上 下
200 / 236
15

15-10

しおりを挟む
一平さんが私のことを優しい顔で見詰めながら続ける。



「美鼓ちゃんは“神様”の娘だからね。
分かったんだと思うよ。」



「私は神様の娘ではありませんけど・・・。」



「じゃあ神様のお使いの子かな。」



「そういうのでもありませんけど・・・。」



苦笑いをしながら答えると、一平さんが面白そうな顔で笑いながら私のことを指差した。



「でも、その格好だしね。」



そう言われて自分の姿を見下ろした。
それで自分が巫女の格好をしていたことを思い出す。



「これはなんとなくです。
なんとなく、今日はこの格好を選びました。」



「うん、国光さんがそういう子なのは俺達みんなもう知ってるよ。
だから元気君の話も本当なんだろうなって信じてしまうくらい、俺達にとって国光さんは普通ではないよ。」



初めてこの会社で誰かにそう言われてしまい、それには巫女装束を見下ろしながら笑った。



「でもうちの社長は好きになったんだよね、普通ではない女の子のことを。」



信之さんの声で私は顔を少しだけ上げた。



「普通ではない女の子どころか、人ではないと社長は思っていたんだよね。
俺達が爆笑しながら何度も言ったんだけどね、“人じゃないならお土産にポーチを買うのは止めた方がいい”って。」



信之さんが楽しそうに笑いながら元気さんのことを見ると、元気さんは困った顔で笑った。



「俺にとっては普通の女の子だったんだよ・・・。
めちゃくちゃ女の子だから、お土産はポーチを選んだ・・・。」



「次の年は“これで一緒にお茶する!”ってマグカップにしてたしね?
“夜の神社の中で麦茶を飲む“お茶”って何だよ!”ってみんなから爆笑されてたけど。」



信之さんが楽しそうに笑い続け、また私の方を見てきた。



「電話が来た時はまたみんなで爆笑したよね。
“ミコちゃん、普通の女の子だった!”って。」
しおりを挟む

処理中です...