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プロローグ

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ムートリアから持ち帰ったドラゴンの卵を孵化させての帰路、エリーの居た世界と繋がったゲートが何者かに寄って解放されていた。

まぁ、その何者かが部室から入ってきてしまった、成瀬と保田だったって事はすぐに分かって連れ帰れた訳だけど、結果3日程向こうの世界を彷徨ってた2人になんて説明するべきか、それともミヨに頼んで記憶操作をしてもらうか結論を出せないまま朝を迎え、そのまま学校に行く羽目になった。

学校で2人に会っても、お互いに話を切り出せずにいた。

エリーも同じく、どうして良いのか判らないと言った感じだった。

やっぱり、記憶操作は後ろめたい気持ちになるのは間違いない。
そんな気持ちもあってミヨには連絡していなかった。

「エリー、あの2人にお前の事、話しても良いか?隠しておきたいなら…。」
「私もそれを考えてたんだ。ミヨ殿に頼んで記憶をいじってもらっても、今後の事を考えるといっそ話してしまった方が気持ちが楽だと思うんだ。」
「だよな、俺もそお思う。まぁどこまで話すかはお前に任せるよ。下手に俺が話すより良いだろ?」
「うん。じゃ昼休みに話そう。」


§


昼休み、2人を部室に呼び出した。
不安と好奇心の入り混じったなんとも言えない複雑な表情の2人を部室の入り口側の椅子に座らせ、俺とエリーはロッカーの前を陣取って椅子に座った。

「改めて確認するけど、このロッカーの中の事…覚えてる……よな?やっぱり。」
2人は無言で頷いた。
「だよなぁ、向こうで3日くらい過ごしてるもんなぁ。」
「サトル…その向こうっていったい…。」
成瀬が絞り出す様に言葉を発した。

「…えーっと…ココとは違う別の世界だな。」
「それは分かる。…だって星の位置も分からないし…見たことない植物とかあったし…。」
流石に観察力あるな…。

「そらに変な動物も見た…。」
成瀬の言葉に付け足す様に保田が言った。
コイツも中々抜け目なく観察してる…。

「椎葉は詳しいみたいだな。」
「え、あぁちょっとだけな。」
「違う世界ってどう言うことなんだ?」
成瀬がいつになく真剣な表情で詰め寄ってくる。

「えーっと…。」
「ちゃんと説明してくれるんだろ?だから呼び出したんだろ?」
「まぁ…そうなんだけど…。」
エリーを見るとやはりと言うか、思った通り困った表情を浮かべている。

「じゃまず約束してくれ、今から話すコト、それとお前達が見たモノ…知ってしまった事は他には口外しないでおいてほしい。」
「勿論だ。言った所で誰も信じちゃくんないだろ?むしろ頭がおかしいヤツだと思われるのがオチだ。」
成瀬が即答すると保田も横で頷いている。

「じゃぁまず、順を追って話をするな…。」
その言葉に二人は無言で頷いて、次の言葉を待っていた。

「コンビニに車が突っ込んで俺が病院に運ばれたのは知ってるよな?あの時、実は幽体離脱的な現象で魂があの世の入り口まで行ってたんだ。」
そこまで話すと『何を厨二みたいなこと言ってんだ?』って表情で二人はこちらを見てやがる。

「…お前ら信じてないだろ…。」
「まぁ…とりあえず続けろよ。」
保田に促されて渋々続ける事にした。

「…その、あの世の入り口って所で、そこが何処なのか分からなくてウロウロしてたら、そこの管理者をやってるミヨって神様に追い返されたんだ。」
「それでお前は生き返ったと…?」
判然としない顔で成瀬が俺の目を見据えて言った。

「うん。」
「で?」
早く続きを言えと言わんばかりの切り返しが飛んで来た。
    
「実はお前達が迷い込んだ世界はエリーが住んでた世界なんだ。」
  「それがさっきの話とどう結びつくんだよ?なにか?エリーちゃんは実は異世界からの来訪者ってか?」
成瀬は疑いの眼差しで俺とエリーを交互に見やった。

「そうだ。あそこは私の住んでた世界だ。私は向こうで死んだんだ。その後サトルと同じようにあの世の入り口にたどり着いて、彷徨っているうちにサトルの通った扉を抜けて、こっちの世界に来てしまったんだ。」
エリーの発言に二人は今までの疑いの眼差しから一変してキョトンとした表情に変わった。

「因みに、皆でキャンプに行った後、もう一度死んでしまったけどな。」
追い討ちをかけるようにエリーの口から『死んだ』発言が続く。

「いやいや、死んじゃったって…前と変わらず普通に生きてるじゃん?え?元気なゾンビってこと?」
エリーの発言を鵜呑みにしている訳ではないと思うけど、成瀬の疑問は勿論だ。
「私はゾンビなんかじゃない。ミヨが生き返らせたんだ。ちゃんと生きてる!」

そこからは、成瀬と保田のツッコミに一つずつ解答していって昼休みだけでは時間が足りる訳も無く、結局放課後再び部室に集まる事になった。
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