55 / 166
4
4-7
しおりを挟む
リフォームをして昔と全然違う家となった砂川さんの新しい家の中、リビングでも寝室でもなく寝室の隣の部屋の扉を砂川さんが開けてくれた。
「温かいお茶・・・お茶というかミルクティー、本当に出さなくて大丈夫?」
「うん、そんなのを飲んでる間に砂川さんの気が変わると嫌だから。」
「俺の気が変わることはないけど・・・」
砂川さんは言葉を切った後に心配そうな声で続けた。
「リビングと寝室、浴室とトイレとクローゼット以外の所は何もない家だから。
寝室じゃなくて本当に大丈夫?」
窓にカーテンだけが掛けられている真っ暗な部屋、砂川さんの言葉を本当に何もない部屋の中を眺めながら聞いた。
「寝室で私とエッチをしようとしてるとか、砂川さんってバカだよね。
そこは結婚する人とエッチをする場所でしょ?」
「・・・そうか。
純愛ちゃんがそこまで考えてくれてるとは思わなかったよ。」
「砂川さん、大丈夫?
変わったんじゃないの?
やっぱり砂川さんって“そういう人”で心配になってくる。」
「“そういう人”って?」
「“めっちゃ変なオジサン”。」
「懐かしいね、それ。
でも最初の頃しか言わなかったのに。」
「好きな人に対してそんなことは言わないよ。」
「もう・・・今は俺のことを男としては好きじゃないからね。
女の子は新しい相手が出来ると昔の男のことは好きじゃなくなるって聞いたよ。」
「そうなの?」
「うん、うちの経理部の女性達が言ってた。」
「それはあるかもね。
昔私のことを好きだった女の子達も新しい相手が出来るとちゃんと私から卒業出来てたから。」
「純愛ちゃんも卒業した?」
砂川さんが低くて静かな声でそう言って、開けていた部屋の扉に入ることはなくゆっくりと閉めた。
「いつ俺から卒業した?」
砂川さんの横顔を見上げると、砂川さんは閉めた扉を真っ直ぐと見詰めている。
「いつ俺のことを男として好きじゃなくなった?」
「そんなこと、もう忘れた・・・。」
「そんなに前?」
「どうだろう・・・。」
「でも、今の彼氏のことも忘れる時が来るということでもあるよね。」
「それはない。」
「どうして言い切れるの?」
「私のことを女の子として好きになってくれた初めての男の人だから。」
男の人どころか“雄”の顔になってくれる佐伯さんの姿を思い浮かべながら砂川さんに言った。
砂川さんは私の言葉に少しだけ無言になり、それから急に私の背中に手を添えた。
「俺とセックスをすることを了承する彼氏だけどね。
純愛ちゃん、俺が変わったことをちゃんと彼氏に説明した?」
「結構ちゃんと説明したけど。」
「“結構”くらいじゃ彼氏もよく理解出来ていない思うよ。
お客様への事前説明がどれ程大切かということは営業時代に嫌という程学んでいるはずだよね?」
「それは・・・そうだけど。」
砂川さんの横顔は一切変わらないけれど、声に少しだけ力が入っていることは分かる。
声だけではない。
私の背中に添える手にも力が少しだけ込められた。
「やっぱり寝室においで。
こんな部屋では純愛ちゃんのことを大切にするセックスは出来ないから。」
「え、でも寝室は・・・。」
「俺は純愛ちゃんと結婚したいとも思っているから寝室でセックスをしたい。」
そう言って、私の背中を優しくどころか強引に押して寝室へと進ませようとしてくる。
「ここから大切にする演技を始めなくていいから・・・!!
それに私とエッチをしたベッドどうするの!?
そんなベッドで結婚する人ともエッチをするつもり!?」
「純愛ちゃんはそんなことまで考えなくていいから。
今日は大人しく俺に大切にさせるセックスをするだけでしょ?
純愛ちゃんの彼氏もそれを了承してるなら、純愛ちゃんが俺のことまで考える必要はないから。」
私の身体を無理矢理前に進めた砂川さんは寝室の扉を開けた。
「今後何らかの事態が起きたとしても、全ての責任を負うのは俺だから。
だから純愛ちゃんは何の心配もしなくていい。」
そう言われたけれど、また寝室のダブルベッドを見て身体が硬直してしまう。
「私が嫌だ・・・。
砂川さんがいつもエッチをしているこのベッドで私のセカンドバージンを受け取られるのは嫌だ・・・。」
本心はきっとこれで、その本心を必死に口から出した。
昔は砂川さんに何の見返りも求めることはなかったくらい“良い子”な私だったけれど、私はもう“良い子”は卒業する。
だから私の背中に添える砂川さんの手から必死に抵抗をする。
「砂川さんが他の女とエッチをしてるこのベッドは嫌だ・・・っ。」
「このベッドで誰ともセックスなんてしてないよ。」
砂川さんの言葉には驚き、ダブルベッドから視線を移し砂川さんのことを見上げる。
そしたら砂川さんは何故か私のことを試すような顔で見下ろしてきて・・・
「純愛ちゃん、彼氏にちゃんと説明しないとダメだよ。」
私の背中からゆっくりと手を離した砂川さんは、その手を私の手にソッ────...と絡めてきた。
まるで恋人同士がするような絡め方で・・・。
「ちゃんと付け足さないと。
まだ俺から卒業が出来てないって。」
「温かいお茶・・・お茶というかミルクティー、本当に出さなくて大丈夫?」
「うん、そんなのを飲んでる間に砂川さんの気が変わると嫌だから。」
「俺の気が変わることはないけど・・・」
砂川さんは言葉を切った後に心配そうな声で続けた。
「リビングと寝室、浴室とトイレとクローゼット以外の所は何もない家だから。
寝室じゃなくて本当に大丈夫?」
窓にカーテンだけが掛けられている真っ暗な部屋、砂川さんの言葉を本当に何もない部屋の中を眺めながら聞いた。
「寝室で私とエッチをしようとしてるとか、砂川さんってバカだよね。
そこは結婚する人とエッチをする場所でしょ?」
「・・・そうか。
純愛ちゃんがそこまで考えてくれてるとは思わなかったよ。」
「砂川さん、大丈夫?
変わったんじゃないの?
やっぱり砂川さんって“そういう人”で心配になってくる。」
「“そういう人”って?」
「“めっちゃ変なオジサン”。」
「懐かしいね、それ。
でも最初の頃しか言わなかったのに。」
「好きな人に対してそんなことは言わないよ。」
「もう・・・今は俺のことを男としては好きじゃないからね。
女の子は新しい相手が出来ると昔の男のことは好きじゃなくなるって聞いたよ。」
「そうなの?」
「うん、うちの経理部の女性達が言ってた。」
「それはあるかもね。
昔私のことを好きだった女の子達も新しい相手が出来るとちゃんと私から卒業出来てたから。」
「純愛ちゃんも卒業した?」
砂川さんが低くて静かな声でそう言って、開けていた部屋の扉に入ることはなくゆっくりと閉めた。
「いつ俺から卒業した?」
砂川さんの横顔を見上げると、砂川さんは閉めた扉を真っ直ぐと見詰めている。
「いつ俺のことを男として好きじゃなくなった?」
「そんなこと、もう忘れた・・・。」
「そんなに前?」
「どうだろう・・・。」
「でも、今の彼氏のことも忘れる時が来るということでもあるよね。」
「それはない。」
「どうして言い切れるの?」
「私のことを女の子として好きになってくれた初めての男の人だから。」
男の人どころか“雄”の顔になってくれる佐伯さんの姿を思い浮かべながら砂川さんに言った。
砂川さんは私の言葉に少しだけ無言になり、それから急に私の背中に手を添えた。
「俺とセックスをすることを了承する彼氏だけどね。
純愛ちゃん、俺が変わったことをちゃんと彼氏に説明した?」
「結構ちゃんと説明したけど。」
「“結構”くらいじゃ彼氏もよく理解出来ていない思うよ。
お客様への事前説明がどれ程大切かということは営業時代に嫌という程学んでいるはずだよね?」
「それは・・・そうだけど。」
砂川さんの横顔は一切変わらないけれど、声に少しだけ力が入っていることは分かる。
声だけではない。
私の背中に添える手にも力が少しだけ込められた。
「やっぱり寝室においで。
こんな部屋では純愛ちゃんのことを大切にするセックスは出来ないから。」
「え、でも寝室は・・・。」
「俺は純愛ちゃんと結婚したいとも思っているから寝室でセックスをしたい。」
そう言って、私の背中を優しくどころか強引に押して寝室へと進ませようとしてくる。
「ここから大切にする演技を始めなくていいから・・・!!
それに私とエッチをしたベッドどうするの!?
そんなベッドで結婚する人ともエッチをするつもり!?」
「純愛ちゃんはそんなことまで考えなくていいから。
今日は大人しく俺に大切にさせるセックスをするだけでしょ?
純愛ちゃんの彼氏もそれを了承してるなら、純愛ちゃんが俺のことまで考える必要はないから。」
私の身体を無理矢理前に進めた砂川さんは寝室の扉を開けた。
「今後何らかの事態が起きたとしても、全ての責任を負うのは俺だから。
だから純愛ちゃんは何の心配もしなくていい。」
そう言われたけれど、また寝室のダブルベッドを見て身体が硬直してしまう。
「私が嫌だ・・・。
砂川さんがいつもエッチをしているこのベッドで私のセカンドバージンを受け取られるのは嫌だ・・・。」
本心はきっとこれで、その本心を必死に口から出した。
昔は砂川さんに何の見返りも求めることはなかったくらい“良い子”な私だったけれど、私はもう“良い子”は卒業する。
だから私の背中に添える砂川さんの手から必死に抵抗をする。
「砂川さんが他の女とエッチをしてるこのベッドは嫌だ・・・っ。」
「このベッドで誰ともセックスなんてしてないよ。」
砂川さんの言葉には驚き、ダブルベッドから視線を移し砂川さんのことを見上げる。
そしたら砂川さんは何故か私のことを試すような顔で見下ろしてきて・・・
「純愛ちゃん、彼氏にちゃんと説明しないとダメだよ。」
私の背中からゆっくりと手を離した砂川さんは、その手を私の手にソッ────...と絡めてきた。
まるで恋人同士がするような絡め方で・・・。
「ちゃんと付け足さないと。
まだ俺から卒業が出来てないって。」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
オ ト ナ の事情。~人気アイドル × 人気モデル、今日から “ワケあり” な同棲始めます!~
月野アナ
恋愛
【”スキ” と言えない距離が切ない、ワケあり同棲ラブコメディー】
オトナの恋は、複雑な事情で溢れてる──それは甘くて、切なくて、誰にも秘密の期限付きの恋
***
人気アイドルグループ BLUE のボーカルとして活躍する向坂宏之(コウサカ ヒロユキ)は、ひょんなことからドラマの共演者である狭間ルナ(ハザマ ルナ)と同棲することになってしまう。しかし、7つも年下のルナは、28歳の宏之にはとても理解のできない超自由人!
最初はそんなルナのマイペースに戸惑いを隠せず調子を狂わされているばかりの宏之だったけれど、ぎこちない同棲生活の中でその飾らない素顔とミステリアスな過去に触れ、次第に惹かれていってしまう。ところが、通い合い始める二人の心とは裏腹に、実はルナにはあるタイムリミットが迫っていて……?!
本当のことなんて誰も知らない。日本中が見守ったビッグ・カップルの、切なすぎる恋の始まり。
***
人気アイドル × 人気モデル、今日から “ワケあり” な同棲始めます!
《明るい君が 困ったように笑うから、俺は好きなんて言わないと決めた》
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる