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カヤのその言葉には驚く。



「熱が出てたからかな?
朝人、電話で普通に“朝人だよ”って・・・呼べみたいな感じで言ってきてたよ?」



「まずあの人が熱を出したことに驚きだけどね。
朝の高校時代はうちで一緒に暮らしてたけど体調崩したとか聞いたことない。
聞いたことないし・・・」



カヤが困った顔で笑った。



「私達には言わないで我慢してたと思う。
そういうことは言わないで我慢するんだよね、うちの家族にも。
熱が出て副ちゃんに電話を掛けたのもビックリだよ。・・・キッモ。」



最後の“キッモ”にはまた笑ってしまい、37.2度の熱が出て“大丈夫じゃない”と答えた朝人を思い出す。



「今朝、朝人に会ったよ。
先生じゃなくて朝人とやっと再会した。」



「そっか、どうだった?」



「エッチなことがめちゃくちゃ上手かった。」



「・・・いや──────っ!!!
本っっっ当に無理!!!
キモすぎる!!!やだやだやだ!!!!
本物の兄みたいな人のそういうの本物にキモい!!!
それも副ちゃんと・・・!!
私と同じ歳だよ!?顔なんてお姉ちゃんにソックリだし!!
何考えてんのあの人、キモすぎるんだけど!!!
やめなよ!!!副ちゃんもうやめなよあんな気持ち悪い人!!!!」



「私はカヤの恋愛応援したのにそれは酷いって~!!」



「でも私は相手が同級生だし!!
何がいいの!?あんな見た目だけ男!!!
見た目と仕事以外悪いところしかないじゃん!!!」



「私からしてみたら、見た目も悪かったし仕事が出来るかも知らなかったけどね。
朝人の悪い所しか知らないよ。」



私がそう言うとカヤは無言になり、真剣な顔でどこかを眺めた。



「分かってるよ・・・。
副ちゃんって頭も良いからその場の空気とかも綺麗に残しつつ言いたいことも言うし上手く立ち回れる、流石定食屋の看板娘だよ。
朝が朝ご飯を食べた後の姿で最初に会ってたとしたら、今の2人の関係はなかったと思う。
朝が“先生”じゃなくて“朝人”の姿だったから、副ちゃんは本気でぶつかってくれたんだろうね。
それに朝も・・・。」



カヤが真剣な顔のまま私のことを見詰めてきた。



「朝も副ちゃんが高校生だったから外面を気にしなかった。」



「高校生の時の私を知ってるから私はいつまで経っても“ガキ”って言われちゃうけどね。」



「朝、副ちゃんのことも“ガキ”って言ってるんだ?」



カヤが楽しそうに笑った声がお風呂の中で反響していく。



「朝にとっての“ガキ”は良い言葉なの。
自分の気持ちをちゃんと表現出来る“ガキ”、それが朝の思う“ガキ”。
子どもとも違う、子どもだってそれが出来ない子もいるから。
朝はそういう子だった。
完璧に外面を良くしてる子どもだった。」



カヤが湯船からゆっくりと立ち上がり私のことを見下ろしてくる。
その綺麗な身体からお湯が流れ落ちるのを視界に入れながらカヤを見上げていると・・・



「お父さんとお母さんと一緒に暮らしてなかったからね、朝は。
お父さんとお母さんの悪口を絶対に言われないように、朝は小さな頃から外では別人だった。」



「そうなんだ・・・。」



それしか言えずに私も立ち上がると、カヤが私の身体に視線を移してきた。



そして慌てたように両手で顔を覆った。



「本っっっ当に無理!!!!
変な想像出来ちゃうんだけど!!!!
キッモ!!!あの人何してんのマジで!!!!」
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