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2メートルを超す猿とゴリラの間のような姿、頭部にだけ赤い毛が生えていて身体は鱗とも言えないザラザラとしていそうな固そうな皮膚で覆われている。



鋭く尖った牙を剥き出しながら大量の涎を垂らし、瞳孔しかないような目を見開きながら俺の方を見ているように見える。



だが、襲ってくることはない。
首と手首は鎖で繋がれているが、それがなくても襲ってくることはない。



“俺の魔獣”が現れた瞬間、重鎮達は慌てながら席を立ち部屋の隅へと逃げて行ったのが分かった。



「“俺の魔獣”は恐ろしいだろ!」



気持ち良くなりながら重鎮達の方を見ると・・・



“俺の重鎮”達は部屋の隅へと一目散に逃げているにも関わず、古くからいるヨボヨボの数人の重鎮は避難させるようにナンフリークの腕を取り部屋の隅へと急いでいて、更にもう数人はステルの前に立っていた。



そんなヨボヨボの重鎮達の姿を見て俺は苛立ちが沸騰してきた。



そして声を荒立てようと口を大きく開いた瞬間・・・



「黙れ。」



あまりにも重い声・・・



ビリッと痺れる空気をこの身体に感じた。



それに驚きながら声の主を探すと、大きな剣の柄を手に握ったステルが重鎮達の肩を叩き、ゆっくりと歩いてきてから“俺の魔獣”に剣を構えてきた。



「大きな音は出すな。
耳と鼻は良いがユンスは目がほとんど見えていない。
こちらが音を出さない限りは気付かれない。」



「ユンスだと・・・?
この魔獣には名前があるのか?」



「第1騎士団ではユンスと呼ばれている。
普段“死の森”から現れるのはだいたいユンスだ。
目はほとんど見えていないが知能は結構高い。
単独行動ではなく数体で行動している。
コレをどうした?
何故こんな所にユンスがいる?」



ステルがこんな口調で俺に話し掛けてくる。
それにも苛立ちが沸騰してきたが、騎士としての仕事をしているのだとも分かるので落ち着きながらも自慢した。



「1年前、俺の私設警護団に生きたまま捕獲させた。」



俺の言葉にステルが視線だけで俺のことをチラッと見てきて、またユンスの方に目を向けた。



「魔獣を生きたまま捕獲など不可能だ。
ユンスの両手の強さは他の魔獣の中でも上位だ。
普通だったらこんな鎖ではどうにもならない。」



「そうだ、だからこれは普通の魔獣ではない。
“俺の魔獣”、俺が従えている魔獣だ。」



大きな声で笑うと、ステルが剣を持つ両手に力を込めた。
でも、そんなことをしても何の意味もない。



「何故襲ってこない・・・?
・・・そうか、アレを使っているのか。
氷で覆われた国で作られているという魔獣用の“迷香薬”を。」



ステルの口からそれを聞き・・・



それを聞いて・・・



俺は苛立ちが沸騰した。



「何故それを知っている!?
この国では俺とこの側近しか知らないはずだ!!」



「第1騎士団を始め、第2騎士団も近衛騎士団も下の階級の兵達もずっと前から共有している情報だ。
この目で見たのは初めてだが、状態を見るに恐らく“迷香薬”かと。
氷で覆われた国では遥か昔から魔術使いが誕生し、魔獣の解明の為に実験も行われていると聞いている。」
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