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数日後
いつもの布団、いつもの枕、でも俺の部屋でも俺の家でもないこの場所で、一睡も出来ないまま今日も朝5時を迎えた。
「仕事になんねーよ・・・。」
数日間寝ていない頭、そんな頭で新年度の忙しさの中仕事をしているけれど、今朝はいつも以上に頭が回らない。
それでも今日も5時に無理矢理にでも起き上がる。
「朝1番には福と富と寿がいる・・・。」
毎朝毎朝ジサマにもカヤにも言われていた言葉。
その言葉だけが今の俺を動かす力になっていた。
バサマだけではなくジサマまでいなくなってしまった。
それだけではなくてあの家までなくなってしまった。
俺の“朝1番”がなくなってしまった。
絶望しかないような状況の中でも、少しでもパワーをつける為に朝飯を作る。
朝が1番大切だから。
その日1日がどんな日になるのかが朝の過ごし方で決まる。
その為に今日も朝飯を作ろうとした時、スマホが鳴った。
台所から一旦離れてスマホを確認すると数日前から付き合っている彼女からの“おはようございます”というメッセージだった。
この4月に転職してきたばかりの女の子。
俺に彼女がいないと分かると早々に近寄ってきたので付き合うことになり、昨日は仕事終わりに少し飯を食いに行ってホテルでやった後に泊まりたいと言われた。
“毎朝5時に起きてるから”と断ったからか今メッセージを送ってきたのだと思う。
“おはよう”とだけ返事をしてからまた台所へとゆっくりと歩いた。
でも1度離れてしまったからか飯を作る気力がなくなってしまっていることに気付く。
俺は朝が苦手で。
そんな俺にジサマとバサマが“朝1番”を好きになる生活を送らせてくれていた。
朝が1番大切ということは俺も分かる。
その日1日がどんな日になるのかが朝の過ごし方で決まる。
本当にその通りだと思う。
でも・・・
“朝1番”がなくなってしまったこの状況でどんな朝の過ごし方をすればいいのか、俺は分からないままでいた。
絶望した気持ちでいた時、またスマホが鳴った。
彼女からだろうと予想しながら見てみるとやっぱり彼女からで。
“今度先生のお家で朝ご飯を作らせてください”という内容が書かれていた。
それには苦笑いで。
顔は今までで1番バサマに似ているような子で、気持ちも頭も今までで1番強いような子で。
今までで1番良いなと思うような子だけど、俺が暮らす家に入れたいとは思えなかった。
小学生だったカヤが俺の部屋に突然入ってきた時に、“二度と彼女という存在を俺が暮らす家に連れてくるか”と誓ってしまったからかもしれない。
その時のことを思い出して自然と笑いながらも彼女に返信をした。
《俺彼女には料理はさせない主義なんだよね。
仕事もしてて大変だろうし。》
そんな外面だけの返事を返した。
本心は、“彼女が作った飯は味が濃すぎて食えない”というものだったから。
味付けもそうだし、彼女が作る料理は不快なほど濃すぎる味になる。
それが何人かの彼女が作ってくれた料理を食べた結果学んだことだった。
「散歩でもしてくるか・・・。」
朝飯を作る気力はなくなってしまったので、少しでも良い朝の過ごし方をしようとボサボサの頭とスウェット姿のまま、コンタクトもせずに黒縁メガネを掛けてアパートの部屋を出た。
いつもの布団、いつもの枕、でも俺の部屋でも俺の家でもないこの場所で、一睡も出来ないまま今日も朝5時を迎えた。
「仕事になんねーよ・・・。」
数日間寝ていない頭、そんな頭で新年度の忙しさの中仕事をしているけれど、今朝はいつも以上に頭が回らない。
それでも今日も5時に無理矢理にでも起き上がる。
「朝1番には福と富と寿がいる・・・。」
毎朝毎朝ジサマにもカヤにも言われていた言葉。
その言葉だけが今の俺を動かす力になっていた。
バサマだけではなくジサマまでいなくなってしまった。
それだけではなくてあの家までなくなってしまった。
俺の“朝1番”がなくなってしまった。
絶望しかないような状況の中でも、少しでもパワーをつける為に朝飯を作る。
朝が1番大切だから。
その日1日がどんな日になるのかが朝の過ごし方で決まる。
その為に今日も朝飯を作ろうとした時、スマホが鳴った。
台所から一旦離れてスマホを確認すると数日前から付き合っている彼女からの“おはようございます”というメッセージだった。
この4月に転職してきたばかりの女の子。
俺に彼女がいないと分かると早々に近寄ってきたので付き合うことになり、昨日は仕事終わりに少し飯を食いに行ってホテルでやった後に泊まりたいと言われた。
“毎朝5時に起きてるから”と断ったからか今メッセージを送ってきたのだと思う。
“おはよう”とだけ返事をしてからまた台所へとゆっくりと歩いた。
でも1度離れてしまったからか飯を作る気力がなくなってしまっていることに気付く。
俺は朝が苦手で。
そんな俺にジサマとバサマが“朝1番”を好きになる生活を送らせてくれていた。
朝が1番大切ということは俺も分かる。
その日1日がどんな日になるのかが朝の過ごし方で決まる。
本当にその通りだと思う。
でも・・・
“朝1番”がなくなってしまったこの状況でどんな朝の過ごし方をすればいいのか、俺は分からないままでいた。
絶望した気持ちでいた時、またスマホが鳴った。
彼女からだろうと予想しながら見てみるとやっぱり彼女からで。
“今度先生のお家で朝ご飯を作らせてください”という内容が書かれていた。
それには苦笑いで。
顔は今までで1番バサマに似ているような子で、気持ちも頭も今までで1番強いような子で。
今までで1番良いなと思うような子だけど、俺が暮らす家に入れたいとは思えなかった。
小学生だったカヤが俺の部屋に突然入ってきた時に、“二度と彼女という存在を俺が暮らす家に連れてくるか”と誓ってしまったからかもしれない。
その時のことを思い出して自然と笑いながらも彼女に返信をした。
《俺彼女には料理はさせない主義なんだよね。
仕事もしてて大変だろうし。》
そんな外面だけの返事を返した。
本心は、“彼女が作った飯は味が濃すぎて食えない”というものだったから。
味付けもそうだし、彼女が作る料理は不快なほど濃すぎる味になる。
それが何人かの彼女が作ってくれた料理を食べた結果学んだことだった。
「散歩でもしてくるか・・・。」
朝飯を作る気力はなくなってしまったので、少しでも良い朝の過ごし方をしようとボサボサの頭とスウェット姿のまま、コンタクトもせずに黒縁メガネを掛けてアパートの部屋を出た。
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