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大学は全寮制で、日本の大学のように外部との交流はほぼないに等しい。
同じ大学の学生達だけと大学でも生活の中でも関わるような日常で、特殊な環境の中にいた。



それはある意味狭い世界で、でも在学中はそれが当たり前のように感じてくる。
お金にも時間にも余裕のある学生は休学をしてもっと広い世界を見ていたりもするが、俺にはお金がなかった。



返済不要の奨学金を支給されていたけれど生活費も勿論必要で。
我が家は父さんに支払われる増田からの役員報酬には一切手をつけず、母さんの給与で生活をしていたから余裕は全くなかった。



兄ちゃんも大学を奨学金で通ったし、働き始めてからは兄ちゃんも俺に仕送りをしてくれたけれど、新卒で入社をした的場製菓の一般社員としての給与の範囲での仕送りで。



俺は母さんと兄ちゃんが働いたお金で向こうで生活を送っていた。
俺が向こうで生きるということは“ゆきのうえ商店街”の増田一家で決めたことだけど、俺にとって母さんと兄ちゃんから貰うお金はとてもとても重いものだった。



大学の信頼出来る友達がついてきてくれ心強かったのは確かだけど、“ゆきのうえ商店街”の増田一家の為だけにIT企業ではなく保険会社を起業することになった。



信之君を匿うことイコール、兄ちゃんが守りたいと思い幸せにしたいと思うモノを幸せにすることに繋がることだったから。



信之君と婚約者を結婚させない為。



信之君の婚約者は結子ちゃんだったから。



「みんなの存在は心強かったけど、それが重くもあった。」
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