【完】約束したでしょ？忘れちゃった？(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

7

7-5

「国光ちゃん、残業？」



入社をしてから初めて残業をしていると元気さんから声を掛けられた。



「はい、夕方に先輩達が沢山仕事を回してくれて。」



そう答えながらそれぞれの書類にポンポンと印鑑を押していく。



「先輩達からは印鑑を押すだけで良いと言われて。
私のお父さんもそうしていたって一平さんが先輩達に伝えたみたいです。」



「国光ちゃん、天気予報より天気予報だからね！」



元気さんが爆笑しながらそう言うので、私も笑いながら頷いた。



「私は上手く出来ないタイプですけど、ここにはお父さんがいてくれたから。
だからみんな凄く良くしてくれます。」



「小関部長だけは国光ちゃんのお父さんのことが嫌いみたいだけどね！！」



「小関部長の反応が普通の反応でもありますからね。
逆に信用・・・じゃなくて信頼でしたっけ？
信頼出来る人ではあると思います。
あのくらいちゃんとしている人の方が信頼出来る業種もあるでしょうし、ああいう人を求めている人もいるはずですし。」



私の言葉に元気さんは少し驚いた顔をした後、少しだけ考えた様子になった。
でも、少しだけ。



すぐにいつもの元気な笑顔になり私のことを見下ろしてきた。



「キリの良い所で止められる？
一緒にご飯食べに行かない？」



そう言われ、それには一瞬だけ考えすぐに頷いた。



今日会社に来た元気さんのお兄さん。
増田ホールディングスの社長の1人でもあるその人は結子さんの旦那さんでもあった。
元気さんは私と再会する前、お兄さんの結婚相手となる結子さんのことを好きになった。
そして身体の関係まであって・・・。



やっぱり私が結子さんと会ったせいで上手くいかなかったのかもしれないというのを思い出してしまった。
結子さんが選んだのは元気さんではなく元気さんのお兄さんだった。



怖いくらい強い強い“何か”を持っている元気さんのお兄さんの姿を思い浮かべながら、全然お兄さんに似ていない元気さんの隣に並んで会社を出た。