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「これは泣きますから・・・!!」



泣いてしまったけれど、私は大きく笑いながら文句を言った。
でも、先生がこんな感じになってしまったのは私のせいでもあるとは分かるので、目の前にある先生の腕をパシッと軽めに叩いて終わりにした。



先生は困った顔で笑い、私からスッと離れてまたカウンターの向こう側へと歩いていく。



「ごめんな、なんかムラムラしてた。
今の全部忘れろ。
今日こんなことするはずじゃなかった。」



「はい、分かってます。」



私が返事をしたのを確認した先生は残りのご飯を一瞬で食べ、それからお財布を取り出しカウンターにお金を置いてきた。



昔のように500円玉ではなく、1万円札を。



「さっきのお詫びと明日のご馳走さまの分。
明日もお前に会いたい。
また朝飯食いに来ていい?」



「いいですけど・・・え、お釣持ってくるので待っててくれますか?
昔と同じ500円で大丈夫ですから。」



「さっきのお詫びも含めてる。
それから早朝料金。
毎朝事務所の奴には5千円も払って事務所に朝飯持って来させてるから、5時半だとこんなもんだろ。」



「え~!?こんなに貰えないですって!!
こんな料理に1万円も貰うのが当たり前になっちゃうと、普通に働けなくなりそうなので受け取りたくないんですけど!!」



そう言って、1万円札には触れないままカウンター越しに先生を見る。



「“朝1番”のお店はなくなったので、“明日のご馳走さまの分”はもう終わりにしたいです。
明日来てくれた時、ご飯のお礼として500円で大丈夫ですから。
明日はちゃんとしたご飯を出します。」



「今日も俺にとってはちゃんとした飯だったぞ?」



「いえ、ちゃんとしてなかったので・・・。」



変な思いを込めてしまったことを心の中で謝りながら、さっきの先生の姿は忘れることにする。
今度はご飯の力を借りずに先生にあんな風に言って貰いたいと思いながら。



「よし・・・っ、信じらんねーくらいパワーついた!!
行ってくる!!」



「うん、行って。」



私のその言葉に先生は残念そうに笑い、久しぶりに開けたはずのお店の引き戸を今日もスムーズに開けた。



夏の朝、眩しい朝日の中に先生の後ろ姿は消えていった。



ボサボサな髪の毛にスウェット姿ではなく、完璧な姿の先生の後ろ姿が。



「明日から気を付けて作ろう・・・。」



先生の仕事が上手くいくようにというパワーだけを込めて、明日からは料理を作る。



「ズルをしてもきっと上手くいかないもんね。」



自分に言い聞かせながら食器を洗い始めた。
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