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鋼竹
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地球は棘の惑星と化しつつあった。鋼竹が爆発的に増殖し、天高く伸びている。
最初は公園に生えた1本のタケノコだった。外見はなんの変哲もない。
だが、その生長は怖ろしく早かった。
1日で3メートルの高さに伸びた。
形は竹と同じだが、その色は銀色だった。
人々は珍事として面白がったが、すぐに笑い事ではなくなった。
世界各地で鋼竹が発生したのだ。
生物学者の伊藤康夫は鋼竹の存在を知ったときから、その研究と駆除に当たった。
その竹はすさまじく硬い。
タケノコのうちに刈り取らないと、高熱切断機を使わないと切れなくなる。
増殖力も驚異的で、四季、地域を問わず生えてくる。
建物をぶち抜いて生える。どんどん伸びる。1か月で100メートルを超える。
伊藤は懸命に鋼タケノコを刈り取るようになった。その脅威を訴えた。すぐに多くの人が竹やタケノコを切るようになった。しかし伊藤が住む街は鋼竹の太い棘で覆われたようになってしまって、駆除は間に合わなかった。
その街だけではない。
竹害は世界中で切迫した問題となった。
地上全体が鋼竹に覆われるのは時間の問題。
鋼竹が地上の支配者になり、人類は滅びる。
そんな未来が確実視されるようになってきた。
人間はほぼ全員が鋼竹の駆除に当たるようになったが、それでも足りない。子どもたちに義務教育を放棄させ、隠居している高齢者を駆り出し、鋼タケノコを刈らせているが、だめなのだ。
鋼竹の発生と生育が早すぎる。
伊藤は鋼竹の異常性に愕然としていた。
この竹は地球起源なのだろうか。
そもそも生物なのだろうか。
DNAがない。
地下深くのマグマをエネルギー源としている。
海底からも生えてくる。海面上に突き出した鋼竹のせいで、船舶の運航もできなくなりつつあった。
10キロメートルを超える超巨大鋼竹もめずらしくなくなった。地球のウニ化だ、と伊藤は思った。
突如として変貌した地球。
人類を突き刺す鋼竹災害。
誰もこんな事態を予測できなかった。
鋼竹は最強だ。
無駄な努力と知りながらも、伊藤は不眠不休で研究し、鋼タケノコを刈り取りつづけた。
鋼竹を撲滅したい。
だが彼が1本のタケノコを刈り取るうちに、その横で3、4本が生えてくる。
絶望的だ……。
と思っていたら、隣で高熱切断機を使い、200メートル級の鋼竹を切っていたおじいさんとおばあさんが腰を抜かしていた。
鋼竹の中から、この世のものとは思えないほど美しい女の子が出てきたのだ。
「わたしはかぐや」と彼女は言った。
「助かりたければ、わたしを育てなさい」
え、なに?
鋼竹だけでもわけがわからないのに、この美少女はなんなの?
伊藤の頭は真っ白になった。なにも考えられない。
おじいさんとおばあさんはかぐやを大切に育てた。やがて彼女の前にはたくさんの求婚者が現れるのだが、それはまた別の話。
鋼竹は地球内部のマグマへと引いていった。
かくして人類は救われたのである……。
伊藤は生物学者をやめ、売れない芸人になった。
最初は公園に生えた1本のタケノコだった。外見はなんの変哲もない。
だが、その生長は怖ろしく早かった。
1日で3メートルの高さに伸びた。
形は竹と同じだが、その色は銀色だった。
人々は珍事として面白がったが、すぐに笑い事ではなくなった。
世界各地で鋼竹が発生したのだ。
生物学者の伊藤康夫は鋼竹の存在を知ったときから、その研究と駆除に当たった。
その竹はすさまじく硬い。
タケノコのうちに刈り取らないと、高熱切断機を使わないと切れなくなる。
増殖力も驚異的で、四季、地域を問わず生えてくる。
建物をぶち抜いて生える。どんどん伸びる。1か月で100メートルを超える。
伊藤は懸命に鋼タケノコを刈り取るようになった。その脅威を訴えた。すぐに多くの人が竹やタケノコを切るようになった。しかし伊藤が住む街は鋼竹の太い棘で覆われたようになってしまって、駆除は間に合わなかった。
その街だけではない。
竹害は世界中で切迫した問題となった。
地上全体が鋼竹に覆われるのは時間の問題。
鋼竹が地上の支配者になり、人類は滅びる。
そんな未来が確実視されるようになってきた。
人間はほぼ全員が鋼竹の駆除に当たるようになったが、それでも足りない。子どもたちに義務教育を放棄させ、隠居している高齢者を駆り出し、鋼タケノコを刈らせているが、だめなのだ。
鋼竹の発生と生育が早すぎる。
伊藤は鋼竹の異常性に愕然としていた。
この竹は地球起源なのだろうか。
そもそも生物なのだろうか。
DNAがない。
地下深くのマグマをエネルギー源としている。
海底からも生えてくる。海面上に突き出した鋼竹のせいで、船舶の運航もできなくなりつつあった。
10キロメートルを超える超巨大鋼竹もめずらしくなくなった。地球のウニ化だ、と伊藤は思った。
突如として変貌した地球。
人類を突き刺す鋼竹災害。
誰もこんな事態を予測できなかった。
鋼竹は最強だ。
無駄な努力と知りながらも、伊藤は不眠不休で研究し、鋼タケノコを刈り取りつづけた。
鋼竹を撲滅したい。
だが彼が1本のタケノコを刈り取るうちに、その横で3、4本が生えてくる。
絶望的だ……。
と思っていたら、隣で高熱切断機を使い、200メートル級の鋼竹を切っていたおじいさんとおばあさんが腰を抜かしていた。
鋼竹の中から、この世のものとは思えないほど美しい女の子が出てきたのだ。
「わたしはかぐや」と彼女は言った。
「助かりたければ、わたしを育てなさい」
え、なに?
鋼竹だけでもわけがわからないのに、この美少女はなんなの?
伊藤の頭は真っ白になった。なにも考えられない。
おじいさんとおばあさんはかぐやを大切に育てた。やがて彼女の前にはたくさんの求婚者が現れるのだが、それはまた別の話。
鋼竹は地球内部のマグマへと引いていった。
かくして人類は救われたのである……。
伊藤は生物学者をやめ、売れない芸人になった。
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