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「このワンピースが“Hatori”のワンピースだってよく分かったね・・・。」



何故か心臓が嫌な感じでドキドキとしてくる。



あんなに動揺していた砂川さんは私が着ている“Hatori”のワンピースを真っ直ぐと見下ろし、凄く優しい顔で笑った。



「このワンピース、羽鳥さんがたまに着てるんだよね。」



砂川さんの返事を聞き、砂川さんの凄く優しい顔を見て、私の身体は固まった。
この胸もこの身体も一気に凍ってしまったかのように冷たくなり硬直した。



「“純ちゃん”が着てたワンピースに似てると思って羽鳥さんに聞いたら、“Hatori”のワンピースだって教えて貰って。
今日“純愛ちゃん”が着てるワンピースを改めて見たら、やっぱり羽鳥さんがたまに着てるワンピースと同じだから分かったよ。」



砂川さんは凄く嬉しそうな顔でそんなことを言ってくる。



「それはちゃんと気付いたし、ちゃんと分かったよ。」



羽鳥さんと同じワンピースを着ていると知り、今すぐ脱ぎ捨てたい衝動に駆られる。



「俺は女性が身に付けている物とか全く興味がない男だけど、このワンピースだけは分かったよ。
“あの日”の“純ちゃん”の雰囲気は前日と全く違うもので凄く驚いて、どうしてだろうと思いながらよく見てたから覚えてたんだ。」



前日のスーツ姿よりは“可愛い”くらいの姿だった私。
そんな私は羽鳥さんと同じワンピースを着てしまっていた。
今も着てしまっている。



“恥ずかしい”としか思えない。



手持ちの服の中で1番高くてお洒落なワンピース。
砂川さんの誕生日の“あの日”も着ていた、私の中で特別なワンピース。



今日も特別な日になると思いこのワンピースを着てきた。



昔よりも今の方が似合うなんて思っていた自分が凄く恥ずかしくなってくる。



私は全然似合っていない。



私は絶対に似合っていない。



羽鳥さんと比べられてしまったら、私なんて絶対に全然似合っていない。



上半身を起こして背中にあるファスナーに手を掛けた。



このワンピースを今すぐ脱ぎ捨ててしまいたいのにファスナーは全然動かない。



それで気が付いた。



私の両手が凄く震えていることに。



またこんなに凍えてしまったから両手が震えてしまったのだと思う。



「俺がやるよ。」



羽鳥さんが着るこのワンピースのファスナーなんてきっと何度も下げている砂川さんが両手を私に向かって伸ばしてきた。



それを見て慌てて口を開く。



「電気・・・っ電気消して・・・!!」



歯もカチカチと音を鳴らしながら震えてきて、頬には冷たすぎる涙を感じる。



「電気よりもまずは暖房をつけるね。」



「暖房なんていいから早く電気消して・・・!!」



砂川さんがベッドの隅に置いたばかりのスーツのジャケット、それをバッ─────...と取り自分の姿を隠した。



「見られたくない・・・。
私の姿なんて砂川さんに見られたくない・・・。」



羽鳥さんと同じワンピースを着てしまっている私の姿も、羽鳥さんと同じワンピースを脱いだ後に出てくる羽鳥さんと同じ女とは思えないであろう裸も、砂川さんに見られたくないと思った。
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