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いや、沈みそうになった。
砂川さんの身体は地面に沈められる途中で動かなくなり、片手で持っていた小籠包がのっている小皿もお箸も落とすことなく持っている。
砂川さんの腕に掛けられた佐伯さんに持たせるお土産のビニール袋だけが揺れる中、佐伯さんのクスクスと笑う可愛い笑い声が聞こえた。
「“おとーさん”凄いじゃ~ん♪
これで沈まなかった他人の男は“おとーさん”が初めて♪」
“他人”と言いながらも“おとーさん”と呼ぶ佐伯さんが砂川さんの身体を離した。
「ビックリしたっ♪」
「いや、ビックリしたのは俺の方でしょ。
こんなことをして身体は大丈夫?」
「私の身体まで心配してくれるなんて“おとーさん”本当に好き♪」
佐伯さんがニッコニコの可愛い女の子の笑顔で、ビックリして固まっているままの私のことを見てきた。
「砂川さん、良いじゃん。
田代よりも園江さんのことを大切に思ってくれてるように見えるくらい良いじゃん。
園江さん、砂川さんにエッチして貰えば?」
さっき2人で“出来ない”と言ったのに佐伯さんがそんなことを言って、私の前にゆっくりと歩いてきた。
「砂川さんに悪いことを言っている時の園江さんは普通の女の子・・・いや、普通以上に可愛い女の人になれてたよ。」
私の目の前に立った佐伯さんは私の胸にゆっくりと右手を伸ばしてきて・・・
私の胸の間にその手を優しく置いた。
「大丈夫、大丈夫だよ、純愛ちゃん。
私がいつだって一緒にいる。
だから絶対に大丈夫。」
女の子にも男の人にも見えない、ただ純粋に“人”として・・・佐伯和香としての言葉に感じる佐伯さんの言葉。
「上手くいく、絶対に上手くいくから。」
佐伯さんが優しい優しい顔で、でもその目には強い光を込めながら私のことを見詰める。
「頑張れ、純愛ちゃん。」
誰かに“頑張れ”と言われたのは中学の時の剣道、全国大会での決勝戦。
そして・・・
本社での営業時代、営業に行くのが辛くなってきた時に言われた“頑張れ”という言葉。
今だって辛い。
何も知らない佐伯さんに砂川さんを相手に“頑張れ”と言われてしまうのは。
凄く凄く辛い・・・。
どうしようもなく疲れてくる・・・。
どうしようもなく逃げ出したくなる・・・。
佐伯さんから逃げるように一歩、後ろに下がった時・・・
私の腕を砂川さんが強引に掴んだ。
「良い子だね、佐伯さん。」
私の腕を掴みながら砂川さんが優しい優しい“おとーさん”の顔で佐伯さんのことを見下ろす。
「こんなに良い子過ぎて“おとーさん”感動しちゃったよね。」
「初めて指導担当になった娘の仕事、“おとーさん”協力してくれる?
私がやろうとしてる悪いことに付き合ってくれる?」
「うん、佐伯さんにとことん付き合うよ。
俺は増田生命にいた頃から園江さんのことは“人”として凄く好きだったからね。」
「園江さんのことを嫌う人なんていなかっただろうしね。」
「そうだね。」
「でもこれからは園江さんのことを嫌う人も出てくる。」
佐伯さんがそう言って私のことを真っ直ぐと見てきた。
「悪いこともしていたらそれによって園江さんのことを嫌う人も出てくる。
でもそんなことを怖がっていたら何も始まらない、何も掴めない。」
私の腕を掴む砂川さんの手に更に力が入る。
砂川さんの腕だけではない、私の胸の真ん中に置いている佐伯さんの手にも力が込められた。
「頑張れ、“純愛”。
私がいつだって一緒にいる。
だから頑張れ、“純愛”。」
私のことを“純愛”と呼び、そう応援をしてくる。
砂川さんとのことを何も知らない佐伯さんが。
私の彼氏である佐伯さんが。
私の命と身体を愛してくれている佐伯さんが。
「逃げるな、“純愛”。」
逃げたくても砂川さんの大きな手に掴まれていて逃げることなんて出来ない。
「とりあえず、これから2人でデートでもしてみらたら?♪」
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砂川さんの身体は地面に沈められる途中で動かなくなり、片手で持っていた小籠包がのっている小皿もお箸も落とすことなく持っている。
砂川さんの腕に掛けられた佐伯さんに持たせるお土産のビニール袋だけが揺れる中、佐伯さんのクスクスと笑う可愛い笑い声が聞こえた。
「“おとーさん”凄いじゃ~ん♪
これで沈まなかった他人の男は“おとーさん”が初めて♪」
“他人”と言いながらも“おとーさん”と呼ぶ佐伯さんが砂川さんの身体を離した。
「ビックリしたっ♪」
「いや、ビックリしたのは俺の方でしょ。
こんなことをして身体は大丈夫?」
「私の身体まで心配してくれるなんて“おとーさん”本当に好き♪」
佐伯さんがニッコニコの可愛い女の子の笑顔で、ビックリして固まっているままの私のことを見てきた。
「砂川さん、良いじゃん。
田代よりも園江さんのことを大切に思ってくれてるように見えるくらい良いじゃん。
園江さん、砂川さんにエッチして貰えば?」
さっき2人で“出来ない”と言ったのに佐伯さんがそんなことを言って、私の前にゆっくりと歩いてきた。
「砂川さんに悪いことを言っている時の園江さんは普通の女の子・・・いや、普通以上に可愛い女の人になれてたよ。」
私の目の前に立った佐伯さんは私の胸にゆっくりと右手を伸ばしてきて・・・
私の胸の間にその手を優しく置いた。
「大丈夫、大丈夫だよ、純愛ちゃん。
私がいつだって一緒にいる。
だから絶対に大丈夫。」
女の子にも男の人にも見えない、ただ純粋に“人”として・・・佐伯和香としての言葉に感じる佐伯さんの言葉。
「上手くいく、絶対に上手くいくから。」
佐伯さんが優しい優しい顔で、でもその目には強い光を込めながら私のことを見詰める。
「頑張れ、純愛ちゃん。」
誰かに“頑張れ”と言われたのは中学の時の剣道、全国大会での決勝戦。
そして・・・
本社での営業時代、営業に行くのが辛くなってきた時に言われた“頑張れ”という言葉。
今だって辛い。
何も知らない佐伯さんに砂川さんを相手に“頑張れ”と言われてしまうのは。
凄く凄く辛い・・・。
どうしようもなく疲れてくる・・・。
どうしようもなく逃げ出したくなる・・・。
佐伯さんから逃げるように一歩、後ろに下がった時・・・
私の腕を砂川さんが強引に掴んだ。
「良い子だね、佐伯さん。」
私の腕を掴みながら砂川さんが優しい優しい“おとーさん”の顔で佐伯さんのことを見下ろす。
「こんなに良い子過ぎて“おとーさん”感動しちゃったよね。」
「初めて指導担当になった娘の仕事、“おとーさん”協力してくれる?
私がやろうとしてる悪いことに付き合ってくれる?」
「うん、佐伯さんにとことん付き合うよ。
俺は増田生命にいた頃から園江さんのことは“人”として凄く好きだったからね。」
「園江さんのことを嫌う人なんていなかっただろうしね。」
「そうだね。」
「でもこれからは園江さんのことを嫌う人も出てくる。」
佐伯さんがそう言って私のことを真っ直ぐと見てきた。
「悪いこともしていたらそれによって園江さんのことを嫌う人も出てくる。
でもそんなことを怖がっていたら何も始まらない、何も掴めない。」
私の腕を掴む砂川さんの手に更に力が入る。
砂川さんの腕だけではない、私の胸の真ん中に置いている佐伯さんの手にも力が込められた。
「頑張れ、“純愛”。
私がいつだって一緒にいる。
だから頑張れ、“純愛”。」
私のことを“純愛”と呼び、そう応援をしてくる。
砂川さんとのことを何も知らない佐伯さんが。
私の彼氏である佐伯さんが。
私の命と身体を愛してくれている佐伯さんが。
「逃げるな、“純愛”。」
逃げたくても砂川さんの大きな手に掴まれていて逃げることなんて出来ない。
「とりあえず、これから2人でデートでもしてみらたら?♪」
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