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“今日の夜、峰子さんのお店に行くよ”
ママのお店に行くというクソ親父からの言葉を聞き、私は頷いた。
ママの毒は、私なんかよりも強い。
強い強い毒で・・・。
その毒を経営者達の身体に一気に回す。
毒は、優しさよりも温かさよりも一気に身体を回る。
目が覚めるくらいの速さで身体を回る。
そういう毒が、必要な人がいる。
そういう毒が、必要な時がある。
そういう毒を吸い込みたいお客様の時には、私は毒を吐く。
いつも吸い込むには身体に悪いその毒でも、吸い込みたいと思う時があるから。
そんなことを考えながら、社長室の扉を開け外に出た・・・。
外に出たら・・・
そこに、いた。
山ノ内が壁に寄りかかりながら、面白そうな顔で笑いながら・・・。
でも、どこか懐かしそうな顔で笑いながら・・・。
私を、見詰めていた・・・。
「聞いてたの?」
「君が呼び出されたと聞いたから。
でも・・・俺は必要なかったね。」
「必要でしょ。」
この人の目の前まで歩き、見上げる。
「親父のこと、お願い。
金持ちの家に生まれ育った、どうしようもないクソ親父なの。」
「俺も一緒に荷物を持てるといいけどね。
俺の鞄は・・・ボロボロで穴まで開いているかもしれない。」
この人のことは何も知らないけど、それはきっと・・・本当のことなんだと思う。
見上げている私に、怖いくらい真剣な顔でこの人が顔を近付けてくる・・・
「君に・・・穴を塞いで欲しい・・・。」
「私は、いずれ夜の世界だけの女になる。
日の当たる世界で歩き続けるアナタの鞄を塞いでは歩けない。
一緒に、歩いてはあげられない。」
「穴が開く度に、タバコの煙を吹き掛けて・・・。
タバコの煙で塞がった穴を、俺は覚えておくから・・・。
俺が覚えている限り、その穴は塞がっているから・・・。」
そんなことを言って、この人は・・・
私の腰にゆっくりと両手を回し、軽い軽い私を引き寄せ・・・
私の唇に、唇を重ねた・・・。
ママのお店に行くというクソ親父からの言葉を聞き、私は頷いた。
ママの毒は、私なんかよりも強い。
強い強い毒で・・・。
その毒を経営者達の身体に一気に回す。
毒は、優しさよりも温かさよりも一気に身体を回る。
目が覚めるくらいの速さで身体を回る。
そういう毒が、必要な人がいる。
そういう毒が、必要な時がある。
そういう毒を吸い込みたいお客様の時には、私は毒を吐く。
いつも吸い込むには身体に悪いその毒でも、吸い込みたいと思う時があるから。
そんなことを考えながら、社長室の扉を開け外に出た・・・。
外に出たら・・・
そこに、いた。
山ノ内が壁に寄りかかりながら、面白そうな顔で笑いながら・・・。
でも、どこか懐かしそうな顔で笑いながら・・・。
私を、見詰めていた・・・。
「聞いてたの?」
「君が呼び出されたと聞いたから。
でも・・・俺は必要なかったね。」
「必要でしょ。」
この人の目の前まで歩き、見上げる。
「親父のこと、お願い。
金持ちの家に生まれ育った、どうしようもないクソ親父なの。」
「俺も一緒に荷物を持てるといいけどね。
俺の鞄は・・・ボロボロで穴まで開いているかもしれない。」
この人のことは何も知らないけど、それはきっと・・・本当のことなんだと思う。
見上げている私に、怖いくらい真剣な顔でこの人が顔を近付けてくる・・・
「君に・・・穴を塞いで欲しい・・・。」
「私は、いずれ夜の世界だけの女になる。
日の当たる世界で歩き続けるアナタの鞄を塞いでは歩けない。
一緒に、歩いてはあげられない。」
「穴が開く度に、タバコの煙を吹き掛けて・・・。
タバコの煙で塞がった穴を、俺は覚えておくから・・・。
俺が覚えている限り、その穴は塞がっているから・・・。」
そんなことを言って、この人は・・・
私の腰にゆっくりと両手を回し、軽い軽い私を引き寄せ・・・
私の唇に、唇を重ねた・・・。
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