上 下
35 / 236
3

3-8

しおりを挟む
自分の部屋の中、“元気”とラベルに書かれた純米酒を飲んでいく。
大きな一升瓶をまた持ち上げ、黒いお洒落な文字で“M”と書かれた真っ白なマグカップのギリギリまで注いだお酒。



それをまた飲んでいく。



“ゆきのうえ商店街”の天使の1人として生まれた元気さん。
その元気さんの名前が付けられた純米酒。



「飲みやすくてよかった・・・。」



これを全部飲んだらなくなる。



なくしてしまいたかった。



元気さんのことも元気さんとの約束も、私もなくしてしまいたかった。



そう思いながら真っ白なマグカップで“元気”を飲んでいく。



元気さんのことも元気さんとの約束も飲み込んでいく。



どんどん減っていく一升瓶の中の純米酒を眺めながら、私は泣きながら飲んだ。



早く、早く、全てなくなってしまうように。



一滴残らずなくなってしまうように。



早く、早く・・・



早く、早く・・・。
しおりを挟む

処理中です...