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「強く強く、鳴け。
お前の鳴き声はとんでもなく強い。
だからきっとみんなの胸にも届く。」



クレアンにそんなことを言われ、私は泣きながら叫ぶ。



「届いたところで変えられない・・・!!
私達は家畜以下の“鼠”・・・!!
奴隷制度が残っているのはこのリングドウル王国という国だけといっても、私達奴隷は名前も持たずこの世界に存在していないとされている人間!!
他国へ渡ることも許されないんでしょ!?」



「そうだな、他国へ入国する時には出国許可証を見せることが基本的には必要だからな。」



この数日でクレアンから知った世界はとんでもなく広いもので。
この世界は“鼠の地”と王宮だけはなかった。
やっぱり王宮の向こう側には世界が続いていた。



でも、その世界はあまりにも残酷なもので。



目の前にあるはずの広い世界へ私達“鼠”は足を踏み入れることは出来ない。



私達はこの世界から抜け出すことなど出来ない。



「鎧も剣も持たずに王宮となんて戦えない・・・!!
一緒に戦って欲しいとは言えない・・・!!」



この胸から込み上げてくる気持ちをクレアンに叫ぶと、クレアンは両手で自分の耳を抑えた。



でも、すぐにその両手を下ろして私のことを真っ直ぐと見詰めてくる。



「鎧や剣など重いだけだ。
そんな物よりもみんなで強く強く鳴けばいい。
この国はもう終わりだ、だからきっと届く。」



「あんな鎧や剣を身に付けている人間に近付けない・・・!!
鞭で打たれて死のうと私はみんなに言えない・・・!!
私を生かしてくれたみんなにそんなことは言えない・・・!!
生き延びて欲しい・・・!!
私はみんなに生き延びて欲しい・・・!!」



「“鼠”でいる限り長くは生きられない。
だからまずはお前が先に飛べ、姫。」



さっき、私を生んだ親からも“飛んで”と言われ、クレアンからも“飛べ”と言われた。



それには驚いていると、クレアンが炎の光りの円を纏いながら私に言う。



「男の奴隷は“アント”、女の奴隷は“アンナ”、その2つの区別で呼び合い番号しか付けられていないこの“鼠の地”で、唯一“姫”と呼ばれているお前が先に飛べ。
王宮の人間達の会話を聞いたお前の親が名付けてくれた名前だろ?
“姫”は王の娘、皇子と結婚をした女、身分の高い女、また女を誉め称える時なんかに使われる。
お前はそんな名前を親から付けられ、そしてこの“鼠の地”で・・・“鼠の王国”の民からそう呼ばれているのだろ?」
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