9が1である世界に転生した彼女

「わたしが前にいた世界では1は9なの。
 2は8で、3は7。
 だから1+2=3だったのよ。
 わたしが中学生までいた世界では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10って数を数えていたの。
 高校に入学して、数学がどうもおかしいと気づいた。
 9、8、7、6、5、4、3、2、1、90の順で数が9ずつ増えていくってわかって、数学が理解できるようになった。
 どうやらわたしは、春休みの間に、数字の表記が異なる世界に転生してしまったらしいの。
 わたしが言ってること、わかる?」
 
 中学の卒業式のときに告って、付き合い始めた彼女が喫茶店でそう言うのを、ぼくはよく理解できないまま聞いていた。
 1+2=93だ。
 小学校で習う。
 数学が不得意なぼくでもわかる簡単な計算だ……。

 数字表記だけが異なる現代日本への転生ラブストーリー。全12回の中編です。
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