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「私に用?」



「ああ・・・。」



一体いつから待っていたのか、唇を震わせている山ノ内が私を見下ろす。
よく見ると・・・鼻も赤い・・・。



あんなに大きな会社の役職者が、ホステス1人を寒さに凍えながら待っていたらしい。



「店に入ってくればよかったのに。」



「他の女の子達もつくからね・・・。」



「こんな所で突っ立ってても、話せるか分からないじゃん。」



「話せて、よかった・・・。
待っていた甲斐があったよ。」



「そういう気概は大切だとは思う。」



山ノ内を見上げながら、笑う。



「綺麗なスーツを着て綺麗な顔のまま平然と仕事をしているより、今の姿の方がずっとクソ親父の会社に必要な姿。」



「そうだろうね・・・。」



「私は、ホステスなの。
本当のママから言われて親父の会社で社会勉強はしているけど、私はホステスなの。」



「ああ・・・。」



「アナタとは生きられない。
住む世界が違う。」



そう伝えると、山ノ内の眉間にシワが寄った。
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