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ライブやりたいわね。
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土曜日の放課後、樹子、みらい、ヨイチ、良彦は、樹子の部屋に集まって、ペプシコーラを飲んでいた。
「ライブやりたいわね」と樹子が言った。
「気が早いな。まだおれたちには無理だろ」
「目標を持たないと、張り合いがないわ。あたしたちはただ音楽で遊ぶだけではなく、人に感動を与えるのよ!」
「ライブって、人前で歌うの?」
「あたりまえでしょ!」
「無理無理無理。わたしには無理ぃ~っ」
みらいは本気で怖がっていた。
「未来人、何言ってんの? 目標はYMOよ!」
「目標が高すぎる! YMOは神様だよ!」
良彦は黙って、興味深そうに3人を眺めていた。
「ライブって、ライブハウスとかでやるつもりか? チケットのノルマとかがあるらしいぜ。金銭的にも高校生には無理だろ。技術的にも無理だし」
「ヨイチ、否定ばっかりしていないで、建設的な意見を言ってよ!」
「とにかく練習しようぜ。『愛の火だるま』の作曲をしてきたから、聴いてくれ」
ヨイチはコーラの缶を床に置いて、ギターをかき鳴らし、大声で歌った。
「激しい歌だね……」
みらいは驚いた。
「シャウトしろ、未来人!」
「シャウトって……」
「叫ぶんだ!」
ヨイチはギターを弾いた。
みらいは「あっちっちーっ!」と叫んだ。シャウトだ!
「みらいちゃんの声は、叫んでもかわいいね」
「良彦、たらしは禁止よ!」
「わたしの台所は火の車っ!」
みらいは歌い終えた。
「最後に『ほいっ』て叫べ!」
「ほいっ?」
ヨイチがまたギターを鳴らした。
「わたしの台所は火の車っ、ほいっ!」
「いい感じね。キーボードとベースも入れて、練習しましょう」
樹子がエレクトーンの前に座り、良彦はベースのストラップを肩にかけた。
4人は1時間ほど『愛の火だるま』の編曲と練習をした。
「みんなで合わせて音楽をやるのって、凄く楽しい!」
みらいは心からそう言った。
「きっとライブも楽しいわよ!」
「ライブかあ……」
そんなものができるとは、みらいにはとうてい思えなかった。どこか別世界の話のようだ。
練習後、彼らは麻雀を半荘やった。みらいは実力どおりこてんぱんに負けたが、楽しそうに笑っていた。
午後5時、みらい、ヨイチ、良彦は帰途についた。
自宅の最寄駅で降りたとき、みらいはフォークギターを鳴らして歌うふたり組の男性に目をとめた。
「おいらの汚れた手のひら~♩」
「汚ねえ手のひら~♩」
ふたりは駅前広場で、掛け合いで歌っていた。
誰も聴いていなかったが、みらいはその歌に惹かれて、彼らの前にひとり立った。
20代半ばぐらいに見える長髪の男性がふたり。みらいと目が合い、彼らはニヤッと笑って声を張り上げた。肩幅が広い強面の男と細い体躯の優男だった。
「洗っても汚れは取れねえ~♩」
「汚ねえ手のひら~♩」
なんだかいい歌だな、とみらいは思って、その曲を最後まで聴いた。
「お嬢ちゃん、ご清聴ありがとう」と強面が言った。
大人の男性から声をかけられて、みらいはなんと答えればよいのかわからず、ぺこりと頭を下げた。
彼女は自宅へと走った。
あれもライブなのかな、と思いながら……。
「ライブやりたいわね」と樹子が言った。
「気が早いな。まだおれたちには無理だろ」
「目標を持たないと、張り合いがないわ。あたしたちはただ音楽で遊ぶだけではなく、人に感動を与えるのよ!」
「ライブって、人前で歌うの?」
「あたりまえでしょ!」
「無理無理無理。わたしには無理ぃ~っ」
みらいは本気で怖がっていた。
「未来人、何言ってんの? 目標はYMOよ!」
「目標が高すぎる! YMOは神様だよ!」
良彦は黙って、興味深そうに3人を眺めていた。
「ライブって、ライブハウスとかでやるつもりか? チケットのノルマとかがあるらしいぜ。金銭的にも高校生には無理だろ。技術的にも無理だし」
「ヨイチ、否定ばっかりしていないで、建設的な意見を言ってよ!」
「とにかく練習しようぜ。『愛の火だるま』の作曲をしてきたから、聴いてくれ」
ヨイチはコーラの缶を床に置いて、ギターをかき鳴らし、大声で歌った。
「激しい歌だね……」
みらいは驚いた。
「シャウトしろ、未来人!」
「シャウトって……」
「叫ぶんだ!」
ヨイチはギターを弾いた。
みらいは「あっちっちーっ!」と叫んだ。シャウトだ!
「みらいちゃんの声は、叫んでもかわいいね」
「良彦、たらしは禁止よ!」
「わたしの台所は火の車っ!」
みらいは歌い終えた。
「最後に『ほいっ』て叫べ!」
「ほいっ?」
ヨイチがまたギターを鳴らした。
「わたしの台所は火の車っ、ほいっ!」
「いい感じね。キーボードとベースも入れて、練習しましょう」
樹子がエレクトーンの前に座り、良彦はベースのストラップを肩にかけた。
4人は1時間ほど『愛の火だるま』の編曲と練習をした。
「みんなで合わせて音楽をやるのって、凄く楽しい!」
みらいは心からそう言った。
「きっとライブも楽しいわよ!」
「ライブかあ……」
そんなものができるとは、みらいにはとうてい思えなかった。どこか別世界の話のようだ。
練習後、彼らは麻雀を半荘やった。みらいは実力どおりこてんぱんに負けたが、楽しそうに笑っていた。
午後5時、みらい、ヨイチ、良彦は帰途についた。
自宅の最寄駅で降りたとき、みらいはフォークギターを鳴らして歌うふたり組の男性に目をとめた。
「おいらの汚れた手のひら~♩」
「汚ねえ手のひら~♩」
ふたりは駅前広場で、掛け合いで歌っていた。
誰も聴いていなかったが、みらいはその歌に惹かれて、彼らの前にひとり立った。
20代半ばぐらいに見える長髪の男性がふたり。みらいと目が合い、彼らはニヤッと笑って声を張り上げた。肩幅が広い強面の男と細い体躯の優男だった。
「洗っても汚れは取れねえ~♩」
「汚ねえ手のひら~♩」
なんだかいい歌だな、とみらいは思って、その曲を最後まで聴いた。
「お嬢ちゃん、ご清聴ありがとう」と強面が言った。
大人の男性から声をかけられて、みらいはなんと答えればよいのかわからず、ぺこりと頭を下げた。
彼女は自宅へと走った。
あれもライブなのかな、と思いながら……。
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