38 / 168
2
2-21
しおりを挟む
エリナエルがクラスト陛下に抱き締められながら、クラスト陛下の身体から身を乗り出して俺達に訴えてきた。
最高に気持ち良いその展開には心の中で大笑いをする。
俺よりも完璧な兄が黒髪の子どもを生ませた。
俺の子ども、ハフリークは俺に似た灰色の髪の毛。
今マルチネス妃が身籠っている子どもはどうなるかは分からないが、黒髪ではないことは確かだろう。
計算するに、ミランダのことを思い浮かべながら達した日の子どもだということになる。
マルチネス妃が今身籠っているのは俺とミランダとの子どもだ。
きっと、そうだ・・・。
そう思いながらエリナエルを心配そうに見ている心優しいミランダ。
今日も美しく光り輝いている。
「陛下・・・信じてください、本当に陛下の子どもです・・・っ」
「分かっている。
それは俺が1番良く分かっているから。
ただ、黒い髪の毛で生まれてしまったことは王族にとっては話し合うべきことで。
終わったらすぐに会いに行くから部屋で待っていてくれ。」
「終わったらって何をですか・・・!?
天に返すことをですか・・・!?
どこですか!?
私と陛下の赤ちゃんはどこにいるんですか!?」
エリナエルがクラスト陛下にすがり付きながら、でもその身体がズルズルと下に落ちていく。
クラスト陛下が抱き締めているはずなのに下に。
「天に返さないで・・・っ。
絶対にそんなことをしないで・・・っ。
あの子は王になる・・・きっと、王になる・・・。
私には見えた・・・あの子を産んだ瞬間・・・あの子が王になった所が見えた・・・。
金にも銀にも見える髪の色をした、華奢で真っ赤なドレスを着た女の子と2人で並び、王座に座るでもなく立っている姿が見えた・・・。」
そんなイカれた言葉まで飛び出てきて思わず声が漏れそうになった。
「それはこの国を滅ぼした後なんじゃないですか!?」
俺が贔屓にしている貴族が大笑いをしながらそう言うと、他の貴族達も大笑いし始めた。
「黙れ。」
この部屋の空気がビリっと痺れるような声が響き、それがクラスト陛下が発した声なのだと気付く。
戦や討伐にも自ら出向いていたくらい剣の腕があるクラスト陛下。
俺も一緒に行ったことがあるがその時でもこんな声は聞いたことがなかった。
「エリナエルを部屋に連れていく。
マドニス、俺が戻るまで頼んだぞ。」
その目だけでここにいる全員を殺すことが出来そうなくらい、それくらい鋭い目付きのクラスト陛下がマドニス宰相にこの後のことを頼んだ。
俺にではなく、マドニス宰相に頼んだ。
それが酷く苛立たせた。
俺を苛立たせた。
俺の方が有能だったのに。
男の“性”としては、俺の方が有能だったのに。
苛立ちが沸騰してくる中、見えた。
俺が贔屓にしている貴族達がニヤニヤと小さく笑いながら俺に目配せしている顔が。
訴え掛けてきている。
この貴族達にいつも言われていた言葉を、訴えられていた言葉が浮かんできた。
“ジルゴバート殿下が国王陛下だったら良かったのに”
何度も何度も俺を気持ち良くさせていた言葉が今、浮かんできた・・・。
そしたら、その瞬間・・・
「ジルゴバート陛下!」
贔屓にしていた1人の貴族が俺にそう言った・・・。
「あ、申し訳ありません!
心の声が出てしまって!!
でも、クラスト陛下が黒髪の子どもを迎えたなんて民が知ったら、国は今後どうなりますかね?
他国も今が好機だと本格的に攻め込んでくるかもしれませんよ、牽制の戦ではなく。」
古くからいる貴族が宥める声なんて聞こえないくらい、この場には俺が贔屓にしている貴族達がいた。
こんなにもいた。
俺に“迷言”を残したあの男は間違えていたらしい。
だって俺はこんなにも求められている。
こんなにも“国王陛下”として求められている。
俺にも器があった。
王になる器がちゃんとあった。
だって気持ち良い・・・。
こんなにも気持ち良い・・・。
人の上に立つということは・・・
国の上に立つということは・・・
こんなにも・・・
こんなにも気持ち良い・・・。
最高に気持ち良いその展開には心の中で大笑いをする。
俺よりも完璧な兄が黒髪の子どもを生ませた。
俺の子ども、ハフリークは俺に似た灰色の髪の毛。
今マルチネス妃が身籠っている子どもはどうなるかは分からないが、黒髪ではないことは確かだろう。
計算するに、ミランダのことを思い浮かべながら達した日の子どもだということになる。
マルチネス妃が今身籠っているのは俺とミランダとの子どもだ。
きっと、そうだ・・・。
そう思いながらエリナエルを心配そうに見ている心優しいミランダ。
今日も美しく光り輝いている。
「陛下・・・信じてください、本当に陛下の子どもです・・・っ」
「分かっている。
それは俺が1番良く分かっているから。
ただ、黒い髪の毛で生まれてしまったことは王族にとっては話し合うべきことで。
終わったらすぐに会いに行くから部屋で待っていてくれ。」
「終わったらって何をですか・・・!?
天に返すことをですか・・・!?
どこですか!?
私と陛下の赤ちゃんはどこにいるんですか!?」
エリナエルがクラスト陛下にすがり付きながら、でもその身体がズルズルと下に落ちていく。
クラスト陛下が抱き締めているはずなのに下に。
「天に返さないで・・・っ。
絶対にそんなことをしないで・・・っ。
あの子は王になる・・・きっと、王になる・・・。
私には見えた・・・あの子を産んだ瞬間・・・あの子が王になった所が見えた・・・。
金にも銀にも見える髪の色をした、華奢で真っ赤なドレスを着た女の子と2人で並び、王座に座るでもなく立っている姿が見えた・・・。」
そんなイカれた言葉まで飛び出てきて思わず声が漏れそうになった。
「それはこの国を滅ぼした後なんじゃないですか!?」
俺が贔屓にしている貴族が大笑いをしながらそう言うと、他の貴族達も大笑いし始めた。
「黙れ。」
この部屋の空気がビリっと痺れるような声が響き、それがクラスト陛下が発した声なのだと気付く。
戦や討伐にも自ら出向いていたくらい剣の腕があるクラスト陛下。
俺も一緒に行ったことがあるがその時でもこんな声は聞いたことがなかった。
「エリナエルを部屋に連れていく。
マドニス、俺が戻るまで頼んだぞ。」
その目だけでここにいる全員を殺すことが出来そうなくらい、それくらい鋭い目付きのクラスト陛下がマドニス宰相にこの後のことを頼んだ。
俺にではなく、マドニス宰相に頼んだ。
それが酷く苛立たせた。
俺を苛立たせた。
俺の方が有能だったのに。
男の“性”としては、俺の方が有能だったのに。
苛立ちが沸騰してくる中、見えた。
俺が贔屓にしている貴族達がニヤニヤと小さく笑いながら俺に目配せしている顔が。
訴え掛けてきている。
この貴族達にいつも言われていた言葉を、訴えられていた言葉が浮かんできた。
“ジルゴバート殿下が国王陛下だったら良かったのに”
何度も何度も俺を気持ち良くさせていた言葉が今、浮かんできた・・・。
そしたら、その瞬間・・・
「ジルゴバート陛下!」
贔屓にしていた1人の貴族が俺にそう言った・・・。
「あ、申し訳ありません!
心の声が出てしまって!!
でも、クラスト陛下が黒髪の子どもを迎えたなんて民が知ったら、国は今後どうなりますかね?
他国も今が好機だと本格的に攻め込んでくるかもしれませんよ、牽制の戦ではなく。」
古くからいる貴族が宥める声なんて聞こえないくらい、この場には俺が贔屓にしている貴族達がいた。
こんなにもいた。
俺に“迷言”を残したあの男は間違えていたらしい。
だって俺はこんなにも求められている。
こんなにも“国王陛下”として求められている。
俺にも器があった。
王になる器がちゃんとあった。
だって気持ち良い・・・。
こんなにも気持ち良い・・・。
人の上に立つということは・・・
国の上に立つということは・・・
こんなにも・・・
こんなにも気持ち良い・・・。
7
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
ようこそ幼い嫁候補たち④
龍之介21時
ファンタジー
新たに始まる物語は…20年と少し前に前魔王が死んだ時の大戦が起きた時から、唯一戦火が途切れていない地方の争いに巻き込まれるアルバート家族
新たに地球から転移してきた少女
カルーアの母親を知る者との遭遇
古代人が残した要塞兵器
アリスとヨシュアの仲に答えが…
異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)
朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。
「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」
生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。
十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。
そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。
魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。
※『小説家になろう』でも掲載しています。
タイムリーパーの僕がスキル:メタバーシングで女子とシマクル話。
星空指数
恋愛
タイムリープした主人公が女の子達と出会い、彼女達から聞いた露出や混浴などの体験をメタバーシングで仮想現実化し、そのエロ・シチュの中で彼女達とHをしまくる短編集です。【エロです】
【R18G】姦淫病棟(パンドラシリーズ掲載作品)
皐月うしこ
恋愛
人類存続計画として母体と選ばれたのが運の尽き。強制的に快楽を仕込まれ、永遠に冷めない凌辱の世界に堕とされる。そんなお話です。この作品は過激なため、クッションページを挟んでいます。
「可哀想な女の子ほど可愛い」という歪んだ思考の元、世の中の善悪を何も考えずに、衝動のまま書き上げた狂った物語たちの巣窟パンドラシリーズ掲載作品。
》》パンドラシリーズ詳細は、こちら
https://fancyfield.net/main/pandora/
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
人でなしと最強少女のサディスティックなハーレム生活
たかまちゆう
ファンタジー
銀髪の美女スピーシャは、父親を亡くし、肉親は妹のミーシャだけになった。
ミーシャは、父を亡くして以来ずっと沈んだ様子であり、スピーシャは心を痛めていた。
そんなある日、1人の男が姉妹に告げた。
ミーシャには、良くないものが取り憑いている、と。
不安に駆られたスピーシャは、呼び出しに応じて、ミーシャを連れて聖堂へと向かった。
そこで、スピーシャは恐るべき事実を知る。
実は、ミーシャの魂は、魔物によって食われようとしていたのだ。
これは、大切な妹を取り戻すために、この世の地獄へと身を堕とした女性の物語である。
みられたいふたり〜変態美少女痴女大生2人の破滅への危険な全裸露出〜
冷夏レイ
恋愛
美少女2人。哀香は黒髪ロング、清楚系、巨乳。悠莉は金髪ショート、勝気、スレンダー。2人は正反対だけど仲のいい普通の女子大生のはずだった。きっかけは無理やり参加させられたヌードモデル。大勢の男達に全裸を晒すという羞恥と恥辱にまみれた時間を耐え、手を繋いで歩く無言の帰り道。恥ずかしくてたまらなかった2人は誓い合う。
──もっと見られたい。
壊れてはいけないものがぐにゃりと歪んだ。
いろんなシチュエーションで見られたり、見せたりする女の子2人の危険な活動記録。たとえどこまで堕ちようとも1人じゃないから怖くない。
***
R18。エロ注意です。挿絵がほぼ全編にあります。
すこしでもえっちだと思っていただけましたら、お気に入りや感想などよろしくお願いいたします!
「ノクターンノベルズ」にも掲載しています。
看守におもらし調教されるあたし…漏らしてイク女になりたくないっ!
歌留多レイラ
大衆娯楽
尿瓶におしっこするはずが、盛大にぶち撒けてしまい…。
治安の悪化から民間刑務所が設立された本国。
主人公の甘楽沙羅(かんら さら)は暴力事件がきっかけで逮捕され、刑務所で更生プログラムを受けることになる。
陰湿な看守による調教。
囚人同士の騙し合い。
なぜか優しくしてくる看守のトップ。
沙羅は閉ざされた民間刑務所から出られるのか?
この物語はフィクションです。
R18要素を含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる