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コーラス
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6月13日土曜日は小雨が降っていた。
若草物語の5人は傘をさして、樹子の家へ向かっていた。
途中でラーメン店『大臣』に寄る。
「えっ、ラーメン屋さんに入るの? 私、初めて!」とすみれが言った。
「すみれちゃん、ラーメン屋さんに入ったことないの?」
「うん。家族で外食するときは、フレンチとかイタリアンとかお寿司とかだから」
「お金持ちだね……」
「父は信用金庫の常務理事よ。まあ貧乏ではないわね」
「なんか凄い!」
「ちなみに祖父が会長。おじいちゃんは、たまに高級な天ぷら屋さんとかに連れて行ってくれるわ」
「ブルジョワめ!」とヨイチが叫んだ。
彼らは大臣に入った。
ラーメンを食べ、すみれは狂喜した。
「何これ、美味しい! ラーメン美味しいわ!」
「ラーメンは日本が誇るべき最高の料理のひとつよ」と樹子が言った。
「本当ね! 美味しい! 美味しい!」
大臣の店長がうれしそうに笑った。
樹子の部屋へ行き、練習の準備をする。
「原田さんは今日もクラベスだけを叩いて。3拍目にアクセントをつけてね。カッカッカンカッていう感じで!」
「わかったわ、園田さん」
すみれは素直にバンドマスターの指示に従った。
「『秋の流行』の作曲をしてきたぜ」
「聴かせて」
ヨイチがエレキギターで弾き語りをした。
「うん、いいわね。さすがよ、ヨイチ!」
「なんなの、このバンド? 天才が集結しているの?」
美しいメロディを聴いて、すみれは驚愕した。
「たいしたことねえよ。このぐらいできるやつはいっぱいいる」
ヨイチはまったく喜んでいなかった。
「さあ、練習しようぜ。未来人、『秋の流行』を歌ってくれ!」
作曲者がギターを弾き、みらいが歌った。樹子がエレピで伴奏を模索し、良彦がベースラインを探った。
そのようすをすみれは呆然と見ていた。この人たち、本当に凄い……。
「原田さん、ぼさっとしていないで、クラベスを鳴らして!」
「は、はい!」
すみれは懸命に打楽器を叩いた。
このバンドに参加できたことに、喜びを感じていた。
「一つ目、一つ目ってくり返すところ、コーラスを入れないか?」
「誰が歌うのよ?」
「樹子が歌えよ」
「あたしはキーボードに集中したい。ヨイチが歌いなさいよ」
「女性ボーカルだから、コーラスも女がいいんじゃないか? そうだ、原田、コーラスをやってみろよ」
「えっ、私?」
「パーカッションをきちんと会得してもらわないといけないのよ。原田さんには荷が重いわ」
「いいじゃねえか。試しにやってみようぜ。カラオケ好きなんだろ、原田?」
「うん。松任谷由実の曲をよく歌っているわ」
「やらせてみようぜ、樹子!」
「わかったわよ。原田さん、ハモらせようなんて、思わなくていいから。ユニゾンでいい。未来人と一緒に歌ってみて」
「がんばろうね、すみれちゃん!」
「うん!」
すみれはクラベスを叩きながら、コーラスをした。みらいと声を合わせるのは、心地よかった。
「未来人ほどじゃないけれど、まあまあいい声をしているじゃないか。採用だろ、これ」
「そうね。原田さん、コーラスも頼むわ」
「はい!」
すみれはゾクゾクした。楽しい、このバンド……!
若草物語の5人は傘をさして、樹子の家へ向かっていた。
途中でラーメン店『大臣』に寄る。
「えっ、ラーメン屋さんに入るの? 私、初めて!」とすみれが言った。
「すみれちゃん、ラーメン屋さんに入ったことないの?」
「うん。家族で外食するときは、フレンチとかイタリアンとかお寿司とかだから」
「お金持ちだね……」
「父は信用金庫の常務理事よ。まあ貧乏ではないわね」
「なんか凄い!」
「ちなみに祖父が会長。おじいちゃんは、たまに高級な天ぷら屋さんとかに連れて行ってくれるわ」
「ブルジョワめ!」とヨイチが叫んだ。
彼らは大臣に入った。
ラーメンを食べ、すみれは狂喜した。
「何これ、美味しい! ラーメン美味しいわ!」
「ラーメンは日本が誇るべき最高の料理のひとつよ」と樹子が言った。
「本当ね! 美味しい! 美味しい!」
大臣の店長がうれしそうに笑った。
樹子の部屋へ行き、練習の準備をする。
「原田さんは今日もクラベスだけを叩いて。3拍目にアクセントをつけてね。カッカッカンカッていう感じで!」
「わかったわ、園田さん」
すみれは素直にバンドマスターの指示に従った。
「『秋の流行』の作曲をしてきたぜ」
「聴かせて」
ヨイチがエレキギターで弾き語りをした。
「うん、いいわね。さすがよ、ヨイチ!」
「なんなの、このバンド? 天才が集結しているの?」
美しいメロディを聴いて、すみれは驚愕した。
「たいしたことねえよ。このぐらいできるやつはいっぱいいる」
ヨイチはまったく喜んでいなかった。
「さあ、練習しようぜ。未来人、『秋の流行』を歌ってくれ!」
作曲者がギターを弾き、みらいが歌った。樹子がエレピで伴奏を模索し、良彦がベースラインを探った。
そのようすをすみれは呆然と見ていた。この人たち、本当に凄い……。
「原田さん、ぼさっとしていないで、クラベスを鳴らして!」
「は、はい!」
すみれは懸命に打楽器を叩いた。
このバンドに参加できたことに、喜びを感じていた。
「一つ目、一つ目ってくり返すところ、コーラスを入れないか?」
「誰が歌うのよ?」
「樹子が歌えよ」
「あたしはキーボードに集中したい。ヨイチが歌いなさいよ」
「女性ボーカルだから、コーラスも女がいいんじゃないか? そうだ、原田、コーラスをやってみろよ」
「えっ、私?」
「パーカッションをきちんと会得してもらわないといけないのよ。原田さんには荷が重いわ」
「いいじゃねえか。試しにやってみようぜ。カラオケ好きなんだろ、原田?」
「うん。松任谷由実の曲をよく歌っているわ」
「やらせてみようぜ、樹子!」
「わかったわよ。原田さん、ハモらせようなんて、思わなくていいから。ユニゾンでいい。未来人と一緒に歌ってみて」
「がんばろうね、すみれちゃん!」
「うん!」
すみれはクラベスを叩きながら、コーラスをした。みらいと声を合わせるのは、心地よかった。
「未来人ほどじゃないけれど、まあまあいい声をしているじゃないか。採用だろ、これ」
「そうね。原田さん、コーラスも頼むわ」
「はい!」
すみれはゾクゾクした。楽しい、このバンド……!
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