【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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鏡に映った綺麗な女の人に大きく笑い掛けた後、女子トイレを出た。
そしたら・・・目の前に座っていた男の人が女子トイレの前で待っていた。



「明・・・海、行くぞ。」



大真面目な顔で、雰囲気で、空気で、そう言ってきた。



「どうしたの？」



「真坂部長が、“まさか”の“俺も行く”とか言い出してる。」



そんな言い方には笑ってしまった。



「ね～！！真坂部長のことみんなで無視してたんでしょ～！？
そういうのやめなって！！」



「だって、あの人・・・吸収合併した会社の社員だった人だし。
それに、その会社の犯罪者の社長から気に入られてた人だろ？」



「でも、うちの人事部長の面接を1回で通って副社長面接も問題なく通ったんでしょ？
今年の4月に入社してきて、4月5月6月7月・・・毎月営業部のトップって凄くない！？
そっちの第二営業部の部長を最初の月から抜いてたよ！？」



「うちの部長は！！
自分の営業だけじゃなくて俺達のフォローしたり経営会議とかにも出席してたから！！」



部長への愛が止まらない第二営業部のメンバー達。
それを改めて見て笑ってしまう。



「とにかく・・・空気読め、明。
真坂部長が“まさか”飲み会に来ると思わなかったし、“まさか”の海にも行くと言い始めたから。
明が作った空気で行くって言ってるのに、その明が来ないとかマズイだろ。」



「あの空気、あたしじゃない～！！
そっちが振ってきたんでしょ～！！」



「振ったけどあれは明の空気だろ！！
頼むって、明来ないとか怖いから！！
あの人・・・普通あんなにすぐにトップになれるか？
すぐに第一営業部の部長になったし、なんか怖いだろ。」



「努力したんじゃないの？」



「他業種からの入社なのに、努力だけであんなにすぐトップになれるかよ・・・。
あの人と同じ会社にいた、他に採用された数人だって俺らと変わらない成績だぞ？」



男の人が大真面目な空気でそんなことを言うので、それに笑った。



「空気に入り込むのが上手いだけでしょ～？
飲み会の空気には全然入り込めてないけど！！
分かった！！海には行くから！！」