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夕方



「何不貞腐れてるの?」



森の湖のほとり、焚き火の近くでルルが俺の背中を布で拭きながら聞いてきた。



「不貞腐れてない。」



「そう?」



ルルがそう返事をした瞬間・・・



「・・・・っ・・・!!!」



俺の脇を思いっきりくすぐってきた。



「・・・まっ・・・やめ・・・っ!!」



ルルの両手から逃れようとするけれどルルは俺を逃がさない。
やっぱり俺とは比べ物にならない力で、ルルと訓練はしたことがないけれど、たまにやられるコレで力の差を実感する。



「・・・・・っ、わかっ・・・たから・・・っ!!」



「ねぇねぇ、どうしたの~?」



「はなす・・・っはなすから・・・っ!!」



「なになに?どうしたの~?」



「やめ・・・っ、いったん、やめ・・・っ」



必死に抵抗している俺にルルは大笑いしながら両手で追い込んでくる。



大笑いしながら追い込み、追い込み、追い込んできて・・・



「負けました・・・っ!!
俺の負けです・・・!!!」



必死に叫ぶと、仰向けになっている俺の上に跨がりながらルルが笑った。



「私の勝ち!!
それで、どうしたの?」



ルルから聞かれ、ルルから目を逸らしながら答えた。



「今俺がルルに求婚しても、良くない返事なんだろうなと思って・・・。」



俺の言葉にルルが少しだけ驚いた顔をした。
でも、少しだけ。
照れたよう笑い、上半身が裸の俺の上に跨がっているルル。



「ソソは私のことが好きだからね。」



「うん、好き。」



「ありがとう。」



たまになる流れ、今日もこの“ありがとう”で終わってしまう。
それに今日も苦しくなりながら、上半身を起こしてルルと向き合う。



それから頭の後ろで1つに束ねられているルルの真っ白な長い髪の毛、それにゆっくりと手を伸ばし1束右手でソッと握った。



不思議そうな顔をしているルルを見詰めながら、その髪の毛に俺は口付けをする。



この前の夜に他の男達と見た、きょうだいの女と裸でスキンシップをしていた男がしていた仕草を真似た。



不思議そうな顔で俺を見詰めているルルに聞く。



「最近何でルルは裸にならないの?
少し前まで一緒に水浴びしてたのに。
俺に裸を見られるのは嫌になった?
俺が好きだって言うから・・・。」



「そういうわけじゃないけど、チチから“ソソも10歳になったから”ってこの前言われて。
私も15歳だし。」



「15だから何?
ルルは来年16になって結婚だって出来るようになるから?
弟の俺ではない男に見せることになるから、俺には見せなくなったの?」



「私よりも強い男がいないから、私はまだ結婚しないよ。」



「でも大人の女が男より強くなることはほぼないって聞いた。
今はその小さくて軽い身体を利用した戦い方でルルは強いけど、もっと大人になって太い筋肉がついた時に俊敏さもなくなる。
でも力の強さでは男に勝てなくて、ルルはきっと2番目に強い人間じゃなくなる。」



「もっと大人になったらそうなるかもね。
でも今はチチの次に強い人間は私。
ソソが大人の男になる頃くらいまでは頑張るよ。」



その言葉を聞き、ルルの真っ白な髪の毛の束を少しだけ強く握りながら聞いた。



「それじゃあ、俺が大人になるまでルルは誰の求婚も受けないで、俺が16になるのを待っててくれる?」
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