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驚き見ていると、女の人だった。
お母さんと同じ40歳くらいの綺麗な女の人だった。
その女の人が、じいちゃんの目の前に立っていて・・・。
すぐ近くでお母さんが戸惑っているのが分かる。



「こんなクソ田舎にいてどうするんだよ!!!
一緒に行くよ!!!!」



その言葉を聞いて、分かった。
峰子さんなのだと分かった。
ばあちゃんの妹の子どもで、ばあちゃんとも少しだけ血の繋がった峰子さんなのだと分かった。



「いつまで経っても家に来ないで!!!
ママとは家を出てから会えないまま、こんなに早く死にやがって!!!」



「峰子ちゃんに会うと、時子さんはきっとここには戻れなかったから。」



「こんなに顔はソックリなのに、何でママはあんなに弱いんだよ!!!」



「本当に心が強いのは妹の方だったからね。
身体は弱かったけど。
身体が弱い分、心は強かった。」



「“立ちな、歩きな”って妹に言われないと歩けないくらいに、ママは弱かったからね!!!」



峰子さんがそう言って・・・大きな声で笑った。
“立ちな、歩きな”は、ばあちゃんの言葉ではなくてばあちゃんの妹の言葉だった。



「普段はクソババアみたいなババアなのに、急にしおらしくなるからね!!!
やっぱり金持ちの家に育った奴は弱っちいね!!!!」



「僕は、峰子ちゃんの家には行けない。
せっかくあんなに立派な旦那さんと結婚してもらえたから。
僕みたいな男が峰子ちゃんと一緒にいたと知られたら、峰子ちゃんがバカにされてしまうからね。」



「もうバカにされてるよ!!!
夜の女が社長の嫁なんだから!!!
そんなの私は何とも思わないよ!!!!」



「でも・・・峰子ちゃんの旦那さんは、強い人ではないから。
今僕が行って、もっと苦労を掛けたくないからね。
それに・・・」



じいちゃんが言葉を切り、少し離れた所に立つ俺を見た。
峰子さんもつられるように俺を見る。



「僕には時子さんとの孫がいる。
孫がここを出ていくまでは、必ず僕はここにいるよ。」



「制服着てるし・・・高校生か。」



そう聞かれ、頷く。



「高校生にしては良い男だね!!
血が流れてるね、コタさんの血が!!!」



峰子さんがそう言って、大きな声で笑う。



「東京に出てきな!!!
こんなクソ田舎に置いておくには勿体ないからね!!!」



そんなことを言って・・・



峰子さんがそんなことを言って、お母さんに何かを話し掛け・・・



去っていった・・・。



ばあちゃんによく似ていたようにも思うけど、俺にはばあちゃんの方が好きだなと思った。



ばあちゃんの方が可愛かったなと、思った・・・。



遺影の中で笑っているばあちゃんの顔を見る。



61歳だった・・・。
ばあちゃんは61歳だった・・・。



俺は・・・



俺は・・・



ばあちゃんのことが・・・



好きだった・・・。



大好きだった・・・。
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