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──
俺の足元にしゃがみ、悠ちゃんが黒くてまだ少し小さなネコを両手で撫で回している・・・
「ハナビ~!!!」
新しいネコを飼ったとは聞いていた。
今年の4月、お父さんが定年退職をしたからと悠ちゃんが一人暮らしを始めた。
その直前にお母さんと散歩をしていた時、また子ネコを保護して飼い始めたと。
「ハナビか・・・。」
名前も知っていた。
でも、見た目は違うけど実際にネコを撫でながら「ハナビ」と悠ちゃんが呼ぶと、“花火”のことを思い出す。
たった1度しか会うことがなかった“花火”のことを。
死んでしまう時に会った“花火”のことを。
怖かった。
俺が今まで生きてきた中で1番怖かった。
悠ちゃんのお母さんがいなくなってしまった時より怖かった・・・。
目の前で“花火”の花火の音が終わりそうになっているのを見て、どうしようもなく怖かった・・・。
そんな俺を、悠ちゃんは苦笑いで見上げた。
「前のネコは漢字で“花火”で、この子にも同じ名前って変かな?」
変ではないけれど、少し複雑な感情だった。
俺も母さんからそうやって名付けられたから。
“凛”さんの“凛”の文字を取って、そう名付けられたから。
それが嫌なわけではないけれど、少し重荷ではあった。
凛さんの分まで幸せにならなければ・・・。
そんな風に思ったこともある。
悠ちゃんは俺の足元で、“ハナビ”を見ながら言った・・・。
「カタカナだけど同じ名前にして・・・。
“花火”の代わりっていうわけではなくて、“花火”の続きをこの“ハナビ”が鳴らせるように。」
「“花火”の続きを・・・?」
「うん、“花火”の花火の音の続きをこの“ハナビ”が鳴らせるように。」
そう言って悠ちゃんが俺を見上げ・・・
俺は自分の胸に片手をのせた。
鳴っていた・・・。
俺の花火の音が鳴っていた・・・。
“凛さん”の代わりではない、でも“凛さん”の花火の音の続きかもしれない・・・。
続きなら良い。
続きなら嬉しい・・・。
花火の音が例え終わっても、また新たな花火の音が鳴るのだと思えるから・・・。
凛太郎side.......
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俺の足元にしゃがみ、悠ちゃんが黒くてまだ少し小さなネコを両手で撫で回している・・・
「ハナビ~!!!」
新しいネコを飼ったとは聞いていた。
今年の4月、お父さんが定年退職をしたからと悠ちゃんが一人暮らしを始めた。
その直前にお母さんと散歩をしていた時、また子ネコを保護して飼い始めたと。
「ハナビか・・・。」
名前も知っていた。
でも、見た目は違うけど実際にネコを撫でながら「ハナビ」と悠ちゃんが呼ぶと、“花火”のことを思い出す。
たった1度しか会うことがなかった“花火”のことを。
死んでしまう時に会った“花火”のことを。
怖かった。
俺が今まで生きてきた中で1番怖かった。
悠ちゃんのお母さんがいなくなってしまった時より怖かった・・・。
目の前で“花火”の花火の音が終わりそうになっているのを見て、どうしようもなく怖かった・・・。
そんな俺を、悠ちゃんは苦笑いで見上げた。
「前のネコは漢字で“花火”で、この子にも同じ名前って変かな?」
変ではないけれど、少し複雑な感情だった。
俺も母さんからそうやって名付けられたから。
“凛”さんの“凛”の文字を取って、そう名付けられたから。
それが嫌なわけではないけれど、少し重荷ではあった。
凛さんの分まで幸せにならなければ・・・。
そんな風に思ったこともある。
悠ちゃんは俺の足元で、“ハナビ”を見ながら言った・・・。
「カタカナだけど同じ名前にして・・・。
“花火”の代わりっていうわけではなくて、“花火”の続きをこの“ハナビ”が鳴らせるように。」
「“花火”の続きを・・・?」
「うん、“花火”の花火の音の続きをこの“ハナビ”が鳴らせるように。」
そう言って悠ちゃんが俺を見上げ・・・
俺は自分の胸に片手をのせた。
鳴っていた・・・。
俺の花火の音が鳴っていた・・・。
“凛さん”の代わりではない、でも“凛さん”の花火の音の続きかもしれない・・・。
続きなら良い。
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花火の音が例え終わっても、また新たな花火の音が鳴るのだと思えるから・・・。
凛太郎side.......
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