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「そっちの路線に行くことにした?
もう知名度もあるし、男の娘からの今の姿のギャップも最高。
いつからにする?」



社長室の椅子に座り、神崎社長が満足そうな顔で俺を見る。



「あ、ごめん社長。
俺、女の子の格好は止めるつもりない。」



「じゃあ、どうしてその格好したのよー・・・」



神崎社長が珍しく頭を抱えた。



「筋トレしすぎてこんなになっちゃった報告と・・・。
あとは今日、これから夏生を大学に迎えに行くから、そのために。
プライベートでも男の娘っていう条件を破るから、神崎社長に直談判に来た。」



「そう・・・」



神崎社長は、そう言ってしばらく黙った後、珍しく笑い出した。



「本当、夏生さんに会ってみたい。
こんなに扱いにくい子、一体どうやって手懐けてるのかしら。」



「手懐けてるっていうか、俺の全て、夏生で出来たからね。
夏生がいなかったら、今の俺は存在してないから。」



そう言い切った俺に、神崎社長は珍しく楽しそうに笑い続ける。



「いいんじゃない?
その格好で夏生さんを迎えに行きなさい?
それで、夏生さんに“男の格好が良い”って言ってもらってきて?」



「夏生はそんなこと言わない・・・。」



「でも、今の宗の格好を見たら、きっと誰でもそう思う。
もし、夏生さんがそう言ったら、宗は男の格好になる?」




そんなあり得ないことを聞かれ、思考が停止する・・・




「夏生が、男の格好がいいって・・・」



「そう、そう言われたら?」



今度は、俺が頭を抱える番。



「・・・やっぱり、考えられない。
夏生がそんなこと言うところ・・・。」



「本当、会ってみたいわ、夏生さん。」



俺は立ち上がり、時計を見る。



「でも、そろそろ、俺は夏生の傍にはいられなくなると思う。」



神崎社長が驚いた顔になる。
今日の社長は珍しく色々な表情をする。



「夏生、きっとすぐに“彼氏”が出来る。
そしたら、俺は流石に傍にはいちゃいけないから。」



「宗は、それでいいの?」



「嫌だよ。だから、今から迎えに行く。
少しでも、1日でも長く、夏生と一緒にいるために。」



神崎社長は面白そうに笑った後、不敵な笑顔で俺を見る。



「ここまでするなら、ちゃんと最後まで掴まえときなさい。」



「それが出来たら、こんなに何年も苦労してないって!」




俺は苦笑いしながら社長室を飛び出し、夏生を迎えに走り出す・・・。
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