むにつれて辺りには植物と動物の焼け焦げた臭いが漂ってくる。
やはりフィンラットは全滅しているようだ。
一番奥にクイーンらしき亡骸も見つけた。

しかし、そこが一番奥ではない事をアプリは示していた。
更に奥に小部屋が存在するのが解る。

黒く焼け焦げてへばり付いている植物を短剣で剥ぎ取ると扉が現れた。

「よし…開けるぞ。」
2人は無言で頷きながら身構えている。

左手でゆっくりとノブを回して扉を押し開けてみた。

真っ暗な室内に薄っすらと通路に浮かぶ光の玉が発する光が差し込んだ。
その光を頼りに注意深く観察してみる。
すると左隅でゴソッと小さな音が聞こえた。

何か居る…。

「今…聞こえたよな?…何か居るぞ。」
確認の為聞いてみると無言でうなづいてきた。
2人にも聞こえたようだ。

フィンラットなのか?
「エリー、なんでもいい中の様子がわかるくらいの光が欲しい。」
その言葉に答えて、室内に再び光の玉を一つ浮かべた。
部屋の中央に浮かんだ光の玉は隈なく辺りを照らし出した。
この部屋もまた植物に侵食されていた。

先程音のした辺りに目をやると、元は事務机だったのか?脚のついた植物まみれの台が目に付いた。
その下に何か居る。
そう直感した俺は短剣を投げつけた。

飛んでいった短剣は台の脚に当たって落ちた。

「うわぁーーー!待った待った!」
突然、長髪で茶色のすすけたマントに身を包んだ男が飛び出してきた。
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