【完】約束したでしょ？忘れちゃった？(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

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“国光ちゃんがタイプとかそういうのじゃないから”



朝、元気さんはそう言っていた。
その言葉を思い浮かべながら、お昼休みが終わった後にトイレでお化粧を直していく。



お化粧をちゃんとしたくらいでは何も“結子さん”に近付くことは出来ていない。
その事実に泣きそうになりながらもお化粧を直していく。



「私の身体にも幻滅したのかな・・・。」



たった1度だけ・・・。
たった1度だけの関係で終わってしまった。



たいして膨らんでいない胸、小柄で肉付きもほとんどないような身体。
どう思ったのだろう・・・。
私の身体を見て元気さんはどう思ったのだろう・・・。



2回目がない時点でその答えは分かっている。
ちゃんと分かっている。



でも私は“元気”を忘れることもなかったことにすることも捨てることも出来なかったから。



ほんの少しだけでも大人っぽく見えるように、この顔にお化粧をしていく。
カヤとは違ってクリクリとした目は私をやっぱり幼く見せるけど、それでも元気さんはなかったことにはしなかったから。



ポーチとタオルハンカチを持って総務部に戻ると、そこにいた人を見て私は驚き固まった。



だって、いたから。



いたから。



“結子さん”の旦那さんが、いたから。



元気さんよりも相川さんよりもビジッとしたスーツ姿で、増田ホールディングスの誰よりも様になっているようなスーツ姿で。



そんな姿で・・・



私のデスクの所に立っていて、私の存在に気付くなりニヤッと笑った・・・。