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中規模な松戸病院という病院の綺麗な中庭、そこのベンチに砂川さんと2人で並んで座り数時間が経過している。
「長いね・・・大丈夫かな・・・。」
佐伯さんからは“長く掛かる”と言われていたけれど、私が思っていたよりもずっと長い時間が経っている。
「まだ30分くらいだしもう少しかもね。」
「え・・・!?まだ30分なの!?
何時間も経ってるかと思ってた!!」
「このやり取りは4回目だね。」
砂川さんが優しい顔で笑い、気持ちの良い青空を見上げた。
「待っている時間は長く感じるものだよね。」
砂川さんと私の間にあるボストンバッグ、私がそこに置くように言ったので砂川さんと私の間にはちゃんと距離がある。
そのことに安心しながら私は砂川さんの横顔を眺める。
「“純ちゃん”を・・・“純愛ちゃん”を待っている時間は凄く長かったよ。
10年くらい経っていた感じ。」
「それは大袈裟。」
「大袈裟じゃないよ。
ホールディングスの経理部も本当に辛かったし、余計に長く感じた。」
それを聞き、私は砂川さんの顔から視線を逸らして目の前の花壇を眺める。
「ちゃんと増田生命に戻してくれるっていう話は嘘だったの?」
砂川さんの栄転は一時的な物。
増田生命に必ず戻す、そんな条件が提示されていた異動だから砂川さんは頷いたと昔聞いていた。
だから・・・
私は“大丈夫”だと思っていた。
砂川さんは必ず増田生命に戻ってくるから、私は“待っていられる”と、そう思いながら笑顔で送り出した。
その夜、砂川さんの口から“セフレ”という言葉を聞いて二度と会いたくないと思うことになるとは思わなかった。
“いつ戻ってきちゃうんだろう”とビクビクとしながら過ごすことになるとは思いもしなかった。
でも、いつしか“砂川さんはもう戻ってくることはない”と増田生命では言われていて。
お兄ちゃんに聞いてみても“課長になれる奴もいないし求人募集もしてないし、戻さないんじゃないか?”と言われていた。
それに凄く安心していたけれど、それに凄く悲しくもなった。
もう二度と砂川さんに会うことはないんだろうなと、どうしても悲しくもなった。
「必ず戻すと譲社長が約束してくれているから、いつか必ず戻る。
“ここでプレイヤーとしてではなくマネジメントスキルを身に付けてから”と言われているから、譲社長から見ると俺はまだまだなんだろう。」
砂川さんがそう口にした後、大きく項垂れた。
「譲社長だけではなく、ホールディングスの経理部の女性社員達に言わせると俺は“まだまだ、全然まだ”らしい・・・。」
「そうなの?」
「“彼女達”が思わず黙るくらいの返しが出来なければ、俺は“まだまだ、全然まだ”らしい・・・。」
「ホールディングスの経理部の女の人達みんな強めだよね?
増田生命の経理部の女の人達は比較的に大人しくて静かな感じの人達なのに。」
「本当にその通りで・・・」
砂川さんがゆっくりと顔を上げた。
「経理部の部屋の中に留めておくには勿体無い。」
「それって経理部をバカにしてない?」
「これはそういうことではなくて。」
砂川さんが笑いながら私の方を見て、顔や身体を見てきた。
「純愛ちゃんこそ経理部の中に留めておくには勿体無いよね。」
そんなことを言ってきて、少し考えた様子になった。
「こっちに出向しているし、本来だったらこっちの業務を任せて良いわけで・・・」
「なに?何の話?」
「ああ、羽鳥さんが経理部でも稼ぎたいと言い始めたから今その準備を進めていて。
・・・あ、ごめんごめん、羽鳥さんの名前を出しちゃったよ。」
「それ、ムカつくからマジでやめて。」
私の返事に砂川さんは楽しそうに笑い、何処かを指差した。
「レストランも入っているみたいだよ?
お茶でもしに行く?」
「彼氏が心臓の検査をしてるのに、呑気にお茶なんてしたくないから。」
「“純ちゃん”って・・・“純愛ちゃん”ってそういうトコロがあるよね。
そういうトコロも好きだよ。」
「それはどうも。」
“人”として私のことが“好き”な砂川さんにそう返事をし、立ち上がった。
「砂川さんから好きでいられると嫌だからお茶してくる。」
「俺も甘い物を食べたいから行こう。」
「・・・ねぇ、わざと“好き”とか言った?」
「まさか。
“まだまだ、全然まだ”の俺がそんな器用なことは出来ないよ。」
「こっっっわ・・・。
経理部の女の人達騙されてる。」
綺麗な青空の下、病院とは思えないくらい綺麗な中庭を砂川さんと2人で騒がしく歩いた。
「長いね・・・大丈夫かな・・・。」
佐伯さんからは“長く掛かる”と言われていたけれど、私が思っていたよりもずっと長い時間が経っている。
「まだ30分くらいだしもう少しかもね。」
「え・・・!?まだ30分なの!?
何時間も経ってるかと思ってた!!」
「このやり取りは4回目だね。」
砂川さんが優しい顔で笑い、気持ちの良い青空を見上げた。
「待っている時間は長く感じるものだよね。」
砂川さんと私の間にあるボストンバッグ、私がそこに置くように言ったので砂川さんと私の間にはちゃんと距離がある。
そのことに安心しながら私は砂川さんの横顔を眺める。
「“純ちゃん”を・・・“純愛ちゃん”を待っている時間は凄く長かったよ。
10年くらい経っていた感じ。」
「それは大袈裟。」
「大袈裟じゃないよ。
ホールディングスの経理部も本当に辛かったし、余計に長く感じた。」
それを聞き、私は砂川さんの顔から視線を逸らして目の前の花壇を眺める。
「ちゃんと増田生命に戻してくれるっていう話は嘘だったの?」
砂川さんの栄転は一時的な物。
増田生命に必ず戻す、そんな条件が提示されていた異動だから砂川さんは頷いたと昔聞いていた。
だから・・・
私は“大丈夫”だと思っていた。
砂川さんは必ず増田生命に戻ってくるから、私は“待っていられる”と、そう思いながら笑顔で送り出した。
その夜、砂川さんの口から“セフレ”という言葉を聞いて二度と会いたくないと思うことになるとは思わなかった。
“いつ戻ってきちゃうんだろう”とビクビクとしながら過ごすことになるとは思いもしなかった。
でも、いつしか“砂川さんはもう戻ってくることはない”と増田生命では言われていて。
お兄ちゃんに聞いてみても“課長になれる奴もいないし求人募集もしてないし、戻さないんじゃないか?”と言われていた。
それに凄く安心していたけれど、それに凄く悲しくもなった。
もう二度と砂川さんに会うことはないんだろうなと、どうしても悲しくもなった。
「必ず戻すと譲社長が約束してくれているから、いつか必ず戻る。
“ここでプレイヤーとしてではなくマネジメントスキルを身に付けてから”と言われているから、譲社長から見ると俺はまだまだなんだろう。」
砂川さんがそう口にした後、大きく項垂れた。
「譲社長だけではなく、ホールディングスの経理部の女性社員達に言わせると俺は“まだまだ、全然まだ”らしい・・・。」
「そうなの?」
「“彼女達”が思わず黙るくらいの返しが出来なければ、俺は“まだまだ、全然まだ”らしい・・・。」
「ホールディングスの経理部の女の人達みんな強めだよね?
増田生命の経理部の女の人達は比較的に大人しくて静かな感じの人達なのに。」
「本当にその通りで・・・」
砂川さんがゆっくりと顔を上げた。
「経理部の部屋の中に留めておくには勿体無い。」
「それって経理部をバカにしてない?」
「これはそういうことではなくて。」
砂川さんが笑いながら私の方を見て、顔や身体を見てきた。
「純愛ちゃんこそ経理部の中に留めておくには勿体無いよね。」
そんなことを言ってきて、少し考えた様子になった。
「こっちに出向しているし、本来だったらこっちの業務を任せて良いわけで・・・」
「なに?何の話?」
「ああ、羽鳥さんが経理部でも稼ぎたいと言い始めたから今その準備を進めていて。
・・・あ、ごめんごめん、羽鳥さんの名前を出しちゃったよ。」
「それ、ムカつくからマジでやめて。」
私の返事に砂川さんは楽しそうに笑い、何処かを指差した。
「レストランも入っているみたいだよ?
お茶でもしに行く?」
「彼氏が心臓の検査をしてるのに、呑気にお茶なんてしたくないから。」
「“純ちゃん”って・・・“純愛ちゃん”ってそういうトコロがあるよね。
そういうトコロも好きだよ。」
「それはどうも。」
“人”として私のことが“好き”な砂川さんにそう返事をし、立ち上がった。
「砂川さんから好きでいられると嫌だからお茶してくる。」
「俺も甘い物を食べたいから行こう。」
「・・・ねぇ、わざと“好き”とか言った?」
「まさか。
“まだまだ、全然まだ”の俺がそんな器用なことは出来ないよ。」
「こっっっわ・・・。
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綺麗な青空の下、病院とは思えないくらい綺麗な中庭を砂川さんと2人で騒がしく歩いた。
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