112 / 202
7
7-11
しおりを挟む
「え、なに・・・?」
テントに押し込められ、テントの出入口も朝人が私を抱えたままサッと閉め、自然の緑は見えなくなり緑色のテントの中。
その中で朝人は私の身体に片手を回したままで。
急にこんなことになり驚いている私に、朝人が怖いくらい真っ直ぐと私のことを見詰めてくる。
「金曜日の朝、途中でやめたから消化不良だっただろ?」
「それは・・・うん・・・。」
素直に認めると、朝人は私のことをバカにしたような顔で小さく笑った。
「今日は俺が責任を持ってデートの練習してやるよ。」
「うん、ありがとう・・・。」
朝人の様子が怖いくらいギラギラしているのが分かる。
それに怖い気持ちには全くならず、むしろこんな姿を初めて見てドキドキしていると、朝人が空いていた手で私の頬を優しく覆った。
「これだけは誰にも上書きさせない。
これから先、誰にも・・・。」
朝人の顔がゆっくりと私の顔に近付いてくる。
「朝人・・・?」
「キスはした?」
「したことないよ・・・。」
私が答えると朝人は真剣な顔になって、すぐ目の前にある私の目を見詰めてきた。
「千寿子、好きだよ。」
その言葉には、驚いて・・・。
凄く凄く驚いて・・・。
固まっている私を朝人は少しだけ悲しそうな顔で笑って、また口を開いてきた。
「俺は千寿子のことがすげー好き。
千寿子以外の女なんていらないくらいめちゃくちゃ好き。」
そんな言葉を言ってくれ、それには驚いたけれど嬉しくて。
凄く凄く、凄く凄く嬉しくて。
私は泣きながら何度も頷いた。
「私も朝人のことが好き・・・。
ずっと好きだった・・・。」
「そこまで泣くなよ。」
「泣くよ・・・。」
私の言葉に朝人は悲しそうに笑って、それから私の唇を見詰めながら顔を近付けてきた。
朝人が私のことを好きになってくれた。
ちゃんと大人の女として好きになってくれた。
その事実に心臓が飛び跳ねながら喜んでいて、緊張からか少し震える両手で朝人の腕を少し掴み、朝人がキスをしてくれようとしているのを受け入れる。
受け入れようとしていた。
そしたら・・・
私の唇に触れたのは朝人の唇ではなく、朝人の親指で。
私の頬を包んでいた手、その親指を朝人と私の唇の間に置いている。
「朝人・・・?」
「気分だけでもな・・・。」
苦しそうな顔でその言葉を呟き、朝人を呼び開いていた私の口の中に、その親指をゆっくりと入れてきた。
それで分かった・・・。
やっと思い出した・・・。
練習だった。
今日は本当のデートではなくて練習だった。
だから朝人からの言葉は違った。
私のことが好きというのは、全然違った。
テントに押し込められ、テントの出入口も朝人が私を抱えたままサッと閉め、自然の緑は見えなくなり緑色のテントの中。
その中で朝人は私の身体に片手を回したままで。
急にこんなことになり驚いている私に、朝人が怖いくらい真っ直ぐと私のことを見詰めてくる。
「金曜日の朝、途中でやめたから消化不良だっただろ?」
「それは・・・うん・・・。」
素直に認めると、朝人は私のことをバカにしたような顔で小さく笑った。
「今日は俺が責任を持ってデートの練習してやるよ。」
「うん、ありがとう・・・。」
朝人の様子が怖いくらいギラギラしているのが分かる。
それに怖い気持ちには全くならず、むしろこんな姿を初めて見てドキドキしていると、朝人が空いていた手で私の頬を優しく覆った。
「これだけは誰にも上書きさせない。
これから先、誰にも・・・。」
朝人の顔がゆっくりと私の顔に近付いてくる。
「朝人・・・?」
「キスはした?」
「したことないよ・・・。」
私が答えると朝人は真剣な顔になって、すぐ目の前にある私の目を見詰めてきた。
「千寿子、好きだよ。」
その言葉には、驚いて・・・。
凄く凄く驚いて・・・。
固まっている私を朝人は少しだけ悲しそうな顔で笑って、また口を開いてきた。
「俺は千寿子のことがすげー好き。
千寿子以外の女なんていらないくらいめちゃくちゃ好き。」
そんな言葉を言ってくれ、それには驚いたけれど嬉しくて。
凄く凄く、凄く凄く嬉しくて。
私は泣きながら何度も頷いた。
「私も朝人のことが好き・・・。
ずっと好きだった・・・。」
「そこまで泣くなよ。」
「泣くよ・・・。」
私の言葉に朝人は悲しそうに笑って、それから私の唇を見詰めながら顔を近付けてきた。
朝人が私のことを好きになってくれた。
ちゃんと大人の女として好きになってくれた。
その事実に心臓が飛び跳ねながら喜んでいて、緊張からか少し震える両手で朝人の腕を少し掴み、朝人がキスをしてくれようとしているのを受け入れる。
受け入れようとしていた。
そしたら・・・
私の唇に触れたのは朝人の唇ではなく、朝人の親指で。
私の頬を包んでいた手、その親指を朝人と私の唇の間に置いている。
「朝人・・・?」
「気分だけでもな・・・。」
苦しそうな顔でその言葉を呟き、朝人を呼び開いていた私の口の中に、その親指をゆっくりと入れてきた。
それで分かった・・・。
やっと思い出した・・・。
練習だった。
今日は本当のデートではなくて練習だった。
だから朝人からの言葉は違った。
私のことが好きというのは、全然違った。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる