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夕方




羽鳥さんが電話対応中だったこともあり、先に佐伯さんと2人で先生が待つ部屋へと向かう為にエレベーターが来るのを待っていた。



“私って、めちゃくちゃ性格悪いんだよね。
早く諦めさせてあげる。”



朝に聞いた佐伯さんの言葉をまた思い出し、これから佐伯さんと一緒に先生が待つ部屋に入るのが憂鬱になってくる。



佐伯さんは一体何をするつもりなのか・・・。



そう思っていた時・・・



「おお、2人とも仲良くなったのか?
お揃いのワンピースなんて着て。」



私達の後ろに若松さんが来て、今そんな言葉を掛けてきた。



「不吉なことを言わないでくださいよ、誰も信じてくれませんけど佐伯さんって性格悪いですからね。
私はそういう子とは仲良く出来ません。」



私の返事に若松さんは爆笑している。



「分かる分かる、佐伯さんって性格悪そうな顔してるよな!!」



「え~!!?分かってくれますか!?
誰も信じてくれなくてずっと辛かったです~!!」



「佐伯ちゃんが必死になってそう言ってる姿も可愛いからな、みんな佐伯さんがどうとかじゃなくて佐伯ちゃんと話したいだけだろ。」



「めっちゃポジティブな解釈!!!
絶対にそんなことないので逆に辛い励まし!!!」



エレベーターの扉が開き3人で乗り込むと、若松さんが1階を押した。



「このエレベーターは上ですよ?」



「あ、マジか。
いいや、そのまま上行ってまた下に降りる。」



「これから営業ですか?」



「うん、営業。
佐伯ちゃん、ワンピース似合ってるじゃん。」



「うちのグループのアパレルメーカーの社員さんにそう言って貰えて嬉しいですけど・・・」



言葉を切ってから佐伯さんの方を指差した。



「同じワンピースを着た佐伯さんと並んでたら私なんてチンチクリンで・・・!!!」



私の嘆きに若松さんはまた爆笑していて、それから佐伯さんと私のことを交互に見てきた。



「佐伯ちゃんの方が可愛い!!!
やっぱりボタン1つ空けてる方が良いな!!
ネックレスしてみたら?」



「ネックレスか・・・今度してみます!!」



「これいる?」



エレベーターの扉が開いた時に若松さんがネックレスを2本見せてきた。
それを見せながら若松さんもこの階で降りてきて、そして・・・



「佐伯ちゃんにはこっちだな。
こっちの方が佐伯ちゃんっぽくて可愛い。」



「・・・わっ、え・・・いいんですか?」



若松さんが私の背中に立ち、後ろから両手を回し、首にネックレスをつようとしてくれている。



「これから行く営業で必要なネックレスじゃないんですか?」



「それとは別のやつ。
俺がデザインしたやつ。」



「え!!?
若松さん、そんなこともしてるんですか!?」



「まあな、他の奴らには秘密な。
会社の上層部は知ってる。」



そんな若松さんの話には驚いていると、若松さんが私の首にネックレスをつけ終えた。



「それ、佐伯ちゃんをイメージして作ったネックレスなんだよな。」



「え!?なんですかそれ、嬉しいんですけど!!」



「それ渡しにさっき経理部に行こうとしてた。」



「お金・・・あ、今お財布なくて!!
後で持って行きます!!」



「いいよ、これから店頭に並んだら売れていくし。」



若松さんがそう言ってから、もう1本のネックレスを佐伯さんに差し出した。



「佐伯さん、こっちいる?
チェーン短めだから、ボタン閉めてても見えるようになってると思う。」



「私は福富さんと違って、職場の同僚というだけの関係の人からアクセサリーなんて恐くて受け取れませんから。
福富さん、アナタ、私の10年前みたいな姿で今までよく処女でいられたね、信じられない。
あ、ごめんね、処女なこと言っちゃった。」



「最っっ低!!!
若松さん!!!忘れてください!!!」




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