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千寿子side.....
「どこまで頭を冷やしに行ってたんだよ!!!!!」
土曜日の静かな早朝に朝人の怒鳴り声が響いた。
それには少し慌てながら周りを見渡してから朝人に言った。
「何でそんなに怒ってるの?」
「怒るだろ!!!
俺の連絡も無視しやがって!!!」
「連絡・・・?」
鞄に入ったスマホを見てみるとマナーモードになっていた。
佐伯さんと話すことになるのでマナーモードにしていたのを忘れていた。
「ごめんごめん、マナーモードにしてたんだった!」
「“ごめんごめん”じゃねーよ!!
どれだけ心配したと思ってんだよ!!
一晩中探してたんだぞ!!?」
「え、ごめん・・・。」
それには驚きながらも謝った。
昨日は熱も出ていたし朝人はこんなに心配してくれていたらしい。
それには純粋に嬉しく思いながら自然と笑顔になってしまった。
「どこ行ってたんだよ・・・?
スッピンじゃん。」
「うん、なんか高そうなメイク落としで初めて化粧落としちゃった。
佐伯さんから飲みに誘われて飲みに行ったんだよね。」
「佐伯さんと・・・?
マジか、そんな関係だっけ?」
「全然。これが初めて。
朝人から私は佐伯さんのことを何も知らないみたいなことを言われたから、少しでも知ろうと思って。」
「なるほどな。」
朝人は慎重に頷いた後、恐る恐るという感じで私に聞いてきた。
「佐伯さんから聞いた?」
そう聞かれ・・・
私は泣きそうになってくるのを我慢しながらも口を開いた。
「飲み会では男の人達もいたから佐伯さんとは喋れなかったけど、その前に佐伯さんから少し聞いた!!」
私の言葉に朝人は真剣な顔で頷き、それから少し困った顔で笑った。
「そういうことだから、佐伯さんとあんま喧嘩すんなよ?」
佐伯さんと毎日のようにエッチをしまくっていたらしい朝人が私にそんなことを言ってきた。
いつもいつもいつも喧嘩を売ってくるのは佐伯さんなのに、私にそんなことを言ってきた。
あんなにお願いしたのに私とはエッチをしてくれなかった朝人がそんなことを言ってくる。
泣きそうになるのを我慢しながらも文句を言おうとした時、朝人の方が怒った顔になって先に口を開いてきた。
「オールなんてしてんじゃねーよ!!
若いからって調子乗りやがって!!」
「オールなんてするわけないじゃん!!
毎朝近所の老人に叩き起こされてるし、昨日の朝だって早起きしてるのにオールなんて出来るわけないじゃん!!」
「男もいるのに酒の席で寝てんじゃねーよ!!
相変わらずあぶねー奴だな!!」
「そんなことしてないから!!
若松さんに誘われたから若松さんのマンションに行ってきたの!!
それからクリームソーダを出してくれたカ・・・」
「千寿子。」
“カヤの部屋に泊まった”
そう続ける前に朝人が私の名前を呼んできた。
静かな朝人の声で私も口を閉じ、少しだけ冷静になりながら朝人の顔を見た。
さっきまで何故か怒っていた朝人、今は逆にめちゃくちゃ冷静な顔をしていた。
「お前が帰ってきたのも確認したから、俺もう帰るから。」
「うん、なんかごめんね。」
私が朝人のことを勝手に好きになり、大人の女として全然相手にしてくれないからと当たり散らしていた。
それに気付き自分に苦笑いをしながら朝人に素直に謝る。
素直に謝った私を朝人は何故か真っ直ぐと見詰めてきて、それからゆっくりと後ろを向いた。
そして歩き始めるのかと思ったら、またゆっくりとこっちを向いてきた。
「どうしたの?」
聞いた私に朝人は何も答えず、緩めていたネクタイをキュッと絞め直している。
それだけではなく少しだけ乱れている髪の毛も手で直し、髭は少し伸びているし疲れきった顔をしているけれど、いつもの“先生”の姿になんとなく戻った。
そんな姿で私のことを真剣すぎるくらい真剣な顔で見詰めてきて・・・
「俺が本物の老人になっても、俺は千寿子が作る飯が食いたいんだけど。」
そんなことを言ってきた。
「毎日食いたいんだけど。」
彼女には料理を作らせない主義の朝人が、私にはご飯を作らせようとしてくる。
“朝1番”はとっくにないのに、それでも私にご飯を作らせてくる。
朝人が本物の老人になったとしても、その頃まで私にはご飯を作らせようと今から約束しようとしてくる。
本物の老人になったとしてもダメらしい。
私のことはそういう風には見えないと今から予言されてしまった。
そんな予言に、私は涙を我慢しながらも答えた。
「私は朝人にもうご飯を作りたくない。」
「どこまで頭を冷やしに行ってたんだよ!!!!!」
土曜日の静かな早朝に朝人の怒鳴り声が響いた。
それには少し慌てながら周りを見渡してから朝人に言った。
「何でそんなに怒ってるの?」
「怒るだろ!!!
俺の連絡も無視しやがって!!!」
「連絡・・・?」
鞄に入ったスマホを見てみるとマナーモードになっていた。
佐伯さんと話すことになるのでマナーモードにしていたのを忘れていた。
「ごめんごめん、マナーモードにしてたんだった!」
「“ごめんごめん”じゃねーよ!!
どれだけ心配したと思ってんだよ!!
一晩中探してたんだぞ!!?」
「え、ごめん・・・。」
それには驚きながらも謝った。
昨日は熱も出ていたし朝人はこんなに心配してくれていたらしい。
それには純粋に嬉しく思いながら自然と笑顔になってしまった。
「どこ行ってたんだよ・・・?
スッピンじゃん。」
「うん、なんか高そうなメイク落としで初めて化粧落としちゃった。
佐伯さんから飲みに誘われて飲みに行ったんだよね。」
「佐伯さんと・・・?
マジか、そんな関係だっけ?」
「全然。これが初めて。
朝人から私は佐伯さんのことを何も知らないみたいなことを言われたから、少しでも知ろうと思って。」
「なるほどな。」
朝人は慎重に頷いた後、恐る恐るという感じで私に聞いてきた。
「佐伯さんから聞いた?」
そう聞かれ・・・
私は泣きそうになってくるのを我慢しながらも口を開いた。
「飲み会では男の人達もいたから佐伯さんとは喋れなかったけど、その前に佐伯さんから少し聞いた!!」
私の言葉に朝人は真剣な顔で頷き、それから少し困った顔で笑った。
「そういうことだから、佐伯さんとあんま喧嘩すんなよ?」
佐伯さんと毎日のようにエッチをしまくっていたらしい朝人が私にそんなことを言ってきた。
いつもいつもいつも喧嘩を売ってくるのは佐伯さんなのに、私にそんなことを言ってきた。
あんなにお願いしたのに私とはエッチをしてくれなかった朝人がそんなことを言ってくる。
泣きそうになるのを我慢しながらも文句を言おうとした時、朝人の方が怒った顔になって先に口を開いてきた。
「オールなんてしてんじゃねーよ!!
若いからって調子乗りやがって!!」
「オールなんてするわけないじゃん!!
毎朝近所の老人に叩き起こされてるし、昨日の朝だって早起きしてるのにオールなんて出来るわけないじゃん!!」
「男もいるのに酒の席で寝てんじゃねーよ!!
相変わらずあぶねー奴だな!!」
「そんなことしてないから!!
若松さんに誘われたから若松さんのマンションに行ってきたの!!
それからクリームソーダを出してくれたカ・・・」
「千寿子。」
“カヤの部屋に泊まった”
そう続ける前に朝人が私の名前を呼んできた。
静かな朝人の声で私も口を閉じ、少しだけ冷静になりながら朝人の顔を見た。
さっきまで何故か怒っていた朝人、今は逆にめちゃくちゃ冷静な顔をしていた。
「お前が帰ってきたのも確認したから、俺もう帰るから。」
「うん、なんかごめんね。」
私が朝人のことを勝手に好きになり、大人の女として全然相手にしてくれないからと当たり散らしていた。
それに気付き自分に苦笑いをしながら朝人に素直に謝る。
素直に謝った私を朝人は何故か真っ直ぐと見詰めてきて、それからゆっくりと後ろを向いた。
そして歩き始めるのかと思ったら、またゆっくりとこっちを向いてきた。
「どうしたの?」
聞いた私に朝人は何も答えず、緩めていたネクタイをキュッと絞め直している。
それだけではなく少しだけ乱れている髪の毛も手で直し、髭は少し伸びているし疲れきった顔をしているけれど、いつもの“先生”の姿になんとなく戻った。
そんな姿で私のことを真剣すぎるくらい真剣な顔で見詰めてきて・・・
「俺が本物の老人になっても、俺は千寿子が作る飯が食いたいんだけど。」
そんなことを言ってきた。
「毎日食いたいんだけど。」
彼女には料理を作らせない主義の朝人が、私にはご飯を作らせようとしてくる。
“朝1番”はとっくにないのに、それでも私にご飯を作らせてくる。
朝人が本物の老人になったとしても、その頃まで私にはご飯を作らせようと今から約束しようとしてくる。
本物の老人になったとしてもダメらしい。
私のことはそういう風には見えないと今から予言されてしまった。
そんな予言に、私は涙を我慢しながらも答えた。
「私は朝人にもうご飯を作りたくない。」
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