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「夏生を・・・可愛い、女の子に。」




自分の大きな勘違いに気付く。
“全く”意味なんてなかった、少しも“特別”なんかではなかった、俺の存在。




「やっぱり・・・無理だよね?
いくらシューが男子だとしても、私と元の作りが違いすぎるし・・・。
凄い恥ずかしいこと言っちゃった。」




呆然としながら、勢いよく立ち上がった夏生を見る。




「変なこと頼んでごめんね!
忘れて!!!」




バッグなどを持ち、帰ろうとする夏生。





その後ろ姿を見て、このまま会えなくなるような気がした。
俺と会う意味も、特別な何かも、俺にはもう、何もないのだから・・・。





男でも女でもないような、こんな俺が、唯一出来ること・・・






「夏生!!!!」





大きな声で、夏生を呼び止める。





夏生がビクリと身体を震わせ、立ち止まった。





「夏生・・・本当に、なりたいの?」





震える、小さな声で夏生に聞く。





「うん・・・」




夏生も、小さな声で返事をした。





「分かった・・・。」





夏生が勢いよく振り返る。





いつだって強くて、格好よくて、でも俺の前ではどうしようもなく可愛い。






「夏生は今でも可愛いけど・・・。
でも、夏生が考える“可愛い女の子になりたい”と思うなら、俺は応援するよ。」





夏生の前まで歩き、目の前に立つ。





「俺は・・・応援するから・・・。」






昔、俺のことを夏生が応援してくれたように、俺も夏生を応援する。
それが、男でも女でもないような、こんな俺が出来る、唯一のことだから。





“彼氏”にもなれなくて、“お嫁さん”にもなれなかった俺が、夏生の傍にいられるたった1つの理由・・・。






何度も何度も抱き締めた、夏生の身体を優しく抱き締める。





バイバイ、夏生・・・





俺の、大好きな人・・・。





いつか現れる、夏生の隣に並ぶ“彼氏”のため、俺は夏生を“可愛い女の子”にする・・・。
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