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ステル殿下の言葉にジルゴバートは私からゆっくりと眼球だけを離し、その眼球をステル殿下の方に動かした。



「俺の・・・妻・・・?
もしかして・・・もしかして・・・聖女・・・?」



「そうだ。」



ステル殿下の返事を聞き、ジルゴバートがまた眼球を動かして私のことを見てきた。
ステル殿下から握られている右手の指は私の顔の前でジタバタと動いていて、ステル殿下が手を離したらすぐにでも触ってくるのが分かる。



「美しい・・・っ!!
こんなに美しく光り輝いている女は見たことがない・・・!!
ミランダとも比べ物にならないほど光り輝いている・・・!!」



ジルゴバートがそう言って、上を見上げた。
何を見ているのか確認する為にチラッと上を見上げると、王座の間の天井窓が。
王の座の天井には大きな天井窓があり、そこからは太陽が丁度見えていた。



「まるで太陽・・・太陽の化身だ・・・!!!
信じられない・・・!!!
聖女というのはここまで光り輝くものだったのか・・・!!!」



大きな声で叫び、また私のことを見てきた。
かと思ったら、ステル殿下が間に立ち私の身体をその大きな身体で隠した。



「黒髪持ちのお前には勿体ない女だった!!
俺だって王族・・・!!
俺は国王陛下なんだ・・・!!!
俺の王国を安泰にさせる聖女なのだから、俺の妻にする・・・!!!」



狂ったような声で狂ったような発言をしているジルゴバート。



「カンザル教会が大勢立ち会う中、俺と妻は結婚式を挙げた。
それを覆す為にはカンザル教会の刻印がいる。」



「・・・呼んでこい!!!
王宮に常駐しているカンザル教会の司祭を今すぐ呼んでこい!!」



ジルゴバートの言葉で何人かの男が動き出そうとした。



そしたら・・・



「お言葉ですが、陛下。」



私のすぐ後ろからミランダの落ち着いた声が聞こえてきた。



そしてステル殿下の隣に立ち、ステル殿下と一緒に私を隠すような形で立った。



「ミランダか・・・。
すまない、ミランダ。
ここまでの聖女が現れたからには俺が結婚をしなければ。
只でさえ俺の王国には黒髪持ちの皇子がいる。
こいつが厄災ばかり呼んでくるから俺の王国はいつまで経っても潤わない。」



「陛下、それよりも2つお忘れですよ?」



「2つ?」



「1つ目は、この2人の結婚式ではカンザル教会の教皇、クレバトル教皇が立ち会い、クレバトル教皇の刻印が押されました。
クレバトル教皇の刻印が1番重い刻印。
この王宮に常駐している司祭ではその刻印を覆すことは出来かねます。」



優秀な侍女長であるミランダがそう言うと、私に背中を向けたステル殿下の左手がゆっくりと私の方に伸びてきて・・・



私の右手を強く握ってきた。



「クレバトル教皇の刻印を覆すことが出来るのは、同じくクレバトル教皇の刻印だけ。」



「そうなのか・・・?
そんな話は聞いたことがない。」



「2人の結婚式が終わった後にクレバトル教皇が私に教えてくださいました。」



「そうか・・・。」



「そしてもう1つお忘れですよ、陛下。」



「もう1つ?」



「マルチネス王妃にご相談されましたか?」



ミランダの言葉に王座の間は静まり返った。



でも、しばらくしてから女の不気味な笑い声が響いてきた。



「クラスト陛下に続き貴方まで他の女と結婚するつもり?」
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