24 / 103
象鼻蛇
しおりを挟む
その象は日本の首都圏のとある動物園に住んでいた。
5歳の雄の象で、とても長い鼻が自慢だった。
その動物園の人気者だった。
名前は楽丸。
ある日、楽丸が昼ご飯の干し草を食べているとき、鼻の付け根がムズムズした。
鼻を振ると、根本からぽたりと落ちてしまった。
楽丸は自慢の鼻を失い、鼻無し象になってしまったのだ。
長い鼻は蛇に変化し、もぞもぞと這い回った。
「蛇くん、ぼくの鼻に戻っておくれ」と楽丸は言ったけれど、象鼻蛇は這いずるばかりで、答えなかった。
蛇はやがて檻から外に出てしまった。
鼻のない象は哀しそうに元は自分の鼻だった蛇を見た。
象担当の飼育員が鼻のない楽丸に気づいて、びっくりした。
「楽丸くん、きみの鼻はどうしたんだい?」
「もげて、蛇になって檻から出て行きました」
「それは大変だ」
飼育員は象鼻蛇を探し、動物園の出入口付近で発見し、同僚と協力して捕獲した。
蛇を楽丸の鼻の付け根にくっつけようとしたけれど、くっつかない。
もう楽丸と蛇は別の生き物になっていたのだ。
元には戻らない。
動物園は象の隣の檻に象鼻蛇を入れて、飼育することにした。
たちまち象鼻蛇と鼻無し象の楽丸は動物園の新しい人気者となり、来園者が急増した。
動物園は潤い、飼育員のボーナスは増額され、象と蛇は高級な餌を与えられるようになった。鼻がないので食べにくいが、楽丸は特別製の餌箱を用意してもらって、草を食べた。
「干し草が美味しくなったよ」と楽丸は隣の檻にいる象鼻蛇に話しかけた。
象鼻蛇は言葉がわからないのか発声できないのかわからないが、とにかく答えない。
生きたカエルを丸呑みし、消化しながら、寝そべっているばかりだった。
5歳の雄の象で、とても長い鼻が自慢だった。
その動物園の人気者だった。
名前は楽丸。
ある日、楽丸が昼ご飯の干し草を食べているとき、鼻の付け根がムズムズした。
鼻を振ると、根本からぽたりと落ちてしまった。
楽丸は自慢の鼻を失い、鼻無し象になってしまったのだ。
長い鼻は蛇に変化し、もぞもぞと這い回った。
「蛇くん、ぼくの鼻に戻っておくれ」と楽丸は言ったけれど、象鼻蛇は這いずるばかりで、答えなかった。
蛇はやがて檻から外に出てしまった。
鼻のない象は哀しそうに元は自分の鼻だった蛇を見た。
象担当の飼育員が鼻のない楽丸に気づいて、びっくりした。
「楽丸くん、きみの鼻はどうしたんだい?」
「もげて、蛇になって檻から出て行きました」
「それは大変だ」
飼育員は象鼻蛇を探し、動物園の出入口付近で発見し、同僚と協力して捕獲した。
蛇を楽丸の鼻の付け根にくっつけようとしたけれど、くっつかない。
もう楽丸と蛇は別の生き物になっていたのだ。
元には戻らない。
動物園は象の隣の檻に象鼻蛇を入れて、飼育することにした。
たちまち象鼻蛇と鼻無し象の楽丸は動物園の新しい人気者となり、来園者が急増した。
動物園は潤い、飼育員のボーナスは増額され、象と蛇は高級な餌を与えられるようになった。鼻がないので食べにくいが、楽丸は特別製の餌箱を用意してもらって、草を食べた。
「干し草が美味しくなったよ」と楽丸は隣の檻にいる象鼻蛇に話しかけた。
象鼻蛇は言葉がわからないのか発声できないのかわからないが、とにかく答えない。
生きたカエルを丸呑みし、消化しながら、寝そべっているばかりだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる