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高校1年生 4月
「千寿子ちゃん、今日もご馳走さま!」
「は~い!毎度ありがとうございま~す!」
500円玉をカウンターに置いた作業着のオジサンに笑い掛け、食器洗いをしながら店にある時計をチラッと見た。
時間は5時、そして外はまだほとんど暗い。
「気を付けて行ってきてね!
今年でオジサンも現場を引退するんでしょ!?」
「もう歳だからな~。
気を付けて行ってくるよ!
明日もここに来ないと千寿子ちゃんに心配掛けるしな!」
「本当だよ!
前にケガした時なんて何日も来なくて心配しちゃって、学校行く前に家にまで様子見に行っちゃったし!」
「あんなに心配してくれるのなんてもう千寿子ちゃんだけだよ!
嫁さんも子どももシラッとしてたぞ~?」
「家族なんてそんなものでしょ!」
食器洗いを終えてからカウンターの前に立った。
そしてオジサンが置いてくれた500円玉を握り締めて大きな声を出す。
「遅刻しちゃうよ!!」
「あー・・・っ行きたくねーな~!!
行ってきます!!!
千寿子ちゃんも高校行ってらっしゃい!」
「うん!ありがとう!!」
お互いに手を振り合い、今日の朝最後となるお客さんを見送った。
と、思ったら・・・
オジサンがお店を出たのと同時にお客さんが入ってきた。
初めて見るお客さん、髪の毛はボサボサで黒縁メガネを掛けていて、スウェットを着ているオジサンだった。
朝は常連のお客さん以外来ることはないのでそれには驚いた。
「いらっしゃいませ!!」
明るくその言葉を言うと、オジサンは店内をキョロキョロを見渡した。
そして・・・
「ボロボロだな。」
と、うちの悪口を言ってきた。
それには内心ムカつきながらも笑顔で続ける。
「こちらがメニューです。」
店の端にあるテーブル席に座ったオジサンにメニューを渡す。
それからすぐに温かいお茶を出しに行くと、オジサンは壁に貼ってあるポスターを眺めていた。
昔のアイドルが水着姿で生ビールを持って笑っているポスター。
「若い時の和泉(いずみ)かおりだな。」
「そうらしいですね。
父が好きで。」
そう答えてからオジサンに聞いた。
「お決まりですか?」
「うん、本日の魚定食で。」
「はい、今父を呼んできますので少々お待ちください。」
メニューを受け取りながらオジサンに言うと、オジサンが優しい顔で笑った。
「こんなに朝早くから家の手伝いをして偉いね。」
「小さな頃からやっていたので私にとっては普通のことですね。」
「小さな頃って・・・幼稚園とか?」
「いえ、小学生の頃から。」
その答えに何故かオジサンが吹き出した。
「今も小学生だろ・・・っ?」
そんな失礼なことを言われこれには完全にムカつき笑顔を消して口を開いた。
「この春から高校生になりましたけど。」
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高校1年生 4月
「千寿子ちゃん、今日もご馳走さま!」
「は~い!毎度ありがとうございま~す!」
500円玉をカウンターに置いた作業着のオジサンに笑い掛け、食器洗いをしながら店にある時計をチラッと見た。
時間は5時、そして外はまだほとんど暗い。
「気を付けて行ってきてね!
今年でオジサンも現場を引退するんでしょ!?」
「もう歳だからな~。
気を付けて行ってくるよ!
明日もここに来ないと千寿子ちゃんに心配掛けるしな!」
「本当だよ!
前にケガした時なんて何日も来なくて心配しちゃって、学校行く前に家にまで様子見に行っちゃったし!」
「あんなに心配してくれるのなんてもう千寿子ちゃんだけだよ!
嫁さんも子どももシラッとしてたぞ~?」
「家族なんてそんなものでしょ!」
食器洗いを終えてからカウンターの前に立った。
そしてオジサンが置いてくれた500円玉を握り締めて大きな声を出す。
「遅刻しちゃうよ!!」
「あー・・・っ行きたくねーな~!!
行ってきます!!!
千寿子ちゃんも高校行ってらっしゃい!」
「うん!ありがとう!!」
お互いに手を振り合い、今日の朝最後となるお客さんを見送った。
と、思ったら・・・
オジサンがお店を出たのと同時にお客さんが入ってきた。
初めて見るお客さん、髪の毛はボサボサで黒縁メガネを掛けていて、スウェットを着ているオジサンだった。
朝は常連のお客さん以外来ることはないのでそれには驚いた。
「いらっしゃいませ!!」
明るくその言葉を言うと、オジサンは店内をキョロキョロを見渡した。
そして・・・
「ボロボロだな。」
と、うちの悪口を言ってきた。
それには内心ムカつきながらも笑顔で続ける。
「こちらがメニューです。」
店の端にあるテーブル席に座ったオジサンにメニューを渡す。
それからすぐに温かいお茶を出しに行くと、オジサンは壁に貼ってあるポスターを眺めていた。
昔のアイドルが水着姿で生ビールを持って笑っているポスター。
「若い時の和泉(いずみ)かおりだな。」
「そうらしいですね。
父が好きで。」
そう答えてからオジサンに聞いた。
「お決まりですか?」
「うん、本日の魚定食で。」
「はい、今父を呼んできますので少々お待ちください。」
メニューを受け取りながらオジサンに言うと、オジサンが優しい顔で笑った。
「こんなに朝早くから家の手伝いをして偉いね。」
「小さな頃からやっていたので私にとっては普通のことですね。」
「小さな頃って・・・幼稚園とか?」
「いえ、小学生の頃から。」
その答えに何故かオジサンが吹き出した。
「今も小学生だろ・・・っ?」
そんな失礼なことを言われこれには完全にムカつき笑顔を消して口を開いた。
「この春から高校生になりましたけど。」
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