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藤本タツキ『チェンソーマン』

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『チェンソーマン』はえげつなくて、グロテスクで、エンターテインメントで、エロくて、芸術的な作品だと思うのです。内臓がドバッと出てくるシーンとかあるから、だめな人は読めないんだろうなあ。でも私は大好きなのです。藤本タツキ先生マジ天才。
 しかしこれ、少年漫画なんですかね? 子どもが読んでもいいのかなあ。R18とまでは言わないけれど、R15のような気がします。だって過激すぎるでしょ?
 さて以降、『チェンソーマン』1~12巻の感想をネタバレ・引用満載で書きます。これから漫画を読もうと思っている方はお帰りください。すみません。

 1巻の感想。ポチタかわいいよポチタ。
「ポチタ……今日のメシ食パン1枚だぜ。この間聞いたんだけどさ、普通食パンにはジャム塗って食うらしいぜ」
 主人公デンジの台詞に度肝を抜かれました。可哀想。しかしこの台詞、伏線になっています。
「夢ェ叶うなら、女抱いてから死にてえな……」
 タツキ先生すげえなあ。男の本音をシンプルにズバリと書いています。
 デンジとアキのけんかのシーンも見所です。
「俺は!男と!喧嘩する!時ゃ!股間!しか!狙わねえ!」
 昔、友だちから「けんかするときには、一発で殺す気で殴らなきゃいけないんだよ」と言われたことを思い出しました。

 2巻の感想。パワー面白えよパワー。表紙もパワーだ!
「ワシは暇だからノーベル賞を考えておった! ノーベル賞を発明すれば、人間はワシにひれ伏すじゃろうて! そのあとはノーベル賞を踏み台にワシは総理大臣になる! 手始めに消費税は100パーセントじゃ!」
 ぎゃはははは。ノーベル賞は発明するもんじゃなくて、受賞するもんだよ。消費税100パーセントてマジ鬼畜パワーさん。

 3巻の感想。岸辺カッコイイよ岸辺。神じゃん?
「悪魔が恐れるデビルハンターはなあ……頭のネジがぶっ飛んでるヤツだ」
 つまりデンジです。
「この最高にネジがぶっ飛んでる男なら、銃野郎を殺せるかもしれない」と姫野は思います。
 姫野とデンジのゲロチューも見所。3巻の表紙は姫野です。

 4巻と5巻の感想はまとめて。
 名言があります。
 第4巻119ページで岸辺がデンジに言った台詞。
「獣が狩人の言葉を信用するな」
 第5巻63ページでデンジがサムライソードに放った台詞。
「ジジイに教わらなかったかア~? 獣が狩人の言葉、信じるなってなあ~!?」
 デンジは第4巻での学びを活かして、第5巻で強敵サムライソードを倒します。
 最高の台詞です。

 6巻の感想。レゼ可愛いっすねえ。そして変身後の姿。これギーガーの影響がありますね。
 まあ、えげつないデザイン描く人はみんなギーガーをリスペクトしていますよね。
 デンジの台詞が面白いです。
「俺が知り合う女がさあ!! 全員オレん事殺そうとしてんだけど!! みんなチェンソーの心臓ばっか欲しがっちゃって! デンジの心臓は欲しかねえのか!? あ~!?」
「私がデンジ君を好きなのは本当だよ」
「えっマジ……?」
「敵の言葉を聞くな!! おまえはチョロすぎだ!!」
 159ページのヤドカリにはアートを感じました。

 7巻の感想。クァンシの名台詞につきます。もしかしたら迷台詞なのかもしれませんが。
「この世でハッピーに生きるコツは、無知で馬鹿のまま生きる事」

 8巻の感想。馬鹿はハッピーで無敵というのは、藤本タツキ先生の信念なのかもしれません。
「そういう事で理解すれば殺せるだろ。バカになれデンノコ」
「闇の力で智見を深めて尚、馬鹿の行動は理解できません」
 そして、この巻ではハロウィンが凄い。ハロウィン最高、ハロウィン芸術!
「貴女は今から森羅万象を知るのです。貴女は今、闇の力で全てを理解したつもりになっているでしょう。でも貴女が理解している全てというのはこの図書館の……本の1ページ目にも満たない事なのです。これから貴女の脳にこの図書館の本の内容が全て流れ込みます。そして貴女は今度こそ本当に全てを理解する事ができます。全てを理解した者は皆……死ぬまでハロウィンの事しか考えられなくなるのです。ハロウィン」

 9巻の感想。アキが凄い台詞を吐きます。
「怖気づきました」
 死をも怖れぬ者も、愛する者を守りたくなると怖気づくのですね。
 マキマが脳味噌で天使の輪をつくるシーン。タツキ先生は狂ってます(もちろん褒めているのです)。

 10巻の感想。マキマの犬部屋に住みたい。
「生命が寿命を迎えると死の他のあった4つの結末」
 タツキ先生の恐るべき発想力に感嘆。
 そして、この巻ではコベニが最高に面白いです。ここまでも地味にコベニはずっと面白かったけれど。
「なんでえええええええ!!」
 マキマに「うん。勝てる気がしない」と言わせるチェンソー最強。

 11巻の感想。デンジとコベニの会話が深いです。
「こう見えてもいま俺はな、俺ん心はなあ、糞詰まったトイレん底に落ちてる感じなんだぜ。今までの良い思いも悪い思いも全部……全部が他人に作られたモンだったんだ。俺は最高にバカだからバカみてえにと暮らしてたんだけど、気づいてみりゃあバカのせいで全部ダメになってたんだ。今思えば俺はな~んにも自分で決めてこなかったな……。誰かの言われるがまま何も考えねえで使われてさ……。決めてたのは昼飯になに食うかくらいでよ。これから生き延びれても俺はきっと……犬みてえに誰かの言いなりになって暮らしてくんだろうな」
「それが普通でしょ?」
「え?」
「ヤな事がない人生なんて……夢の中だけでしょ……」

 12巻の感想。アサがユウコを抱っこして逃げるシーンが尊い。

『チェンソーマン』は漫画ですが、文学的です。これを超える純文学を書いている小説家はいまいるのでしょうか。
 以上、大傑作『チェンソーマン』の感想でした。ハロウィン!
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