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「じいちゃん、引っ越さなくてもいいのに。
俺のお母さんとも家族だろ?」



俺が東京の大学へ進学する直前、じいちゃんが駅から20分のところにあるアパートに引っ越した。



じいちゃんの売上げはいいのに、こんなに安いアパートなのは・・・



「じいちゃん・・・俺も家族なのに、家族にはお金を使わないんじゃないの?」



じいちゃんが俺に東京の大学に行かせてくれるから・・・。



「拓実も同席してたからね。
あの契約は拓実も一緒に取ったんだよ。」



このためだった・・・。
じいちゃんはこの言葉を言うために、俺が可能な限り仕事に同席させていた。



「峰子ちゃんもだよ。
峰子ちゃんの東京のお店はプレゼントじゃないよ。
峰子ちゃんにも僕の仕事に同席させていたからね。」



「そうだったんだ・・・。」



「あんなに古いビルのお店だけど。」



「東京のあの街だと高いだろうし、凄いよ。」



そう言いながら、俺はじいちゃんのアパートの扉に紙を貼り付けた。



スナックのお店みたいに光り輝く看板ではないけど。



紙に黒いマジックで書いた看板だけど。



“保険代理店 小太郎”



そう書いた紙をアパートの扉にセロテープで貼り付けた。
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