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砂川さんが買ってくれていたお土産が入っているビニール袋を嬉しそうに持ち、でも私のことを少し悲しそうな顔で見詰めた後、佐伯さんは中華街の出入口のアーチへと向かって歩いていった。
1人で帰らせて大丈夫か心配にもなったけれど・・・
砂川さんの大きな手は私の腕を離さないし、アーチへと歩いていく佐伯さんのことを目で追うのは何故か女ばかりで。
「“彼女”、さっきは男にしか見えなかった。」
砂川さんが私の腕からやっと手を離す。
でもその手を私の手にゆっくりと伸ばしてきて、砂川さんの大きくて温かい手が私の手を優しく繋いだ。
“普通”に繋がれたわけではなく、いわゆる恋人繋ぎという繋がれ方で。
「手、何・・・?」
「佐伯さんにとことん付き合うことにしたからさ、俺。
2人でデートでもしてみらたらって言われたから、これから純愛ちゃんと2人でデートをしないと。」
「これじゃあ食べ歩きが出来ない・・・。」
まだ小籠包の皿を持っている手を見下ろしながら文句を言うと、砂川さんが私が持つ皿の中にまだ1つも食べていない自分の小籠包を入れてきた。
「俺の方に皿重ねて?」
そんな指示をされ、言われた通り砂川さんの皿の上に私の皿を重ねた。
そしたら・・・
「これで食べられる。」
そう言ったかと思ったら、砂川さんは私に向かって口を開けてきた。
「何・・・?」
「俺にも食べさせて。
まだ1つも食べてない。」
「手、離すから・・・自分で食べてよ。」
「佐伯さんには食べさせてた。
俺にも食べさせて。」
「あれは佐伯さんが私の手を握りながらしてきたことで・・・それに・・・」
「女の子同士だから?」
それには何も答えられずにいると、砂川さんが私のことを試すような顔で見下ろし・・・
「佐伯さんって同性愛者だったんだね。
あんなに可愛くて綺麗なのに恋人もいないなんておかしいと思ってた。」
そう言って・・・
凄く意地悪な顔で笑った。
凄く凄く意地悪な顔で・・・。
「覚えてるかな、俺はオカマとか大嫌いなんだよ。
あ、でも佐伯さんは女だからオナベの方になるのか。」
昔は銭湯によく行っていたという砂川さん。
行くのを辞めた理由が銭湯内にあるサウナで同性であるはずの男からやたらとそういう誘いを受けたり酷い時には身体を触られることもあったらしい。
そのことは私も覚えていたけれど、佐伯さんについてそんな言葉を使ってくる。
凄く凄く意地悪な顔で笑いながら・・・
「“彼氏”がいるって、まさか性別が女のオナベだとは思わなかったよ。
確かに“普通”のセックスは出来ないね。
でも“普通”じゃないセックスはした?
女同士だと女の身体のことをよく分かるだろうし上手いのかな。」
そんなことまで言ってきて・・・
「でも気持ち悪いよ。
2人でそんなに気持ち悪いことをしてたのか。
佐伯さん、可愛くて綺麗な顔をして気持ちわ・・・・・っ」
持っていた箸で砂川さんの口に小籠包を突っ込んだ。
これ以上何も話させない為に。
「佐伯さんのことを悪く言わないでって言ったよね?」
「・・・・・・・っ佐伯さんは純愛ちゃんの“彼氏”だから?
“彼氏”の悪口を言われるのは嫌な気持ちになる?」
小籠包を少し噛んですぐに飲み込んだ砂川さんにそう聞かれ、私は自然と箸を持った手で胸の真ん中を押さえた。
さっきまで佐伯さんが置いてくれていた場所を。
「そうだよ、私の彼氏は佐伯さん。
どの女の子も選んでこなかった私がたった1人だけ選んだ女の子。
でも彼女として選んだわけじゃない。
私の彼氏として佐伯さんと付き合うことに頷いた。」
この胸を強く強く押しながら砂川さんのことを睨み付ける。
「男の人から愛して貰ったことなんてない私の命と身体を愛してくれた初めての男の人が佐伯さんなの。
私のことを女の子として・・・女として見てくれた初めての男の人なの。
私が前に進むことを応援してくれている私の彼氏なの。」
佐伯さんの魅力しかない姿を思い浮かべながら、泣きながら砂川さんにこの気持ちをぶつける。
「私は砂川さんにとっても女の子じゃなかった・・・。
全然女の子じゃなかった・・・。
女の子として付き合ってくれてなんていなかった・・・。」
砂川さんの手から手を引き抜こうとするけれど、その手を砂川さんから痛いほど強く握られる。
「誰も私のことを女の子としてなんて、女としてなんて見てくれない・・・。
私は疲れちゃった・・・。
女として生きるのに疲れちゃった・・・。」
「うん。」
「女として営業先に出るのが疲れちゃった・・・。」
「うん。」
「誰にも見られたくない・・・。
私のこんな姿なんて誰にも見られたくない・・・。
普通の女の子にはなれなかった私の姿を見られることがめちゃくちゃ嫌だった・・・。」
「うん。」
「砂川さんが女の子として私と付き合ってくれなかった理由を改めて知るのがめちゃくちゃ嫌だった・・・。
男として扱われる度に何度も何度も何度も知ることになるのにめちゃくちゃ疲れちゃった・・・。」
「うん。」
「疲れた時に私のことを受け入れてくれる砂川さんの家はもうないから、私は疲れたくなかった・・・。」
「うん。」
「佐伯さんは気持ち悪くなんてない・・・。」
こんな私を目の前にして“男の人”にも“雄”にもなってくれる佐伯さんの姿を思い浮かべる。
「佐伯さんは素敵な“男の人”だよ。
例え私の彼氏でいることが演技だとしても、それでも私は素敵な“男の人”だと思えるくらい素敵な“男の人”。」
次々と流れてくる涙。
でも冷たくなんてない。
凍ってしまいそうにもならない。
むしろ熱いくらいの涙がこの頬を伝っていく。
「私の自慢の“彼氏”なの。
私のことを本気で愛してくれていると不思議と心からそう思える、私の初めての“彼氏”なの。
気持ち悪くなんてない・・・。
他の人が何と言おうと、私には綺麗に見える・・・。
魅力しかないくらい綺麗に・・・綺麗に見える・・・。」
そんな言葉をぶつけた私に、砂川さんは優しい顔で頷いた。
その優しい優しい顔は佐伯さんに見せた時と同じ顔で・・・。
「うん、俺まで思わず抱き締める所だったくらいの“彼氏”だよね、純愛ちゃんの彼氏は。」
1人で帰らせて大丈夫か心配にもなったけれど・・・
砂川さんの大きな手は私の腕を離さないし、アーチへと歩いていく佐伯さんのことを目で追うのは何故か女ばかりで。
「“彼女”、さっきは男にしか見えなかった。」
砂川さんが私の腕からやっと手を離す。
でもその手を私の手にゆっくりと伸ばしてきて、砂川さんの大きくて温かい手が私の手を優しく繋いだ。
“普通”に繋がれたわけではなく、いわゆる恋人繋ぎという繋がれ方で。
「手、何・・・?」
「佐伯さんにとことん付き合うことにしたからさ、俺。
2人でデートでもしてみらたらって言われたから、これから純愛ちゃんと2人でデートをしないと。」
「これじゃあ食べ歩きが出来ない・・・。」
まだ小籠包の皿を持っている手を見下ろしながら文句を言うと、砂川さんが私が持つ皿の中にまだ1つも食べていない自分の小籠包を入れてきた。
「俺の方に皿重ねて?」
そんな指示をされ、言われた通り砂川さんの皿の上に私の皿を重ねた。
そしたら・・・
「これで食べられる。」
そう言ったかと思ったら、砂川さんは私に向かって口を開けてきた。
「何・・・?」
「俺にも食べさせて。
まだ1つも食べてない。」
「手、離すから・・・自分で食べてよ。」
「佐伯さんには食べさせてた。
俺にも食べさせて。」
「あれは佐伯さんが私の手を握りながらしてきたことで・・・それに・・・」
「女の子同士だから?」
それには何も答えられずにいると、砂川さんが私のことを試すような顔で見下ろし・・・
「佐伯さんって同性愛者だったんだね。
あんなに可愛くて綺麗なのに恋人もいないなんておかしいと思ってた。」
そう言って・・・
凄く意地悪な顔で笑った。
凄く凄く意地悪な顔で・・・。
「覚えてるかな、俺はオカマとか大嫌いなんだよ。
あ、でも佐伯さんは女だからオナベの方になるのか。」
昔は銭湯によく行っていたという砂川さん。
行くのを辞めた理由が銭湯内にあるサウナで同性であるはずの男からやたらとそういう誘いを受けたり酷い時には身体を触られることもあったらしい。
そのことは私も覚えていたけれど、佐伯さんについてそんな言葉を使ってくる。
凄く凄く意地悪な顔で笑いながら・・・
「“彼氏”がいるって、まさか性別が女のオナベだとは思わなかったよ。
確かに“普通”のセックスは出来ないね。
でも“普通”じゃないセックスはした?
女同士だと女の身体のことをよく分かるだろうし上手いのかな。」
そんなことまで言ってきて・・・
「でも気持ち悪いよ。
2人でそんなに気持ち悪いことをしてたのか。
佐伯さん、可愛くて綺麗な顔をして気持ちわ・・・・・っ」
持っていた箸で砂川さんの口に小籠包を突っ込んだ。
これ以上何も話させない為に。
「佐伯さんのことを悪く言わないでって言ったよね?」
「・・・・・・・っ佐伯さんは純愛ちゃんの“彼氏”だから?
“彼氏”の悪口を言われるのは嫌な気持ちになる?」
小籠包を少し噛んですぐに飲み込んだ砂川さんにそう聞かれ、私は自然と箸を持った手で胸の真ん中を押さえた。
さっきまで佐伯さんが置いてくれていた場所を。
「そうだよ、私の彼氏は佐伯さん。
どの女の子も選んでこなかった私がたった1人だけ選んだ女の子。
でも彼女として選んだわけじゃない。
私の彼氏として佐伯さんと付き合うことに頷いた。」
この胸を強く強く押しながら砂川さんのことを睨み付ける。
「男の人から愛して貰ったことなんてない私の命と身体を愛してくれた初めての男の人が佐伯さんなの。
私のことを女の子として・・・女として見てくれた初めての男の人なの。
私が前に進むことを応援してくれている私の彼氏なの。」
佐伯さんの魅力しかない姿を思い浮かべながら、泣きながら砂川さんにこの気持ちをぶつける。
「私は砂川さんにとっても女の子じゃなかった・・・。
全然女の子じゃなかった・・・。
女の子として付き合ってくれてなんていなかった・・・。」
砂川さんの手から手を引き抜こうとするけれど、その手を砂川さんから痛いほど強く握られる。
「誰も私のことを女の子としてなんて、女としてなんて見てくれない・・・。
私は疲れちゃった・・・。
女として生きるのに疲れちゃった・・・。」
「うん。」
「女として営業先に出るのが疲れちゃった・・・。」
「うん。」
「誰にも見られたくない・・・。
私のこんな姿なんて誰にも見られたくない・・・。
普通の女の子にはなれなかった私の姿を見られることがめちゃくちゃ嫌だった・・・。」
「うん。」
「砂川さんが女の子として私と付き合ってくれなかった理由を改めて知るのがめちゃくちゃ嫌だった・・・。
男として扱われる度に何度も何度も何度も知ることになるのにめちゃくちゃ疲れちゃった・・・。」
「うん。」
「疲れた時に私のことを受け入れてくれる砂川さんの家はもうないから、私は疲れたくなかった・・・。」
「うん。」
「佐伯さんは気持ち悪くなんてない・・・。」
こんな私を目の前にして“男の人”にも“雄”にもなってくれる佐伯さんの姿を思い浮かべる。
「佐伯さんは素敵な“男の人”だよ。
例え私の彼氏でいることが演技だとしても、それでも私は素敵な“男の人”だと思えるくらい素敵な“男の人”。」
次々と流れてくる涙。
でも冷たくなんてない。
凍ってしまいそうにもならない。
むしろ熱いくらいの涙がこの頬を伝っていく。
「私の自慢の“彼氏”なの。
私のことを本気で愛してくれていると不思議と心からそう思える、私の初めての“彼氏”なの。
気持ち悪くなんてない・・・。
他の人が何と言おうと、私には綺麗に見える・・・。
魅力しかないくらい綺麗に・・・綺麗に見える・・・。」
そんな言葉をぶつけた私に、砂川さんは優しい顔で頷いた。
その優しい優しい顔は佐伯さんに見せた時と同じ顔で・・・。
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