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楽器購入
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「持ち運びできるキーボードを買わないと、駅前ライブはできないわね」
木曜日の昼休み、学生食堂で樹子が言った。
彼女はかけそばを食べ、みらいはカレーライスを食べていた。
「今日は楽器屋さんに行こうかな?」
「わたしも行きたい。一緒に行く」
「双子玉川に大きめの楽器店があったわ。放課後に行こうか」
「原田さんはクラベスを買ったかな?」
「あの子も連れて行こうか」
食後に樹子が「今日の放課後、双子玉川の楽器屋さんに行くけれど、原田さんも行く?」と声をかけたら、「行く行く!」とすみれは答えた。うれしそうだった。
放課後、3人は南急電鉄線に乗り、双子玉川駅で降りた。
楽器店は駅から徒歩3分の立地で、5階建てのビルだった。
1階はギターとベース売り場、2階はキーボード、3階は管楽器、4階ではドラムスなどの打楽器を販売していた。5階はスタッフオンリー。地下1階は練習スタジオになっていた。
彼女たちはまず2階へ行った。
ピアノやエレクトーンが並んでいる。坂本龍一が愛用しているというシンセサイザー「アープ・オデッセイ」もあった。
「これがほしいけれど、今日の目的はちがう」
樹子はイス、スタンド、持ち運び用ケース付きのエレクトリックピアノに目をつけた。61鍵のキーボードで、価格は24800円。電池で音が鳴る。
「弾いてもいいですか?」と樹子は店員に訊いた。
「どうぞ」と言われて、彼女は『わかんない』を弾いた。電子的なピアノの音が響いた。
「本物のピアノに比べると安っぽい音だけど、贅沢は言えないわね」
樹子は『世界史の歌』と『We love 両生類』も弾いた。
「知らないメロディですね。オリジナル曲ですか?」
「はい。あたしたちのオリジナルです。このエレピを持ち運びしたいのですが……」
「背負ってみますか?」
「はい」
店員が黒いケースにエレピ、イス、スタンドを入れてくれた。樹子はそれを背負った。
「やっぱり重いわね……」
「鍵盤数がもっと少なくて軽い商品もありますよ」
「いや、これより少ないとさびしすぎる。これを買います」
1階のレジで、樹子はエレピを購入した。そこに取り置きしてもらって、4階の打楽器売り場へ行く。
ドラムセットと各種パーカッションが売られている。
「打楽器って、かわいいわね」
「うん。かわいいね」
すみれは2500円と3000円のクラベス、2800円と3200円のタンバリン、1000円と1300円のトライアングル、3000円と3600円のマラカスを次々に手に取り、音を出した。
「うーん、やっぱり高い方が音がいいような気がするなあ」
「あなたは見習いなんだから、無理しなくてもいいわよ。この2500円のクラベスを買えばいいじゃない」
「いや、たくさん揃えた方が楽しそう。4種類の打楽器を買うわ。全部高い方を!」
みらいが目を見開いた。
「原田さん、お金持ち?」
「そんなことはないけれど、いま財布に3万円入ってる」
「お金持ちだ!」
すみれはクラベス、タンバリン、トライアングル、マラカスを購入した。
「初心者がいきなり……。無駄になっても知らないわよ」
「大丈夫! しっかり練習するから!」
すみれは樹子の目を挑戦的に見つめた。樹子は見返した。みらいはびっくりした。バチバチと火花が散っているように感じたのだ。
3人は楽器店を後にして、双子玉川駅に向かった。
木曜日の昼休み、学生食堂で樹子が言った。
彼女はかけそばを食べ、みらいはカレーライスを食べていた。
「今日は楽器屋さんに行こうかな?」
「わたしも行きたい。一緒に行く」
「双子玉川に大きめの楽器店があったわ。放課後に行こうか」
「原田さんはクラベスを買ったかな?」
「あの子も連れて行こうか」
食後に樹子が「今日の放課後、双子玉川の楽器屋さんに行くけれど、原田さんも行く?」と声をかけたら、「行く行く!」とすみれは答えた。うれしそうだった。
放課後、3人は南急電鉄線に乗り、双子玉川駅で降りた。
楽器店は駅から徒歩3分の立地で、5階建てのビルだった。
1階はギターとベース売り場、2階はキーボード、3階は管楽器、4階ではドラムスなどの打楽器を販売していた。5階はスタッフオンリー。地下1階は練習スタジオになっていた。
彼女たちはまず2階へ行った。
ピアノやエレクトーンが並んでいる。坂本龍一が愛用しているというシンセサイザー「アープ・オデッセイ」もあった。
「これがほしいけれど、今日の目的はちがう」
樹子はイス、スタンド、持ち運び用ケース付きのエレクトリックピアノに目をつけた。61鍵のキーボードで、価格は24800円。電池で音が鳴る。
「弾いてもいいですか?」と樹子は店員に訊いた。
「どうぞ」と言われて、彼女は『わかんない』を弾いた。電子的なピアノの音が響いた。
「本物のピアノに比べると安っぽい音だけど、贅沢は言えないわね」
樹子は『世界史の歌』と『We love 両生類』も弾いた。
「知らないメロディですね。オリジナル曲ですか?」
「はい。あたしたちのオリジナルです。このエレピを持ち運びしたいのですが……」
「背負ってみますか?」
「はい」
店員が黒いケースにエレピ、イス、スタンドを入れてくれた。樹子はそれを背負った。
「やっぱり重いわね……」
「鍵盤数がもっと少なくて軽い商品もありますよ」
「いや、これより少ないとさびしすぎる。これを買います」
1階のレジで、樹子はエレピを購入した。そこに取り置きしてもらって、4階の打楽器売り場へ行く。
ドラムセットと各種パーカッションが売られている。
「打楽器って、かわいいわね」
「うん。かわいいね」
すみれは2500円と3000円のクラベス、2800円と3200円のタンバリン、1000円と1300円のトライアングル、3000円と3600円のマラカスを次々に手に取り、音を出した。
「うーん、やっぱり高い方が音がいいような気がするなあ」
「あなたは見習いなんだから、無理しなくてもいいわよ。この2500円のクラベスを買えばいいじゃない」
「いや、たくさん揃えた方が楽しそう。4種類の打楽器を買うわ。全部高い方を!」
みらいが目を見開いた。
「原田さん、お金持ち?」
「そんなことはないけれど、いま財布に3万円入ってる」
「お金持ちだ!」
すみれはクラベス、タンバリン、トライアングル、マラカスを購入した。
「初心者がいきなり……。無駄になっても知らないわよ」
「大丈夫! しっかり練習するから!」
すみれは樹子の目を挑戦的に見つめた。樹子は見返した。みらいはびっくりした。バチバチと火花が散っているように感じたのだ。
3人は楽器店を後にして、双子玉川駅に向かった。
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