【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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「もう電車ないだろうし、泊まっていけば？」



スーツを着て帰ろうとしているオーシャンに言うと、オーシャンは一瞬だけ動きを止めた後にまた玄関へ歩きだした。



「泊まるのは流石にね。
“女友達”と何かがあると思われるとよくないから。」



「“何か”があったけどね？」



「だから、今帰るよ。」



「オーシャンってどこに住んでるの？」



「実家に住んでる。」



オーシャンが答えながら革靴を履いていく。
それには少し驚いた。
もう30歳だし、お金だってあるはずだし。



オーシャンの実家がどの地域にあるかは知っている。
会社には通えるけど少し遠い。
それなのにまだ実家に住んでいるらしい。



「お父さんとかお母さん・・・みかちゃんに何かあった？みんな元気？」



会ったことはないけど、中学の時もゲイバーでも話は少し聞いていたので知っている。
だから、家を出られない理由が何かあるのかと思った。



「みんな元気だよ、特に両親はうるさすぎるくらいに。」



「そっか、よかった！！」



本当に大丈夫そうな空気なのでそれには安心して笑った。
オーシャンは革靴を履いてからあたしの方を振り返り・・・あたしの顔を見てまた困った顔で笑った。



「俺の“女友達”は可愛くて困っちゃうよね・・・。
本当に・・・参ったな・・・。」



そう言って、玄関の前に立っていたあたしの腕を力強く引き・・・



オーシャンの筋肉隆々の胸の中にトンっと入ってしまった・・・。



そして、その瞬間・・・



あたしの唇がオーシャンの唇としっかり重なった・・・。



驚いたけどオーシャンは離れないのであたしもそのままでいたら、しばらくしてからゆっくりとオーシャンの唇が離れていった。



オーシャンを見ると、どこをどう見ても・・・やっぱり“あたし”を見詰め嬉しそうな顔で笑っていて・・・



「仲直り出来てよかった。
鼻血、出てるからね？・・・おやすみ。」



そう言って、鼻血が出てきたあたしを幸せそうな顔で見た後に扉から出ていった。



“死んでいる空気”が弱くなった“オーシャン”は、極上に良い男なうえにすっっっごいイケメンで・・・激しく甘い空気であたしの空気をかき混ぜてくる人になった・・・。