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「そうなんだ・・・。凄いね、ソソは。
まだ13歳だった頃からそんな感じだったんだ。
とんでもない男に育っちゃったね。」



そう言って大きく笑った時、見えた。



3つの小屋の向こう側に赤いヒヒンソウの花が咲いているのが。



そのヒヒンソウの花を眺めながら無意識に立ち上がり、そこまでゆっくりと歩いた。



そしてヒヒンソウの花を1本手に取る。



そこには小さな小さな赤い花が咲いている。



どんな場所でも強く咲くことが出来る花、ヒヒンソウの花を見詰めながら呟いた。



「やっぱり、私のことを迎えに来るつもりはなかったか・・・。」



“月のモノ”が来なくなっていた私のことを、5歳も年上の私のことを、この王宮にいる女のように軟弱な見た目ではない私のことを、ソソはとっくに忘れていた。



インソルドを経つ最後の日に求婚してくれていたのに・・・。
次の人生で結婚しようと、そう求婚してくれていたのに・・・。
“死の森”に咲いているヒヒンソウの花を渡して、私に求婚してくれていたのに・・・。



あの時に受け取ることが出来なかったヒヒンソウの花。
その花をずっと大切に持ち続けていたのは私だけだった。



聖女になってしまい、“第2騎士団の団長で第3皇太子であるステル殿下と結婚をする”。
そのことは分かっていた。



だから、この人生では受け取ることが出来なかったのソソからの求婚を受け取ってきた。



この人生で他の男と結婚をした私のことをソソはきっと許してくれないと思ったから。
物凄く嫉妬深い男だったから、他の男と結婚をした私のことを次の人生で迎えに来てくれないと思っていた。



だから・・・



だから、受け取るだけでもと思い・・・



記憶の中のソソと・・・



10歳の頃のソソと・・・



2人だけで結婚式を挙げてきた・・・。



記憶の中だけでも二度と会わないつもりで・・・



インソルドで生きたルルとして、ソソからの求婚を受け取ってきた・・・。



「“私”じゃなくて、他にいたでしょ・・・。
次の人生で必ず求婚をするって、“ルル”にそう約束したでしょ・・・。」



13歳の頃にはとっくに別の女がいた“ソソ”に、小さな声で呟いた。



ヒヒンソウの小さな花の周りには次から次へと私の目から涙が落ちてきて。
ぼやけた視界の中、私の涙まで真っ赤に見えた。



まるで血のような赤に、見えた・・・。
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