“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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「プロとか、凄く褒め上手ですね。
そんなことを羽鳥さんから言って貰えたらめちゃくちゃ嬉しいでしょうね。」



必死に口にしたそんな言葉に羽鳥さんは顔を赤らめたまま続けてくる。



「褒め上手とかじゃないよ、本当にプロなんだもん。」



プロでも何でもない、ただ料理が趣味なだけの砂川さんに対して羽鳥さんが自然にそう口にしている。
私には到底真似出来ないこと。
真似をしたいとも思えないこと。



この女は“そういう女”でもある。



そのことを再認識していく中で、気付いた。



エレベーターで一緒になった時とは違う香りが羽鳥さんからしていることに。
この前よりも自然な匂いだけど凄く良い匂いで・・・



「今日は何だかいつもの香りと違います?」



匂いに敏感な砂川さんの姿が私の頭の中にもう1度戻ってきてしまう。
何度も何度も戻ってきてしまう。



「えぇ~!!凄~い!!
よく分かったね~!!
今まで使ってたディフューザーとか、あとはシャンプーとトリートメント、ボディーソープとボディークリームも処分したの!!
無香料の物を使い始めたんだよね~。」



「そうなんですね。
無香料でも何か良い香りがしますよ?」



香水だけではなくボディークリームの香りもダメな砂川さん。
羽鳥さんなりに砂川さんのことも気に掛けているのかもしれない。



それが少しだけでも分かったことに酷く安心をした。



「本当・・・?嬉しい・・・。」



真っっっっ赤な顔で呟く羽鳥さんに笑顔を作り笑い掛けた。



心の中では泣きながらも笑い掛け・・・



「これ、ありがとうございました。」



羽鳥さんの手から奪い取った飲み物のお礼を素早くした後、羽鳥さんに背中を向けた。
今にも泣いてしまいそうだったから。



こんな物を奪い取った自分が惨めだと思って。



こんな物を奪い取っただけなのに少し喜んでいた自分があまりにも惨めだと思ってしまって。



瞬きをせずに必死に目を開けたまま歩き出していた。



なのに・・・



「“純愛(じゅんあ)”・・・。」



羽鳥さんが私の名前を呼んできた。



こんな私には似合わない、私が大嫌いな名前を。



でも、私のお母さんが娘の私につけてくれた可愛すぎるくらい可愛い名前。



そして、家族以外では私の彼氏である佐伯さんと私か好きな相手である砂川さんだけが呼んでいる名前を。



この大嫌いな女が呼んできた。
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